dual personality

天道 一真

文字の大きさ
7 / 13

エピソード6

しおりを挟む
「最初に入れ替わってから、僕はずっと考えてた。何でみんな、白亜を受け入れていたんだろうって」
 あの時は状況が目まぐるしく変わっていって落ち着きがなかったな。と昔の思い出のように思い出す。
 「初めは全然分からなかったんだ。けど、今ならわかると思う。いや、分かる」
 「ほう?」
 白亜は気になる様子で相槌をうった。僕はそれに、背中を押された気がした。
 自分の中のあいまいな答えを確実なものにするため、僕は答える。
 「今の僕の人格は要らないものだった……そう思う」
 「……!?」
 少し、白亜が息をのんだのが分かった。僕はそれを意外に感じたがそれでも進める。
 「けどそれは今の自分を捨てるとかそうじゃなくで、みんなのために自分を変えたつもりだったけど、結局それは逆にみんなを苦しめることだって。そう気づいたんだ」
 そして精一杯の勇気をもって次の言葉を絞り出した。
 「それに器具けたのは、白亜。君のおかげなんだ。………ありがとう」
 そう笑顔で白亜に言った。
 白亜は少し意外そうな表情を浮かべた後、
 「よかった……」
 「え?」
 微笑を浮かべ、僕には聞こえない音量で何かつぶやいた。
 僕は伝えるべきことは伝えた。
 「なるほど。よく分かった。君から礼を言われることはしていない。が、どういたしましてと言っておくよ」
 白亜は少し不満そうに言った。
 「つまり君は今まで僕という人格を否定していた。しかし今は僕という人格の存在を認めた。ということだね?」
 「うん。そんな感じ」
 今まで否定していた分、これから認めて理解していく。それまでしてきた罪を少しでも償うんだ。僕はそう誓った。
 「それで、君はそれを知ったうえでどうしたいの?」
 「え?」
 「今の君は、君自身を変えたのであって今の状況を変えたわけじゃない。まあそもそも今の君に状況を変えるような力はないけどね」
 白亜は呆れた様子でたたみかけるように僕にそう言ってきた。
 「はぁ……」
 白亜はため息をつくと、
 「表に戻してあげるよ」
 突然そう言ってきた。
 「………なんで?」
 「僕はもともと前の君を今の君にするために行動していたんだ。使命が果たされた今、これ以上僕が表にいる理由はないよ」
 「……そうか」
 僕はこのことに素直に喜べなかった。僕は今まで主人格に戻るために必死だったが、「今は白亜はどうなるのか。白亜はまた長い間この中に居続けるのか。必要とされているのが白亜のほうだから、白亜が望むなら」ということを考えてしまう。どうすればいいか分からなかった。
 「心配はいらないよ。僕がこうしたいんだ」 
 心配していると思われたのか、白亜はそう言った。
  「じゃあ目をつむって。目覚めるころには戻っているはずだよ」
 白亜は僕に何も言わせないようにすぐに戻させる作業を始めた。
 「本当に、それでいいの?」
 どうしても聞きたかったことを僕は問いかけてみた。すると白亜の動きが少し止まった気がした。
 「何回も言わせないで」
 白亜は素っ気ない返事をした。
 「ごめん。……じゃあ目を閉じるよ」
 僕は白亜についての疑念を持ちながら、白亜の指示に従った。
 「それでいい。じゃあ、―――さようなら」
 白亜はどこかに苦しいそうな声でそう言ってきた。
 それと同時に僕はいつか感じたように、深い眠りに落ちたのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

幽縁ノ季楼守

儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」 幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。 迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。 ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。 これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。 しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。 奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。 現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。 異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー 様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。 その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。 幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。 それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

ガチャから始まる錬金ライフ

盾乃あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

処理中です...