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グリューネグの噂
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「頭が魚で、足が人の足、かぁ」
僕の想像する、美人の人型で足が魚、優雅な泳ぎをしてみせて魔性の歌をうたって船乗りたちを海の底へと沈みつくす、可憐ながらもやることは非道な海の住人とは異なり、魚人である。
「昨日、グリューネグで獲れたらしい」
「新鮮だね」
フリードの言葉に相槌を打ちながら、僕は朝ごはんを食す。
同じ寝台で寝泊まりしたけど、幸いにして婚約者どのも連日の接待で疲れ切っていてそういう気分ではなかったようだ。
(手足は若干、怪しい動きをしてたけど)
完全スルーしたので、公子様もさすがに無理強いは……と、しょもしょもしながら寝入っていた。よし。
「グリューネグ」
「……これから向かうエンバスの隣だよ、リヒ」
「あー、なるほど」
道理で。
なんとはなしに聞き覚えのある感じ、がしたのと……あやふやな記憶を引っ張り出す。
「……確か、でっかい湖があるんでしたっけ」
これからしばきに行く予定の、エンバス領地の隣同士であるせいで、湖も繋がっている地域だ。
「どちらも、所有権を主張しているという……」
「そう、どちらも主張している。
ずっと、何十年、いや、百年単位か」
まるで見本のように野菜を咀嚼するフリード。
……どうやってその葉物野菜を口の中へ優雅に入れたのだろう。大貴族ってすごい。
「……領地戦もしたそうだが、
それでも決着はつかなかったようだ」
「ほえー」
何回も繰り返し戦ってきたらしい。
「仕方なしに、互いに半分ずつ自領としているようだが、
まあ、それはともかくとして」
「魚人」
「あぁ、そうだ……、
出入りのものたちの話によれば、
まさしく魚人らしい風情で、
二足歩行をして地面を歩いて見せていたそうだ」
「……頭は魚で?」
「その通り、頭部は魚で生臭いようだ」
(今、ご飯を食べているというのに、
魚の話題はちょっと……)
「その、グリューネグ川の湖にて、
魚人が捕獲され、大いに話題となっているらしい」
「……噂の広まり方、早いね」
「行商人たちの話題になっていたから、
明日にでも獣王の耳に入っていてもおかしくはない」
行商人たちは、その足の速さに定評がある。
なまじ獣人であるがゆえに、余計に速さが勝負の決め手ともなった。
「はぁ、なんとも言えませんが、
大変そうですね、魚人さん」
(……そういえば、目の前の御仁は、
大型の猫獣人だったなあ)
じー、と見つめると、小首をかしげる婚約者。
「なんです?」
「いえ」
……そういえば、お上品な食べ方ばかりを見ていたから、魚の匂いに大興奮して咥えてドラ猫やるようなイメージは湧かないな、そういや。
「……それもそれで、楽しそう」
「リヒ?」
彼はしなやかに動くタイプだ。間違いない。
僕の想像する、美人の人型で足が魚、優雅な泳ぎをしてみせて魔性の歌をうたって船乗りたちを海の底へと沈みつくす、可憐ながらもやることは非道な海の住人とは異なり、魚人である。
「昨日、グリューネグで獲れたらしい」
「新鮮だね」
フリードの言葉に相槌を打ちながら、僕は朝ごはんを食す。
同じ寝台で寝泊まりしたけど、幸いにして婚約者どのも連日の接待で疲れ切っていてそういう気分ではなかったようだ。
(手足は若干、怪しい動きをしてたけど)
完全スルーしたので、公子様もさすがに無理強いは……と、しょもしょもしながら寝入っていた。よし。
「グリューネグ」
「……これから向かうエンバスの隣だよ、リヒ」
「あー、なるほど」
道理で。
なんとはなしに聞き覚えのある感じ、がしたのと……あやふやな記憶を引っ張り出す。
「……確か、でっかい湖があるんでしたっけ」
これからしばきに行く予定の、エンバス領地の隣同士であるせいで、湖も繋がっている地域だ。
「どちらも、所有権を主張しているという……」
「そう、どちらも主張している。
ずっと、何十年、いや、百年単位か」
まるで見本のように野菜を咀嚼するフリード。
……どうやってその葉物野菜を口の中へ優雅に入れたのだろう。大貴族ってすごい。
「……領地戦もしたそうだが、
それでも決着はつかなかったようだ」
「ほえー」
何回も繰り返し戦ってきたらしい。
「仕方なしに、互いに半分ずつ自領としているようだが、
まあ、それはともかくとして」
「魚人」
「あぁ、そうだ……、
出入りのものたちの話によれば、
まさしく魚人らしい風情で、
二足歩行をして地面を歩いて見せていたそうだ」
「……頭は魚で?」
「その通り、頭部は魚で生臭いようだ」
(今、ご飯を食べているというのに、
魚の話題はちょっと……)
「その、グリューネグ川の湖にて、
魚人が捕獲され、大いに話題となっているらしい」
「……噂の広まり方、早いね」
「行商人たちの話題になっていたから、
明日にでも獣王の耳に入っていてもおかしくはない」
行商人たちは、その足の速さに定評がある。
なまじ獣人であるがゆえに、余計に速さが勝負の決め手ともなった。
「はぁ、なんとも言えませんが、
大変そうですね、魚人さん」
(……そういえば、目の前の御仁は、
大型の猫獣人だったなあ)
じー、と見つめると、小首をかしげる婚約者。
「なんです?」
「いえ」
……そういえば、お上品な食べ方ばかりを見ていたから、魚の匂いに大興奮して咥えてドラ猫やるようなイメージは湧かないな、そういや。
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彼はしなやかに動くタイプだ。間違いない。
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