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彼女と暮らし始めて、二日目。
食事を摂る僕を見つめる彼女の目が、強い光を放っている。
「ねえ、お願い、私にも何か食べさせて……お腹が空いたの、すごく……」
切実な声でそう言われると心が揺らぐ。でも、彼女にはお腹を空かせていてもらわないといけないからね。
彼女に見せ付けるようなことをせずに食べたらいいんだろうけど、せっかくこうやって一緒にいるのに、一秒でも目を逸らしてはいられない。
彼女のことを、ずっと見ていたいんだ。
「これで我慢してくれるかな」
僕は言いながら、スポーツ飲料のペットボトルを彼女の口元にあてがった。彼女は恨めしそうな目で僕を見つめながらも、中身を飲み干す――まるで赤ん坊みたいに、必死に。
彼女の世話は、全部僕がしていた。こうやって水分を摂らせるのも――排泄の世話も。
別に、いやらしい気持ちは全然ないんだよ?
ただ、彼女を間近で見つめて、彼女に触れられるというだけで、僕は幸せなんだから。
腿の傷の手当てもしているんだけど、どうやら膿んでしまったみたいだ。キレイだった肌から濁った嫌な臭いがする黄色い汁がじくじくと染み出して、巻いてある包帯を始終汚している。二、三時間に一回交換してあげないと、あっという間にビタビタになってしまう。
でも、そういう汚い世話も、全然イヤじゃない。
もうずっと、初めて大学の構内で彼女を見かけた時から、こうしてあげたいと思っていたんだ。
一日中彼女と一緒に居て、一日中彼女に触れて、彼女を愛して、慈しんで。
汚れ仕事だって、全然気にならない。
むしろ、それすら僕の庇護欲を掻き立てる。
だって、僕は彼女を愛しているから。
彼女の全ては僕のものなんだ。
「包帯を取り換えてあげるね」
そう言うと、ぼんやりとした彼女の目がうっとりと僕を見返してきた。
ほら、この目。どうしようもなく僕に焦がれているこの目。
彼女も、僕のことを愛している。そうに決まってる。
――もうじきこの時間が終わってしまうのが、ちょっと残念だった。
だから、一瞬一瞬に心を込めて、僕は彼女の世話をする。
ジリジリと時間が過ぎて、やがて三日目の朝が来る。
浅い眠りから目覚めた僕は、お腹は空いていなかったけれど、半ば無理やり食事を口にする。
だって、彼女には良いものを食べさせてあげたいからね。
「おはよう」
彼女に声をかけて、バックパックから取り出したプロテインバーを齧っては、缶コーヒーで流し込む。
そうやって食事をしている僕を、彼女はジッと見つめている。
昨日までとは違って、ひたむきに彼女の視線が注がれているのは、僕だ。僕自身だ――僕が手にしている食事じゃない。彼女は、僕を、見つめている。
欲望に満ち満ちた眼差しで。
そう、まさに、僕を食べてしまいたいという目だった。
昨日の晩から今日にかけて、彼女の口数はめっきり減っている。
何も言わず、ただ、ひたすら僕を見つめるだけだ。その眼差しに、溢れんばかりの渇望の色を浮かべて。
あまりに熱いその眼差しに、僕はクラクラする。
ツッと、彼女の口元から唾液が滴り落ちた。
僕は頬を伝ったそれに、指を伸ばす。
爪の先が彼女に届こうとした、その時だった。
パッと、彼女の頭が動いた。
そして、走った、衝撃。
僕は今まで大きな怪我などしたことが無い。だから、一瞬、それが痛みだと認識できなかった。
強いて言うなら、渾身の力でどこかに手を叩き付けた感じ、と表現したらいいのかもしれない。そして、月並みだけれど、焼けつくような、痛み。本なんかで「焼き鏝を押し付けられたような」って言うけれど、確かに、そんな感じなのかも。
見れば彼女の口元は真っ赤で、何かを――僕の手から失われた三本の指を、咀嚼している。
ゴリ、バリ、ゴリン。
指には殆ど肉が付いていないから、美味しくはないに違いない。
だけど彼女は、それを吐き出すことなく噛み続け、そして音を立てて呑み込んだ。
この上なく満足そうに。
その姿に、僕の中に喜びが溢れかえる。
ああ、ついにその時が来たんだ。
彼女は僕のものになった。
そして、僕も彼女のものになるんだ。
食いちぎられた指からボタボタと血を垂らしながら、僕は服を脱ぐ。そうして、一糸まとわぬ姿になって、彼女の傍にひざまずいた。
僕は横たわったままの彼女に手をかけ、抱き起こす。すかさず彼女は首を捻り、僕の腕に歯を喰い込ませた。
彼女に躊躇いはない。
ミチリと音がして、僕の腕の肉はブチブチと繊維を断ち切る音を立てながらいとも簡単にむしり取られる。
強烈な痛みが肩まで走り抜けたけれど、それよりも大きな喜びが僕の脳みそを支配していた。
はしたないくらいに音を立てながら、彼女が僕を咀嚼する。呑み込んでいる――僕が、彼女の中に入っていく。彼女の奥底へと。
やがて僕の全ては彼女の胎内に収まるんだ。
僕は彼女の前に横たわった。さっきまでは寝転がっていた彼女を僕が見下ろしていたけれど、その立場が入れ替わった。
彼女が僕を見下ろし、可愛らしく舌なめずりをする。
どれだけ時間をかけてもいいから、一片残らず、僕を平らげて欲しい。血の一滴も余すことなく。
仰向けになった僕の腹に、彼女の唇が寄せられる。臍よりも下をペロリと舐められて、思わず僕は身震いした。コントロールできずに高まってしまった身体が、気まずい。そんな劣情は彼女に対して抱いていないんだけど、まあ、生理現象なんだから、許してもらおう。
彼女が僕の腹に頬ずりをして、そして喰らい付く。
引っ張られ、千切られ、また引っ張られる。
ああ、痛い。だけど、気持ちいい。
頭の芯が恍惚感でジンと痺れる。
野生動物は捕食される時には脳内麻薬が出るから快感を覚えるんだっけ?
きっと、今の僕もそれに違いない。それに何より、相手が彼女だからだな。
僕の腹から、ズルズルと何かが引きずり出される。彼女はしばらくそれに夢中になっていたみたいだけど、グイグイと、引っ張れば引っ張るほど出てくるから、じきに諦めたようだ。また、僕の中に顔を突っ込んでくる。
簀巻きにされたままだからさぞかしやりにくいだろう。
でも、自由に動けるようにしたら、この部屋から出て行ってしまうかもしれないからね。
彼女が僕以外のものを口にするなんて、絶対に許せないから。
今彼女が貪っているのは、何だろう。
肝臓?
腎臓?
脇腹がむしられた。
ベリベリと剥がされていく。
ただただ響き渡る、咀嚼の音。それは彼女が僕に夢中になっている証だから、とても愛おしい囁きに聴こえてくる。
思わず彼女を抱き締めようとした腕は、大きく肉を持っていかれた拍子に筋をやられてしまったのか、持ち上げることができなくなってしまった。
彼女に届かなくなったその腕に、彼女の柔らかな舌が這い、歯が食い込む。
苦痛と、快感。
それが交互に、同時に、僕に襲いかかる。
ほんの少し頭を起こして彼女の様子を確かめようとしたんだけど、流石にちょっと血が足りなくなってきたのか、寝転がっているのにクラリとめまいを覚えた。頭がボウッとする。
できる限り彼女を感じていたいのに――腕とか脚とかから先にいかせるべきだったかな。
そんな後悔が、チラリと頭をよぎった。
ふと、彼女が顔を上げた。真っ赤に染まった中で、ゆっくりと瞬きをする。
とろんとした眼差しと、確かに目が合ったんだと思う。
僕が微笑みかけると、彼女も微笑み返してくれたような気がした。
そしてまた彼女が顔を伏せ、僕がどんどん彼女の中に入っていく。
彼女のこれほど奥深くには、誰も入ったことが無いんだ――それは、僕だけ。今までも、これからも。
彼女はこの部屋で、僕と二人きりで、僕をその中に収めたままで、朽ちていく。
僕と彼女は、永遠に一つなんだ。
永遠に、誰にも邪魔されることなく。
「愛してるよ」
ちゃんと声が出ているかどうか自信が無かった。
目がくらむほどの恍惚が、僕の意識を麻痺させてしまったから。
――愛してるよ。
僕はもう一度囁いて、あとはもう、押し寄せてくる暗闇に身を任せた。
食事を摂る僕を見つめる彼女の目が、強い光を放っている。
「ねえ、お願い、私にも何か食べさせて……お腹が空いたの、すごく……」
切実な声でそう言われると心が揺らぐ。でも、彼女にはお腹を空かせていてもらわないといけないからね。
彼女に見せ付けるようなことをせずに食べたらいいんだろうけど、せっかくこうやって一緒にいるのに、一秒でも目を逸らしてはいられない。
彼女のことを、ずっと見ていたいんだ。
「これで我慢してくれるかな」
僕は言いながら、スポーツ飲料のペットボトルを彼女の口元にあてがった。彼女は恨めしそうな目で僕を見つめながらも、中身を飲み干す――まるで赤ん坊みたいに、必死に。
彼女の世話は、全部僕がしていた。こうやって水分を摂らせるのも――排泄の世話も。
別に、いやらしい気持ちは全然ないんだよ?
ただ、彼女を間近で見つめて、彼女に触れられるというだけで、僕は幸せなんだから。
腿の傷の手当てもしているんだけど、どうやら膿んでしまったみたいだ。キレイだった肌から濁った嫌な臭いがする黄色い汁がじくじくと染み出して、巻いてある包帯を始終汚している。二、三時間に一回交換してあげないと、あっという間にビタビタになってしまう。
でも、そういう汚い世話も、全然イヤじゃない。
もうずっと、初めて大学の構内で彼女を見かけた時から、こうしてあげたいと思っていたんだ。
一日中彼女と一緒に居て、一日中彼女に触れて、彼女を愛して、慈しんで。
汚れ仕事だって、全然気にならない。
むしろ、それすら僕の庇護欲を掻き立てる。
だって、僕は彼女を愛しているから。
彼女の全ては僕のものなんだ。
「包帯を取り換えてあげるね」
そう言うと、ぼんやりとした彼女の目がうっとりと僕を見返してきた。
ほら、この目。どうしようもなく僕に焦がれているこの目。
彼女も、僕のことを愛している。そうに決まってる。
――もうじきこの時間が終わってしまうのが、ちょっと残念だった。
だから、一瞬一瞬に心を込めて、僕は彼女の世話をする。
ジリジリと時間が過ぎて、やがて三日目の朝が来る。
浅い眠りから目覚めた僕は、お腹は空いていなかったけれど、半ば無理やり食事を口にする。
だって、彼女には良いものを食べさせてあげたいからね。
「おはよう」
彼女に声をかけて、バックパックから取り出したプロテインバーを齧っては、缶コーヒーで流し込む。
そうやって食事をしている僕を、彼女はジッと見つめている。
昨日までとは違って、ひたむきに彼女の視線が注がれているのは、僕だ。僕自身だ――僕が手にしている食事じゃない。彼女は、僕を、見つめている。
欲望に満ち満ちた眼差しで。
そう、まさに、僕を食べてしまいたいという目だった。
昨日の晩から今日にかけて、彼女の口数はめっきり減っている。
何も言わず、ただ、ひたすら僕を見つめるだけだ。その眼差しに、溢れんばかりの渇望の色を浮かべて。
あまりに熱いその眼差しに、僕はクラクラする。
ツッと、彼女の口元から唾液が滴り落ちた。
僕は頬を伝ったそれに、指を伸ばす。
爪の先が彼女に届こうとした、その時だった。
パッと、彼女の頭が動いた。
そして、走った、衝撃。
僕は今まで大きな怪我などしたことが無い。だから、一瞬、それが痛みだと認識できなかった。
強いて言うなら、渾身の力でどこかに手を叩き付けた感じ、と表現したらいいのかもしれない。そして、月並みだけれど、焼けつくような、痛み。本なんかで「焼き鏝を押し付けられたような」って言うけれど、確かに、そんな感じなのかも。
見れば彼女の口元は真っ赤で、何かを――僕の手から失われた三本の指を、咀嚼している。
ゴリ、バリ、ゴリン。
指には殆ど肉が付いていないから、美味しくはないに違いない。
だけど彼女は、それを吐き出すことなく噛み続け、そして音を立てて呑み込んだ。
この上なく満足そうに。
その姿に、僕の中に喜びが溢れかえる。
ああ、ついにその時が来たんだ。
彼女は僕のものになった。
そして、僕も彼女のものになるんだ。
食いちぎられた指からボタボタと血を垂らしながら、僕は服を脱ぐ。そうして、一糸まとわぬ姿になって、彼女の傍にひざまずいた。
僕は横たわったままの彼女に手をかけ、抱き起こす。すかさず彼女は首を捻り、僕の腕に歯を喰い込ませた。
彼女に躊躇いはない。
ミチリと音がして、僕の腕の肉はブチブチと繊維を断ち切る音を立てながらいとも簡単にむしり取られる。
強烈な痛みが肩まで走り抜けたけれど、それよりも大きな喜びが僕の脳みそを支配していた。
はしたないくらいに音を立てながら、彼女が僕を咀嚼する。呑み込んでいる――僕が、彼女の中に入っていく。彼女の奥底へと。
やがて僕の全ては彼女の胎内に収まるんだ。
僕は彼女の前に横たわった。さっきまでは寝転がっていた彼女を僕が見下ろしていたけれど、その立場が入れ替わった。
彼女が僕を見下ろし、可愛らしく舌なめずりをする。
どれだけ時間をかけてもいいから、一片残らず、僕を平らげて欲しい。血の一滴も余すことなく。
仰向けになった僕の腹に、彼女の唇が寄せられる。臍よりも下をペロリと舐められて、思わず僕は身震いした。コントロールできずに高まってしまった身体が、気まずい。そんな劣情は彼女に対して抱いていないんだけど、まあ、生理現象なんだから、許してもらおう。
彼女が僕の腹に頬ずりをして、そして喰らい付く。
引っ張られ、千切られ、また引っ張られる。
ああ、痛い。だけど、気持ちいい。
頭の芯が恍惚感でジンと痺れる。
野生動物は捕食される時には脳内麻薬が出るから快感を覚えるんだっけ?
きっと、今の僕もそれに違いない。それに何より、相手が彼女だからだな。
僕の腹から、ズルズルと何かが引きずり出される。彼女はしばらくそれに夢中になっていたみたいだけど、グイグイと、引っ張れば引っ張るほど出てくるから、じきに諦めたようだ。また、僕の中に顔を突っ込んでくる。
簀巻きにされたままだからさぞかしやりにくいだろう。
でも、自由に動けるようにしたら、この部屋から出て行ってしまうかもしれないからね。
彼女が僕以外のものを口にするなんて、絶対に許せないから。
今彼女が貪っているのは、何だろう。
肝臓?
腎臓?
脇腹がむしられた。
ベリベリと剥がされていく。
ただただ響き渡る、咀嚼の音。それは彼女が僕に夢中になっている証だから、とても愛おしい囁きに聴こえてくる。
思わず彼女を抱き締めようとした腕は、大きく肉を持っていかれた拍子に筋をやられてしまったのか、持ち上げることができなくなってしまった。
彼女に届かなくなったその腕に、彼女の柔らかな舌が這い、歯が食い込む。
苦痛と、快感。
それが交互に、同時に、僕に襲いかかる。
ほんの少し頭を起こして彼女の様子を確かめようとしたんだけど、流石にちょっと血が足りなくなってきたのか、寝転がっているのにクラリとめまいを覚えた。頭がボウッとする。
できる限り彼女を感じていたいのに――腕とか脚とかから先にいかせるべきだったかな。
そんな後悔が、チラリと頭をよぎった。
ふと、彼女が顔を上げた。真っ赤に染まった中で、ゆっくりと瞬きをする。
とろんとした眼差しと、確かに目が合ったんだと思う。
僕が微笑みかけると、彼女も微笑み返してくれたような気がした。
そしてまた彼女が顔を伏せ、僕がどんどん彼女の中に入っていく。
彼女のこれほど奥深くには、誰も入ったことが無いんだ――それは、僕だけ。今までも、これからも。
彼女はこの部屋で、僕と二人きりで、僕をその中に収めたままで、朽ちていく。
僕と彼女は、永遠に一つなんだ。
永遠に、誰にも邪魔されることなく。
「愛してるよ」
ちゃんと声が出ているかどうか自信が無かった。
目がくらむほどの恍惚が、僕の意識を麻痺させてしまったから。
――愛してるよ。
僕はもう一度囁いて、あとはもう、押し寄せてくる暗闇に身を任せた。
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