孤塁の縁 第二章 ~死装束の少年~

上野たすく

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エピローグ・ユウセイ

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 ユウセイはブロサムの王に会い、ソロの奇病薬になりうる液体が入った瓶を手渡した。ケイセイからの頼まれごとだった。完治するかどうかはわからないが、症状は軽くなると説明を添える。
 本当はケイセイに直接会いたかったが、RO2の件で彼にはエイセイ殺害の容疑がかけられている。また、ブロサムへの恩義を売るための外交がなければ、王族であるユウセイがアリサという女性を迎えに行くジェット機に同行することは困難だっただろう。
 仕方がない。だが、寂しかった。
 ブロサムの王は家臣と軍人を引き連れ、ユウセイを贖罪の池へと案内した。木々に囲まれた場所には大きな穴が開いていて、水の一滴もなかった。
 池がなくなったことは大きな損失であるが、それ以来、奇病を発症する者がいなくなったと王が言う。
 ユウセイがえぐり取られたような跡を見つめていると、数人の城の人間を引き連れた青年が背後からやってきた。肩までの青髪を持つ青年は不自然な地面を目にし、嬉しそうに笑んだ。背筋が悪寒が走る。
「ユニ?」
 王が青年に声をかける。
「僕が知る限り、こんなことをできるのは神を除いて唯一人」
 王が驚く。
「犯人に心当たりがあるのか?」
 ユニという青年が王に頭を下げる。
「はい。私の兄の技術力であれば可能かと」
 ユニは王に敬意を払った物言いをした。
「なに?」
 王が憤慨する。
「まことに残念なことに、兄は同胞に嬲り殺され、この地に来ることすら叶いませんが」
 淡々としたユニに対し、王は唸った。
「お前には多額の金をつぎ込んでいる。結果を出してもらわねば困る」
 王が家臣に首を振る。巻き髪の男はユニにユウセイが持ってきた薬を渡した。
「リヴォーグ王国からだ。奇病を緩和できるそうだ。そうですね。ユウセイ王子」
 話を振られ、ユウセイは頷いた。
 ユニはユウセイに会釈をし、王に微笑んだ。
「この薬は私が責任をもって、ソロへと届けます」
「ああ。任せたぞ」
 ユニが頭を下げ、木々の間へと歩いていく。
「あの方は?」
 ユウセイが尋ねると王は息をついた。
「技術者です。国の発展のためと思い、他国から雇ったのですが、扱いが難しくて手を焼いております」
 ユウセイはユニが向かった先を見つめた。
 青年の姿はすでになかった。
 不気味な男だ。願わくば、関わりたくない種類の人間だ。
 風が吹き、葉が揺れる。どこからか甘い花の香がした。

                                    完
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