追放された美少女を助けた底辺おっさんが、実は元”特級冒険者”だった件について。

いちまる

文字の大きさ
46 / 95
おっさん、A級冒険者の闇を暴く

理想の冒険者とは

しおりを挟む
「う、ぐう……」

 今まさに死にかけているエヴリンは、立っているだけの力もないらしい。
 いつものあでやかさも高慢こうまんさも、欠片も残っていない。

「エヴリンって、『竜王の冠ドラゴンクラウン』のエヴリン・ボロウだよな?」
「長期クエストに行ってたはずなのに、どうしてギルドに戻ってきたんだ?」
「というか、ボロボロじゃねえか!」

 冒険者やギルドのスタッフがひそひそと話す中、オフィーリアはダンテに聞いた。

「ダンテさん、お知り合いなのですか?」
「ああ、冒険者ギルドのAランク冒険者、アポロスと組んでたエヴリンって魔法使いだ」

 エヴリンのことなら、ダンテもよく知っている。
 彼がセレナ達の面倒を見てパーティーを組む理由になった人物だ――パーティーぐるみで彼女達を殺し、盗賊団をけしかけた要因でもあるが。

「おかしいよ、ダンテ。あの人、いつもアポロスと一緒にいたのに、パーティーメンバーもいないなんて、絶対におかしい」
「それもそうだが、問題はあのケガだな」

 セレナよりもずっと、ダンテはエヴリンの様子を観察していた。

「俺の見立てじゃあ、右足と右前腕の骨がイカれて、あばらが3本は折れてる。内臓も激しく損傷してるから……あの調子なら、1時間でも放置してれば死ぬな」
「見ただけで分かるの!?」
「お前達も、鍛えれば分かるようになるさ」

 そんな話をしているうちに、とうとうエヴリンの方に限界が来たらしい。

「がはっ……」

 口から盛大に血を吐いて、彼女はぐたりと倒れ込んだ。

「訂正する。あと30分もしないうちに死ぬぞ」

 ダンテが修正せずとも、じきに死ぬのは誰の目から見ても明らかだ。
 普通の冒険者ならば、受付嬢や同僚が慌てて介抱して、診療所に運ぶだろう。

「お、おい、誰か助けてやれよ」

 ところが、彼女に手を貸す者はひとりもいなかった。

「そうはいっても……あのアポロスのパーティーのサブリーダーだろ?」
「態度もデカいし、横柄おうへいで迷惑だったし……」

 誰も彼もが、エヴリンが死にゆくさまを遠目に見つめているだけだ。
 冒険者の命を優先するギルドのスタッフや受付嬢ですら、どうしたものか、とまごつくばかりで何もしない。
 中には「ざまあみろ」と鼻で笑う冒険者までいる。

「……誰も助けようとしませんね。何故でしょうか」

 事情を知らないオフィーリアが、ダンテに聞いた。

「あいつらのパーティーはともかく、リーダーの嫌われようはかなりのものだったからな」

 彼も10年近く冒険者ギルドにいたので、内事情には詳しい。
 特にアポロスと、彼の横柄さについてはよく知っている。

「基本的にA級冒険者ってのは、ギルドに残らず、ほとんど依頼主の方から声をかけに行く。自分からクエストを受ける必要もないってわけだ」
「それと嫌われるのと、どのような関係が?」
「ところが、アポロスは毎回ここでクエストを受けてた。依頼主からの信用がないのも理由のひとつだが、とにかく威張り散らしたかったんだろうよ」

 彼の説明を聞いて、オフィーリアも納得した。
 依頼主がためらうほどの乱暴者は、どうやら冒険者ギルドで自分が何者であるかをアピールするために、ギルドに来ていたようだ。
 ダンテが知る限り、アポロスは気に食わない冒険者をよく殴ったり、受付嬢の胸倉を掴んだりと、嫌われて当然の行為を繰り返していた。
 それでも彼がA級冒険者として名声を保っていたのには、事情がある。
 今ここで話しても、あまり意味はないだろうが。

「A級であることを盾に、随分と乱暴をされていたんですね」
「サブリーダーが死にかけてるのに、誰も助けようとしないくらいにはな」

 アポロスの横暴を止めず、隣で笑っているだけのエヴリンにはぴったりの末路である。

「ですが、このまま放っておくのは――」

 それでも無視はできないと、オフィーリアがダンテを説得しようとした時だった。

「――診療所に連れてくよ、ダンテ!」

 なんと、セレナが真っ先にエヴリンに駆け寄り、彼女を抱きかかえたのだ。

「セレナ!」

 驚いたのはリンだけではない、ギルドの誰もが目を見開いている。

「おいおい、ソーンダーズ!? そいつを助けるなんて、正気かよ!?」
「ほっとけよ! 聞いた話じゃあ、ヤヴァン盗賊団のところにお前らをけしかけたのは、『竜王の冠』なんだろ!?」

 周りの冒険者がそう言う中、セレナは叫んだ。

「あたしだって、アポロスもこのおばさんも大キライだよ! どっかでモンスターに食われればいいって思ってるし、ウンコ踏んで転んじゃえばいいって思ってる!」

 セレナは親友と一緒に、二度もアポロスに殺されかけた。
 彼らを、けちょんけちょんのコテンパンに叩きのめす光景を何度も夢見た。

「でも……死にそうな人を見捨てるA級冒険者なんて、あたしの理想の冒険者じゃない!」

 だからといって、助けない理由だけはどこにもなかった。
 死にひんしている者を放っておくなど、セレナにとっては許せないことだったからだ。

「あたしは、そんなカッコ悪い冒険者になんてなりたくないから、だから……!」

 セレナがエヴリンを担ごうとすると、不意に彼女の肩が軽くなった。
 てっきり魂が抜けた分軽くなったのかと思ったが、そうではない。

「よっこいしょ、と」

 彼女の代わりに、ダンテが怪我人を背負ったからだ。

「ダンテ! リン、オフィーリア!」

 しかも、リンとオフィーリアもセレナのそばに来てくれた。

「全速力で診療所に連れていけば、まだ間に合う。リン、土属性の魔法で傷を塞いで止血しろ。オフィーリアは聖霊術で体力の回復を少しでも早めてくれ」
「オッケー」
「分かりました」

 か細い息を吐くだけのエヴリンを連れ、4人はギルドを出て大通りを走る。
 その途中、ダンテは隣を駆けるセレナを見て言った。

「セレナ、お前は誰よりも強くて有名で、優しい冒険者になれる。俺が保証するぜ」
「……うんっ!」

 ダンテが自分の夢を信じてくれるのが、セレナにはとても嬉しかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...