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神薙が部屋に飛び込んできた。
「朝波君、都市にイーバが出現した!」
「戦闘用フィールド・オニキスを展開します! 準備ができ次第、各戦闘班はリーダーに従い、転送室へ向かってください! 繰り返します!」
三代と呼ばれた女性の声が、警戒音に重なる。
朔に手を引かれ、一心は部屋を走り出た。
神薙は追いかけてこなかった。
警戒音は通路にも響いていた。
朔はドアのセキュリティーセンサーを何度も解除し、最後にサムターンの鍵を開けた。
ドアの先には、オレンジ色のトンネルではなく、新鮮な空気が待っていた。飯島がフェイクだと訂正した施設が背後にあった。
朔は門へと一心を促した。
途中、駐輪場で電動自転車を拝借する。それの鍵は、朔が意識を送り、外した。
一心が自転車を押し、黒い格子状の門のところへとたどり着く。
ここまで、誰にも会わなかった。それほど、緊迫した状況なのだ。
朔が瞼を閉じ、開けると、門の鍵は、いとも容易く、解除された。
「先に出て。門、閉めなきゃだから」
疑わず、朔を追い越した。
「前の道を、まっすぐに走れば、町につく」
朔は世間話のような口調だ。
ギギギと、金属が擦れる音がし、後悔に襲われた。
朔は一心に止める暇も与えずに、門を閉め、施錠した。
「なに、してる?」
声が震えていた。
「ここには、俺と同じように、無理矢理、生き方を変えられた人たちがいる。役に立たなきゃ」
「だったら、警察とか自衛隊とかに助けを求めにいこう。俺達、子どもにできることは、まず、そこからだろ? とにかく」
言って、手の中にある自転車に舌打ちした。
朔は初めから、離れるつもりで、荷物になるであろう自転車を、一心に持たせたことに、気づいたからだった。
スタンドをたて、朔へと駆けた。
「とにかく、こっちへ来い」
朔は切なげに首を横に振るった。
「一心がここへ来たとき、俺の機嫌をとるために、組織が連れてきてくれたんだと思った。けど、神薙さんの言葉で、そうじゃないってわかった。飯島さんたちは新月の適合者として、一心をここへ呼んだんだ。模様が出てない状態の一心を」
朔の声音が憎悪で濁る。
ここにいてはダメな理由が、一つ、一心の中で増えた。
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