クローバー

上野たすく

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86(大人向け)

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 うような眼差しに、心臓が痛んだ。
「好きだよ」
 零れた言葉は、神薙の感情そのものだった。
 絢斗はぎこちない微笑みで迎えてくれた。
「好きだ」
 口にするたび、特別な想いが募っていく。
 額をつけ、吐息した。
「好きだよ」
「うん……」
 その声は、涙を含んでいた。
 腕を首に回される。
 口づけ、舌を重ねた。
 絢斗が腕を下げる。
 神薙は絢斗の穏やかな微笑みを見ながら、体を起こし、避妊具を自分自身につけた。
 絢斗に覆い被さり、彼の後方に自分自身をあてがう。
 青年の掌が頬を包み込んできた。
 引き寄せられるように口づけ、ゆっくりと彼の中へ入り込んだ。
 絢斗の舌が小刻みに揺れた。
「痛くないか?」
 尋ねると、絢斗は小さく首肯した。
 よかった。
 目が合った。
 夜の海のような闇色だ。
「綺麗だ」
「ん? なに?」
「君は綺麗だ」
 神薙の零れ出た感情に、相手は赤くなった。
 頬を染めたまま、そっぽを向く。
「あんたの好みの顔だった?」
 なんと言えば正解だろう。
「そうだな」
 わからないから、自分の気持ちを探り、言葉を綴った。
「正直に言えば、誰かの外見に惹かれたのは初めてだ」
「初めてが俺だなんて、ご愁傷様」
 絢斗が皮肉げに口角を上げる。
「外見の前に、君の人柄があってこそだがな」
 視線が混じり合う。
 感情が上手く隠せない時の絢斗の表情は幼く、余計、神薙の心を締めつけた。
 自分自身が痛む。
 眉を歪めた。
「好き」
 下から囁かれた声に、耳を疑った。
 絢斗は真剣な眼差しで、神薙を見つめていた。
「それは」
「あんたにだけ要求するのは、卑怯だからな」
 真面目に言われ、神薙は苦笑した。
 気を取り直し、微笑んで絢斗の耳元に唇を近づけた。
「好きだよ。そういうところも」
 ゆっくりと腰を動かす。
 尖った喘ぎ声がやさしくなるまで、刺激を送った。
 時間をかけたぶんだけ、腹部が絢斗の体液に濡れた。
 何度目かの射精後、もう無理だとしがみつかれ、動きをとめた。
 この時間を終わらせたくない。
 まだ。
 もう少しだけ。
 だけど、絢斗の負担にはなりたくない。
 慎重に絢斗の中から出ようとし、抱き寄せられた。
「やめないで……」
 求められた事実に、心臓が爆ぜるように痛んだ。
 好きだ。
「ああ」
 彼が好きだ。
 誰にも渡したくない。
 本当は僕を選んでほしい。
 他の誰でもなく、僕を。
 相手の両足を持ち上げ、深く接触する。
 ひきちぎられるような喘ぎ声が、うっとりしたものへと変わっていく。
 ただただ快楽に浸る絢斗は、普段にも増して綺麗で、そして、庇護欲をかきたてられた。
 終わったあと、神薙は絢斗を抱擁し、後頭部を撫でた。
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