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断罪
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僕と弟は日本兵の格好をして祖父の布団の前に座った。僕らは祖父に正体がバレないように帽子を目深に被り、祖父が目覚めるのを待った。
祖父は目を覚ますと、ゆっくりと起き上がった。そして僕らを見て、カッと目を見開いた。正体がバレるかと思ったが、祖父は急に涙を流しながらこう言った。
「中川、松田。ごめんなぁ」
祖父はずっと前から戦時中に見殺しにした部下に謝りたいと言っていた。僕は祖父のことが大好きだったからこそ、こんなことをしたのだ。祖父には後悔のない幸せな人生を送ってほしかったのだ。しかし、祖父は突然妙なことを言い出した。
「あの時は食糧が少なくて精神的に余裕がなかったんだ。俺も生き残るために必死だった。本当にすまないことをした」
は?祖父が言っていた話と違う。祖父は僕には怪我をした部下を見殺しにしてしまったと言っていたのだ。すると、弟が祖父にこう質問した。
「反省している割には、孫には僕らを殺した理由を偽っていたのはどうしてですか?」
「……」
「どうして僕たちが死んだ島には慰霊碑には足を運んでくれなかったのです?」
「お金がなくて……」
「去年、ハワイ旅行に行ってませんでした?」
「……」
「本当は別の理由があるのではないですか? 例えば、僕たちを殺した後に島の住人も殺したとか」
「あれは、あれは仕方なかったんだ」
「あと、赤紙で召集されたと言っていましたが、上官殿は自分で志願して陸軍に入られたのですよね? どうして嘘をつく必要があるのです?」
「それは……」と祖父は胸元の十字架を強く握りしめた。
「そんな嘘つかなくても大丈夫ですよ。どんな理由であれ人を殺したら地獄生きなので。赤紙で強制的に召集されて無理矢理戦地に来た場合でも同様です。言い訳をしたところで罪を犯した以上、あなたの罪は軽くなりません。たとえ、どんな宗教を信仰していようともね」
祖父はその言葉を聞くと、枕の下に置いてあった短刀を手に取り、それを腹に突き刺した。
「おい、なんてことしたんだ? 僕らの目的はおじいちゃんの罪を許すことであり、糾弾することじゃなかったはずだろ?」と言いながら、僕は弟に掴みかかった。
「でも、兄貴はこいつが嘘ついてることは知らなかったんだろ? 多分、こいつ教会でも嘘の告解してたんだよ。人を殺しておいて、その理由を嘘までついて許してもらうとする人間は生きていちゃいけない」
「戦時中だったんだし仕方なかったんだろ」
「戦時中だったらすべての殺人が許容されるのか? それこそ問題だろ」
「加害者を断罪するのは被害者の役目だ。部外者の僕たちがやっていいことじゃない」
「死んだ被害者がどうやって加害者を断罪するんだ? 現に加害者が真実を握りつぶしていたじゃないか」
「でも、そうだとしてもこんな結末はダメだ。優しかったおじいちゃんがこんな……」
「アウシュヴィッツの看守だって家族の前では優しく振る舞うさ」
「だけど、それでも……」
「兄貴は優しいんだな。でもそれなら俺と口論する前にやることがあるだろ?」
弟はそう言うと、祖父をちらりと見た。祖父は前屈みになり、腹からは腸が飛び出しており、微かな呻き声を上げている。布団は血で真っ赤に染まっていた。これはもう助からないだろうな。僕は深い悲しみを背負いながら、床の間に飾ってあった日本刀を手に取った。
祖父は目を覚ますと、ゆっくりと起き上がった。そして僕らを見て、カッと目を見開いた。正体がバレるかと思ったが、祖父は急に涙を流しながらこう言った。
「中川、松田。ごめんなぁ」
祖父はずっと前から戦時中に見殺しにした部下に謝りたいと言っていた。僕は祖父のことが大好きだったからこそ、こんなことをしたのだ。祖父には後悔のない幸せな人生を送ってほしかったのだ。しかし、祖父は突然妙なことを言い出した。
「あの時は食糧が少なくて精神的に余裕がなかったんだ。俺も生き残るために必死だった。本当にすまないことをした」
は?祖父が言っていた話と違う。祖父は僕には怪我をした部下を見殺しにしてしまったと言っていたのだ。すると、弟が祖父にこう質問した。
「反省している割には、孫には僕らを殺した理由を偽っていたのはどうしてですか?」
「……」
「どうして僕たちが死んだ島には慰霊碑には足を運んでくれなかったのです?」
「お金がなくて……」
「去年、ハワイ旅行に行ってませんでした?」
「……」
「本当は別の理由があるのではないですか? 例えば、僕たちを殺した後に島の住人も殺したとか」
「あれは、あれは仕方なかったんだ」
「あと、赤紙で召集されたと言っていましたが、上官殿は自分で志願して陸軍に入られたのですよね? どうして嘘をつく必要があるのです?」
「それは……」と祖父は胸元の十字架を強く握りしめた。
「そんな嘘つかなくても大丈夫ですよ。どんな理由であれ人を殺したら地獄生きなので。赤紙で強制的に召集されて無理矢理戦地に来た場合でも同様です。言い訳をしたところで罪を犯した以上、あなたの罪は軽くなりません。たとえ、どんな宗教を信仰していようともね」
祖父はその言葉を聞くと、枕の下に置いてあった短刀を手に取り、それを腹に突き刺した。
「おい、なんてことしたんだ? 僕らの目的はおじいちゃんの罪を許すことであり、糾弾することじゃなかったはずだろ?」と言いながら、僕は弟に掴みかかった。
「でも、兄貴はこいつが嘘ついてることは知らなかったんだろ? 多分、こいつ教会でも嘘の告解してたんだよ。人を殺しておいて、その理由を嘘までついて許してもらうとする人間は生きていちゃいけない」
「戦時中だったんだし仕方なかったんだろ」
「戦時中だったらすべての殺人が許容されるのか? それこそ問題だろ」
「加害者を断罪するのは被害者の役目だ。部外者の僕たちがやっていいことじゃない」
「死んだ被害者がどうやって加害者を断罪するんだ? 現に加害者が真実を握りつぶしていたじゃないか」
「でも、そうだとしてもこんな結末はダメだ。優しかったおじいちゃんがこんな……」
「アウシュヴィッツの看守だって家族の前では優しく振る舞うさ」
「だけど、それでも……」
「兄貴は優しいんだな。でもそれなら俺と口論する前にやることがあるだろ?」
弟はそう言うと、祖父をちらりと見た。祖父は前屈みになり、腹からは腸が飛び出しており、微かな呻き声を上げている。布団は血で真っ赤に染まっていた。これはもう助からないだろうな。僕は深い悲しみを背負いながら、床の間に飾ってあった日本刀を手に取った。
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