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庶務
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いや、よく見ると男の子だった。
ズボン着用しており制服そのものが男性用だ。背丈は僕よりも低くて、女の子に似た顔をしている。
オメガ、っぽいが、花園クラスではない。ただ、どことはなしに既視感はあった。
「あんた、サギリ君でしょ」
いきなり名前を呼ばれ、瞬いていると。
「嗚呼、大丈夫。
怪しい者じゃないよ、
生徒会役員してる。庶務だ」
「へ」
まるで空気が抜けたかのような声が出てしまったが、そうか。
確かに生徒会に所属している顔だった。彼は肩口で真っ直ぐに髪を切り揃えていて、まるで日本人形みたいな髪型をしている。小さくて、本当に人形っぽい。
大人しそうに見えたが、
「こっちきて。危ないから」
引率のごとき丁寧に僕は廊下の端へと追いやられる。
ぐいぐいと存外に強い力だ。引っ張られる。
「え、あの」
「ここで待ってて」
「あ、でも……」
「安心して。悪いようにはしないから。
ここで良い子でいて」
どうにも口が回らず、僕は身振り手振りで申告する。
「けど、あの中にオメガがいるかも、あの、ええと」
「……ん。ああ、大丈夫。
そのことなら心配いらない」
僕の言いたいことをさすがは生徒会役員。成績優秀者しか入れない生徒役員様だ。
会得のいった顔つきになり、くるりと僕に背を向けると、早速といわんばかりに彼は見事な足捌きで彼らの中へと飛び込んでいった。
いや、蹴ってた。普通に。
「え」
アルファも、ベータも関係なし。平等だ。
平均的にも大きな体ではないというのに、物怖じもせず。
蹴られた相手は顔を歪め、加害者たる庶務へと当然ながら怒りを向けるが、皆、一様にぎょっとした表情になり。即座に庶務から距離をとった。なんだろう、まるで天敵にでも会ったかのような態度ですらある。
(ハブとマングース?)
呆気にとられて眺めていると、さらに追加とばかりに。
「生徒会だ!」
(え)
「生徒会長!」
「きゃー会計もいる!」
バタバタと慌ただしい足音がやってきた。
煌びやかな集団だ。なんとも黄色い声も聞こえたが、やけに野太いのは気のせいか。
しかも、
「あ……」
そこには、婚約者の姿もあった。
アルファの集団でしかない彼ら、生徒会役員たちは見るものの目をつぶすような視覚効果でもあるのかといわんばかりに輝いていた。
(あっ)
生徒会に所属している副会長もいた。婚約者だ。
思わず顔を伏せ縮こまっていると、彼らはたかがベータのことなど視界の隅にも留まらなかったようで、そのまま人だかりの中へと突入していった。
まるでモーゼのように広がった人の波はさすがは生徒会、といったところか。
ズボン着用しており制服そのものが男性用だ。背丈は僕よりも低くて、女の子に似た顔をしている。
オメガ、っぽいが、花園クラスではない。ただ、どことはなしに既視感はあった。
「あんた、サギリ君でしょ」
いきなり名前を呼ばれ、瞬いていると。
「嗚呼、大丈夫。
怪しい者じゃないよ、
生徒会役員してる。庶務だ」
「へ」
まるで空気が抜けたかのような声が出てしまったが、そうか。
確かに生徒会に所属している顔だった。彼は肩口で真っ直ぐに髪を切り揃えていて、まるで日本人形みたいな髪型をしている。小さくて、本当に人形っぽい。
大人しそうに見えたが、
「こっちきて。危ないから」
引率のごとき丁寧に僕は廊下の端へと追いやられる。
ぐいぐいと存外に強い力だ。引っ張られる。
「え、あの」
「ここで待ってて」
「あ、でも……」
「安心して。悪いようにはしないから。
ここで良い子でいて」
どうにも口が回らず、僕は身振り手振りで申告する。
「けど、あの中にオメガがいるかも、あの、ええと」
「……ん。ああ、大丈夫。
そのことなら心配いらない」
僕の言いたいことをさすがは生徒会役員。成績優秀者しか入れない生徒役員様だ。
会得のいった顔つきになり、くるりと僕に背を向けると、早速といわんばかりに彼は見事な足捌きで彼らの中へと飛び込んでいった。
いや、蹴ってた。普通に。
「え」
アルファも、ベータも関係なし。平等だ。
平均的にも大きな体ではないというのに、物怖じもせず。
蹴られた相手は顔を歪め、加害者たる庶務へと当然ながら怒りを向けるが、皆、一様にぎょっとした表情になり。即座に庶務から距離をとった。なんだろう、まるで天敵にでも会ったかのような態度ですらある。
(ハブとマングース?)
呆気にとられて眺めていると、さらに追加とばかりに。
「生徒会だ!」
(え)
「生徒会長!」
「きゃー会計もいる!」
バタバタと慌ただしい足音がやってきた。
煌びやかな集団だ。なんとも黄色い声も聞こえたが、やけに野太いのは気のせいか。
しかも、
「あ……」
そこには、婚約者の姿もあった。
アルファの集団でしかない彼ら、生徒会役員たちは見るものの目をつぶすような視覚効果でもあるのかといわんばかりに輝いていた。
(あっ)
生徒会に所属している副会長もいた。婚約者だ。
思わず顔を伏せ縮こまっていると、彼らはたかがベータのことなど視界の隅にも留まらなかったようで、そのまま人だかりの中へと突入していった。
まるでモーゼのように広がった人の波はさすがは生徒会、といったところか。
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