3 / 13
2話 英雄ルート? 遊び人ルート?
しおりを挟む
「なんだその顔、まるで何が起きたか分からねぇって感じだな」
目の下にクマがあり、右手には酒、上下黒のよれよれとした服を着た、無精髭のおっさんが、こっちをニヤニヤしながら見てきている。
「いや、実際何が起きたか全く分かんないんだが」
恩恵を調べてもらったと思ったら、有無も言わせずここに放り出された。
「ナーゼル……って言ってたな……」
「なんだ? 陰の神がどうかしたか?」
「いや、俺がナーゼルと同じ血の恩恵? ってみんなが騒ぎ出して……って おっさん誰なの?」
「ああ、俺はガルフ。この街で遊び人として生きてる男だ。ところでお前、血の恩恵って言われたのか?」
「そうなんだよ、そしたら外に放り出されて」
「てかなんで小僧、その歳で恩恵なんて調べたんだ?」
見るからにだめオヤジのオーラが出ているガルフだが、悪い人では無さそう(多分)なのでガルフに今までの経緯を話すことにした。
「なるほどな、記憶がねぇなら、分からないでも無理はないわな。いいか小僧、お前のその血の恩恵ってのはな、陰の神ナーゼルが得意とした力って言われてんだ。だからお前はナーゼルと同じ力を持ったものとして王都を追放されたんだ。ここまでで質問あるか?」
「その、ナーゼルってなんでそんな嫌われてんの?」
「まぁ簡単に言うとナーゼルは人間嫌いの神様って言われてるからだな」
どうやら俺は、悪者の神様と同じ力を持ってるから外に出されたらしい。俺は悪者としてここに召喚されたのか? よく分からない。
「まぁ、王都の連中は恩恵に拘るからな、不運だったな。とりあえず、記憶がねぇんだったら、俺たちの酒場に来な。腹も減ってんだろ。」
色々起きて忘れていたが、夕飯前のランニング中にここに召喚されてるせいで確かに腹がめちゃくちゃ減っている。
「他に行くあてもないしな……」
とりあえず、食事にありつけそうなので、俺はガルフについて行くことにした。
ガルフが連れてきてくれた酒場に入ると、中には数人の人がいた。
「どうだ、ドーゴン儲かってるかー?」
「なんだガルフか、酒もう切れたのか?」
どうやらあの褐色の肌のでかい男がこの酒場の店主らしい。
「ちと面白いガキを拾ってな、腹減ってるみたいだから、なんか飯作ってやってくれ」
「はいよ、ちょっと待ってな兄ちゃん」
しばらくすると、というか、ものの数分で、ピラフのようなものが出てきた。
「うまっ!!」
「だろ、ドーゴンの飯はこの辺じゃ一番だ」
「そこは世界一だろが」
「二人とも仲良いんだな」
「まぁ腐れ縁だな、というか小僧、まだ名前を聞いてなかったな」
「そうだっけ、俺の名前はナツ。カンザキ ナツ」
「パッとしねえ顔のくせに、いい名前だな小僧」
パッとしないは余計だろうが。このパッとしない顔のせいで俺は、青春を謳歌出来なかったと言っても過言ではない。まぁ他にも問題はあるだろが。
「ナツ、面白い匂いする」
「いや近っ!」
気づいたら、一人の少女が俺のすぐ横まで来てすんすんと匂いを嗅いでいる。
その少女は俺より少し低い背丈で、青白い目、目と似た色の長い髪、そして何より俺を驚かせたのが、
「耳……ケモ耳だ……」
「なんだ獣人についても忘れてんのか小僧。そいつは、ノア。普通獣人は恩恵を貰えねぇって言われてるがそいつはちょっと特別でな、訳あって俺たちと同じ遊び人してんだ」
どうやらこの世界には魔物だけじゃなく獣人もしっかりいるらしい。
「その遊び人ってのはなんなの?」
「遊び人ってのはなー、何にも縛られず、自由に生きてく、誇り高い人々をさす言葉だ」
なるほど、いうなれば浪人ってことか。しかしこれはどうやら俺は、英雄ルートではなく、遊び人ルートへと進んでいる気がする。
「ノアはガルフと違う。ナツ大丈夫。ガルフがだめだめなだけ」
良かった。俺は遊び人ルートと言ってもガルフルートって訳ではなさそうだ。
「兄ちゃん、これからどうすんだい。行くあてもないんだろ。」
「それなら小僧、隣の宿に泊まりな、なに心配はいらねぇよ。お代はとらねぇから、な! ドーゴン!」
「おいおい、ノアの時もそうだが、連れてくるなら責任取れよなお前」
どうやら、隣の宿もドーゴンさんが経営してるらしく、俺はそこで寝泊まりさせてもらえることになった。急に異世界にきて、王都を追放され、どうなるかと思ったが、なんとか泥水をすすり、野宿することにはならなくて済んだ。
「まぁひとまず、最悪の状況って訳じゃないよな……」
そうして俺は安心したからか、深い眠りについた。
目の下にクマがあり、右手には酒、上下黒のよれよれとした服を着た、無精髭のおっさんが、こっちをニヤニヤしながら見てきている。
「いや、実際何が起きたか全く分かんないんだが」
恩恵を調べてもらったと思ったら、有無も言わせずここに放り出された。
「ナーゼル……って言ってたな……」
「なんだ? 陰の神がどうかしたか?」
「いや、俺がナーゼルと同じ血の恩恵? ってみんなが騒ぎ出して……って おっさん誰なの?」
「ああ、俺はガルフ。この街で遊び人として生きてる男だ。ところでお前、血の恩恵って言われたのか?」
「そうなんだよ、そしたら外に放り出されて」
「てかなんで小僧、その歳で恩恵なんて調べたんだ?」
見るからにだめオヤジのオーラが出ているガルフだが、悪い人では無さそう(多分)なのでガルフに今までの経緯を話すことにした。
「なるほどな、記憶がねぇなら、分からないでも無理はないわな。いいか小僧、お前のその血の恩恵ってのはな、陰の神ナーゼルが得意とした力って言われてんだ。だからお前はナーゼルと同じ力を持ったものとして王都を追放されたんだ。ここまでで質問あるか?」
「その、ナーゼルってなんでそんな嫌われてんの?」
「まぁ簡単に言うとナーゼルは人間嫌いの神様って言われてるからだな」
どうやら俺は、悪者の神様と同じ力を持ってるから外に出されたらしい。俺は悪者としてここに召喚されたのか? よく分からない。
「まぁ、王都の連中は恩恵に拘るからな、不運だったな。とりあえず、記憶がねぇんだったら、俺たちの酒場に来な。腹も減ってんだろ。」
色々起きて忘れていたが、夕飯前のランニング中にここに召喚されてるせいで確かに腹がめちゃくちゃ減っている。
「他に行くあてもないしな……」
とりあえず、食事にありつけそうなので、俺はガルフについて行くことにした。
ガルフが連れてきてくれた酒場に入ると、中には数人の人がいた。
「どうだ、ドーゴン儲かってるかー?」
「なんだガルフか、酒もう切れたのか?」
どうやらあの褐色の肌のでかい男がこの酒場の店主らしい。
「ちと面白いガキを拾ってな、腹減ってるみたいだから、なんか飯作ってやってくれ」
「はいよ、ちょっと待ってな兄ちゃん」
しばらくすると、というか、ものの数分で、ピラフのようなものが出てきた。
「うまっ!!」
「だろ、ドーゴンの飯はこの辺じゃ一番だ」
「そこは世界一だろが」
「二人とも仲良いんだな」
「まぁ腐れ縁だな、というか小僧、まだ名前を聞いてなかったな」
「そうだっけ、俺の名前はナツ。カンザキ ナツ」
「パッとしねえ顔のくせに、いい名前だな小僧」
パッとしないは余計だろうが。このパッとしない顔のせいで俺は、青春を謳歌出来なかったと言っても過言ではない。まぁ他にも問題はあるだろが。
「ナツ、面白い匂いする」
「いや近っ!」
気づいたら、一人の少女が俺のすぐ横まで来てすんすんと匂いを嗅いでいる。
その少女は俺より少し低い背丈で、青白い目、目と似た色の長い髪、そして何より俺を驚かせたのが、
「耳……ケモ耳だ……」
「なんだ獣人についても忘れてんのか小僧。そいつは、ノア。普通獣人は恩恵を貰えねぇって言われてるがそいつはちょっと特別でな、訳あって俺たちと同じ遊び人してんだ」
どうやらこの世界には魔物だけじゃなく獣人もしっかりいるらしい。
「その遊び人ってのはなんなの?」
「遊び人ってのはなー、何にも縛られず、自由に生きてく、誇り高い人々をさす言葉だ」
なるほど、いうなれば浪人ってことか。しかしこれはどうやら俺は、英雄ルートではなく、遊び人ルートへと進んでいる気がする。
「ノアはガルフと違う。ナツ大丈夫。ガルフがだめだめなだけ」
良かった。俺は遊び人ルートと言ってもガルフルートって訳ではなさそうだ。
「兄ちゃん、これからどうすんだい。行くあてもないんだろ。」
「それなら小僧、隣の宿に泊まりな、なに心配はいらねぇよ。お代はとらねぇから、な! ドーゴン!」
「おいおい、ノアの時もそうだが、連れてくるなら責任取れよなお前」
どうやら、隣の宿もドーゴンさんが経営してるらしく、俺はそこで寝泊まりさせてもらえることになった。急に異世界にきて、王都を追放され、どうなるかと思ったが、なんとか泥水をすすり、野宿することにはならなくて済んだ。
「まぁひとまず、最悪の状況って訳じゃないよな……」
そうして俺は安心したからか、深い眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる