天よ、何故に私を見捨てたもうか(アルファポ版)

小夜時雨

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目録(作者用途 辞典的なもの) 番外編

北の国 番外編

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 「うへー本当に?」
 「いや本当本当」

 噂話というものは尾びれ背びれなんでもござれ。
あっという間にくっついていき、本当の事実とは結びつかずに現実とはかけ離れていく。
 それでも人々はその噂話をやめることはしない。
なぜならば、酒の肴だから。

 「羽人たちを北の王様が食ったらしい」
 「えええ、嘘だろ。
  昔いた人たちだろ?」
 「くわばらくわばら、ひどいことをするものだ」
 「根絶やし」
 「けどさ、化け物なんだろ?」
 「鶏肉?」
 「いやどうだろう。
  でも大事に布に巻きつけてたのを見たよ、生白い手足出てたけど」
 「う……」
 「どうした?」
 「いや、なんでも……」
 「飼料を売るとき、北の兵がさあ、はは、
  まあ嘘くさい格好で偽装してたけどさあ、
  間違いなく事実だよ、
  なんたってあの国の王様は陰気くさいからな」

 噂話というものは羽にも尾っぽにもなんでもござれ。
あっという間にくっついていき、嘘も真実も混ざり合う。
 それでも人々はその噂話をやめることはしない。
なぜならば、茶請け話だから。

 「鶏肉の味がしたらしいよ」
 「うえっ。いかにも傲慢な北の人間らしい発想だよ、
  あんなにも美しい種族を捕まえて食べるなんて」
 「限りなく人に近い見た目なんでしょ?
  やばくない?」
 「やばいよ。
  南としては、北の暴挙は信じられねえ」
 「頭おかしいんだよ……」
 「変なの多いもんな、あそこ」
 「ひもじくなった、って聞いたから、
  それもあるんかね」
 「仕事がないらしいし」
 「さてなあ」
 「奴隷狩りしか仕事ないんじゃね?」

 噂話というものは人ならぬ人にも移り渡っていく。
フクロウの声にも届き、他の大陸にも混じり合う。
 風のささやきや、獣耳にも届く。
なぜならば、情報というものはどこかしかに何らかの意図が紛れているのだから。

 「王様はどうするんだろうね」
 「あんな戦闘バカなんて知るかっ。
  棍棒折り曲げて、鉄の罠を蹴り上げて直進してくるアホ、
  少しは腹壊して懲りたらいいのに、くそ、信じられるか?
  何ヶ月もかけて掘った塹壕さえも……ボコボコに!
  食料庫も空にしやがって……!」
 「高笑いしながら食い漁ってたよな」
 「毒入りだったけど」
 「……竜王は穏やかな方だが、いかんせん、
  人間って変わるものだ。ところ変われば人も変わる。
  ……さて、どうなるんだろうねぇ今後は」
 「知るかよ、他の大陸の人間なんざ。
  くっそ、あの野郎……」
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