改訂版 勇者と聖女の育成請け負います_みんなで育てれば怖くないね

にしのみつてる

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第7章

働いた後は ~空中タコパとカップケーキ祭り~

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 オストロフドッグは熱暴走はあったが、順調に飛行を続けていた。

「イーライ、今どのあたりだ?」
「まだ砂漠の上だ。残り1万キロだな」
 イーライは後部格納庫のモニターを見て答えた。

「なぁ、大型マジック・リアクターの魔導電導管にオリハルコンを使ってみないか?」
「なぜだ?」

「バルさんがしきりに見てたから、熱暴走の原因は魔導電導管だと思ったのさ」

「イーライ、ヒナミとホノカを呼べるか?確認したいことがあるんだ」
「ああ、大丈夫だ」
(ヒナミ、ホノカ、俺たちにもお茶を入れてくれ)
(了解)

 この『俺たちにもお茶を』はバトルメイドとバトル執事の約束で会議のことだった。
 ヒナミとホノカは直ぐに後部格納庫にやってきた。

「ヒナミ、オリハルコンは余ってないか?」
「エンジェリコ砲にすべて使ったから在庫はもう残ってないわ」

「イーライ、ミスリルに銅を混ぜたらどうかな?」
「ネイト、それ、洒落のつもりか?」

「いや、極めて真面目なつもりだ。つまり、オリハルコンの赤銅色は天然の混ぜものだと思うんだ」

「ミカエル、ヨダシステム、ログオン、オリハルコンの成分を調べて」

「ヨダシステム、ログオン完了。オリハルコンの成分解析を開始します」
 モニターに赤銅色の金属構造が浮かび上がる。

「成分構成、表示します」
 ミカエルの声が静かに響いた。

 ・主成分:ミスリル(魂波伝導性)
 ・副成分:銅(熱伝導性・安定化)
 ・微量元素:エイドリウム、魂波共鳴触媒

「やっぱり……オリハルコンはミスリルと銅の合金だったか」  ネイトが頷いた。

「つまり、オリハルコンは人工錬成可能ってことか?」  イーライが眉をひそめる。

「そうだ。魂波炉でミスリルと銅を混ぜて、共鳴振動を加えれば生成できるはずだ」
 ネイトが模型図を広げる。

「ヒナミ、ホノカ、魂波炉の共鳴装置、調整できるか?」
「可能よ。エンジェリコ砲の歌唱振動を転用すれば、共鳴波は安定する」
「ミッション、了解。調整開始」

「イーライ、ミスリルと銅の比率は?」
「魂波伝導を優先するなら、ミスリル70:銅30が理想だ」
「了解。炉に素材を投入する」

 ネイトが素材をセットし、ヒナミとホノカが魂波共鳴装置を起動する。

「エンジェリコ砲、歌唱振動モードへ」
 ホノカが静かに操作する。

 ――ルーララ ルーララー ルーララー、ルーララ ララー  魂波が揺れ、炉の中で赤銅色の光が生まれる。
 オストロフドッグにもメロディが流れた。

「あら、随分、悲しい曲ね」
「ヒナミとホノカが流しているようです」
 スミレさんが答えた。

「私はこの旋律が好きよ」
「バル、私も好きだわ」


「オリハルコン生成完了。錬成成功です」  ミカエルが告げた。

「シローさん、イーライたちがまた何か作っているの?」
「スミレさん、彼らは魔導原子炉の素材を自分たちで作ったんだ」

「えっ、バルさんはオリハルコンだけで分かったのですか?」
「サキヒコ、彼らの技術者魂は私の宇宙愛よりも尊いぞ」

「まぁ、耐久性が上がるなら問題ないよ」
「シロー、オリハルコンの精錬は秘匿事項だ」

「そうですね、貴重な金属が人口生成出来たら文句がでますね」
「そうだ、戦争になる」


 ポーンポーン、大型マジック・リアクターの部品交換のためオマニア国の山の中に緊急着陸します。

「ネイト、オマニア国にかなり銅があるぞ」
「イーライ、緊急会議だ。シローさんたちにも手伝ってもらおう」

「搭乗員は後部格納庫に集合」
「只今より、第1回鉱石採取競争を行います」
 パチパチパチ……


「ヒナミ、今度は負けないぞ」
「イーライ、勝負」

「ねぇ、勝ったらおやつもらえる」
「ああ、食べ放題にしてもらう」

「「「「アースディグ」」」」
 ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ……


「シローさん、サキヒコさん、スミレさん、カナエさん、精錬をお願いしま~す」
「は~い」

「「「「アースディグ」」」」
 ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ、ボコ……

「なぁ、俺たち、毎回、穴掘りやってないか?」
「当たり前だ、改造は素材集めからだ」
「そうだな」

「ヒナミ、お腹すいた」
「ホノカ、あなた食べ過ぎ。バトルメイドは魔素で動くの」
「だって、カップケーキ美味しい」

「ミカエル、鉱石の分析をお願い」
「了解。ここの鉱床は銅、金、銀で銅を先に分離してから金と銀を精製しましょう」

「了解」

「「「「フォージ・カッパー」」」」
 ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン……

「シローさん、銅のインゴットが結構出来ましたね」
「サキヒコ、いつもの事だよ」

「次行くよ~」
「「「「フォージ・ゴールド」」」」
 ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン……

「シローさん、クルータ!最高にイケてます!」
「バル、この人たち楽しそう」

「そう、鉱物採取は彼らの生きがい」

「次行くよ~」

「「「「フォージ・シルバー」」」」
 ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン……

「シローさん、その残りカス、私に下さい。貴重な鉱物残っています」

「バルさん、何を作るの?」
「たこ焼き器とカップケーキ器です」

「クロムと鉄でステンレス作ります。これなら高温にも耐えられる」
「つまり、たこ焼き器に最適ですね」
  
「ヒナミ、魂波加熱式の“浮遊たこ焼き器”を試作する」
「ホノカ、タコの在庫は?」
「冷凍庫に3キロあります」
「みんな~、着替えてたこ焼き祭りよ」

「イーライ、ステンレス管を補助マジック・リアクターで試すか?」
「駄目だ、魔力が全く流れない」ネイトがステンレスパイプに魔力を流したが魔法が全く発動しなかった。

「魔剣としては使えないな」

「仕方ない、材料はたっぷりあるから、魔導管はオリハルコンで統一しよう」
「そうしよう」

「しかし、これだけクロムと鉄が大量にあると、人族ではミスリル剣の値が崩れるぞ」
「では、これも秘匿事項として扱おう」
「そう、惜しいけど、もう少し後だ」

「乾杯!」
「一仕事した後のウォッカは最高で~す」
「バルさん、たこ焼きお替り」

うして、空島の夜はたこ焼きの香りとともに更けていき、離陸は翌日に持ち越された。

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