追放された美少女を助けた底辺おっさんが、実は元”特級冒険者”だった件について。

いちまる

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おっさん、幽霊屋敷に行く

ニューメンバー、オフィーリア!

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 ヴォルコン湿原での出会いと戦いから、数日後。

「――では、幽霊屋敷もとい、テラーハウスの調査クエストの結果についてお知らせします」

 冒険者ギルドのカウンターで、『セレナ団』は受付嬢から話を聞いていた。
 カウンターに置かれているのは、あのテラーハウスの肉片だ。

「モンスターを討伐してしまったため、本来の達成条件は満たしていません。ですが、回収した貴重な素材を『王都魔獣調査団』が引き取る形で、達成となりました」

 素材がカウンターの奥に消えてゆき、代わりに麻袋あさぶくろが置かれた。

「おめでとうございます。こちらが調査団からの報酬、3万エメトです」

 中身はクエスト報酬の――ぎっしりと詰まった、エメト貨幣かへいだ。

「いぇーいっ! 3万エメトももらっちゃったーっ!」

 袋を開き、キラキラと輝くエメト硬貨を見たセレナが、満面の笑みで跳び上がった。
 ダンテもリンも、彼女の後ろで腕を組んで笑っている。

「このうち半分は生活費にして、残りは……うひひ、近くに新しい賭場が……」

 ところが、彼女がよからぬ企みを思い浮かべた途端、ふたりの顔つきが変わった。

「セレナ? 次に賭場に行ったら、毛皮をひん剥いて川に投げ捨てるって言ったよなぁ?」
「じょ、冗談だって、あはは……」
「お金はこっちで預かっておくから。セレナ、欲しいものがあったらボクに相談してね」

 リンが麻袋をひったくると、セレナが恨めしそうな顔で口を尖らせた。

「うう、けちんぼめ……ところで、っと」

 さて、これだけならいつもの『セレナ団』の光景だ。
 ただし今日からは、いつもと違うところが増える。

「オフィーリアもこっち来なよ! そんな遠くから見てないでさ!」

 セレナ達とちょっとだけ離れたところで様子を見ている、オフィーリアの存在だ。
 彼女は冒険者ギルドで資格をもらい、正式に『セレナ団』の一員として、パーティーメンバーに加えられたのだ。
 だから一緒にいてもおかしくはないのだが、オフィーリアはまだギルド――というより外界の空気に慣れていないようで、どこか挙動不審だ。

「……まだ、冒険者になった実感がないのか?」

 アッシュグレーの長い髪をいじりながら、オフィーリアが頷いた。

「それもそうですが……セレナさんがリーダーの『セレナ団』に加入させてもらえたことが信じられなくて……本当に、私が加わっても良かったのですか?」

 冒険者としての経験不足を気にしているのだろうというのは、3人にも直感できた。
 そんな彼女の手を引いて、ダンテ達は言った。

「お前の聖霊術は、パーティーに欠かせない才能だ。うちのリーダーがオフィーリアを仲間にしたいって言ったんだから、俺は大歓迎だよ」
「ボクも、頼りにしてる」
「これからもよろしく、オフィーリア!」

 温かい笑顔に励まされ、今度こそオフィーリアは決意を固めたようだ。
 ここに来るまでに何度も迷ったが、もうその目にかげりはない。

「……はいっ! オフィーリア・ブルーム! 最年長として、頑張らせていただきます!」

 ヒマワリのような表情で、彼女はにっこりと笑った。
 3人も笑顔で応えたが、すぐにセレナとリンが疑問を浮かべる。

「最年長? パーティーで一番年とってるのは、ダンテでしょ?」
「あー、そういえばふたりは知らなかったな。オフィーリアはずっと長い間、テラーハウスに幽閉されてたんだ。外見の年齢はともかく、実年齢は……ごにょごにょ……」

 ダンテがふたりに耳打ちすると、彼女達の顔が疑いから驚愕へと変わってゆく。

「も、もうっ! ダンテさん、女性の歳を話すのは失礼ですよっ!」

 頬を赤らめて照れるオフィーリアを、話を聞き終えたセレナ達が「信じられない」と言いたげに凝視ぎょうししていた。

「……ホントに、30年もあそこにいたの?」
「は、はい……」

 リンの問いかけを、オフィーリアは肯定する。

「道理でなんか、不思議な雰囲気だと思ってたんだよね! おっぱいがでっかいのも、ずっと幽霊屋敷の中にいたからなの?」
「そ、それは関係ないですよ!?」

 咄嗟に胸元を隠すオフィーリアだが、セレナの言い分は間違っていない。
 黒ずくめの格好のせいで分かりにくいものの、明らかに彼女のそれは大きいし、セレナもリンも彼女のスタイルの良さには憧れるだろう。
 実際、ここで会話が終わっていれば、オフィーリアも恥ずかしながらもまんざらでもない気分であったかもしれない。
 だが、ここで余計な一言を付け足すのが、セレナ・ソーンダーズである。

「あ、だったら今は50歳くらいだし、オフィーリアって――」

 彼女が何を言おうとしたか、ダンテは察したが、あえて止めなかった。
 だから、セレナは当たり前のように口から言葉を発した。



「――じゃん!」

 辺りが一瞬にして凍り付く、禁断のワードを。
 ダンテもリンも、呆れた様子で天をあおいだ。

「……言っちゃった」
「セレナ、口はわざわいの元ってことわざが東洋にはあるんだぜ」
「え? ことわざがどうしたのさ、ダンテ……」

 ふたりに聞こうとしたセレナだったが、その必要はなかった。

「……うふふ」

 オフィーリアが、笑っているからだ。
 ただし、花のような明るさなど微塵もない――ぞっとするような笑みなのだ。
 流石のセレナも、彼女の異様さに思わず後ずさる。

「お、お、オフィーリア? なんか、すっごい圧を感じるんだけど……」
「うふふふふ」
「なんで笑いながら近づいてくるの!? 背中からヤバめのオーラが出てるよ!?」
「うふふっ、ふふふふふふ」
「怖いよ、怖いよぉ! ダンテ、リン、助けてぇ~っ!」

 言うが早いか、セレナはギルドから逃げ出そうとする。
 しかし、ダンテの手が彼女の二股の尻尾を掴んでしまった。

「オフィーリアのお仕置きを受ければ、ちょっとはセレナも反省するだろ」
「たまには痛い目に遭わないとね」

 リンもダンテも、自分の味方になってくれない。

「そ、そんな――あいたーっ!?」

 ありありと絶望を顔に浮かべるセレナのお尻に、急に衝撃がはしった。
 オフィーリアが彼女に、聖霊の山羊『ガブリエル』を突進させたのだ。

「おばさんなんてレディーに言うような子には、お仕置きです!」
「ごめんなさぁ~いっ!」

 めえめえと突撃してくる山羊から、お尻と尻尾を押さえて逃げるセレナ。
 肩をいからせ、ずんずんと大股で追いかけていくオフィーリア。
 やれやれと呆れつつ、どこか楽しそうにマフラーから口元を見せるリン。

 そんな3人と冒険者として活動していけると思うと、ダンテは嬉しくて、これから進める歩みが楽しみで仕方なかった。
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