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第3章 蒼き海原と氷雪の砦
46話 貪る暗闇
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「う、うわあああぁぁ!」
洞窟内の大空間に男の断末魔の叫び声が響く。声を発した男を上から抑え込んでいるのはコウモリともドラゴンともつかぬ巨大な魔物。皮膜のついた細長い腕で男の体をがっちりと抑え込むと、その魔物は再び容赦なく男に牙を突き立てた。
もはや助からないであろうその男の他にも、その洞窟の中には同じ種類の魔物と戦う二、三人の男たちの姿があった。しかしいずれも大小の怪我を負っており、戦況はまさに全滅一歩手前という所だった。そしてうずくまり浅い呼吸を繰り返す少年と彼を守ろうと武器を構える男の前にも、目ざとく、いや耳ざとく音を聞きつけた怪物がゆっくりと接近していく。
「くそッ! やっぱりか……!」
俺が叫び声を聞いてこの大空間に到着する頃にはすでにマナーゼンのパーティと思しき一団はほぼ壊滅状態となっていた。魔石灯の光を頼りに目を凝らすと、見える限りでは六体の魔物が半球状のドーム型の空間を飛び回ったり地面を駆けたりしながら男たちに襲いかかっている。俺は焦って逸る気持ちを抑えて左腰から長剣を引き抜くと洞窟の中心目がけて走り出した。
新たな足音が出現したのを感知した魔物が貪っていた男から口を離して起き上がった。接近して俺の目にもようやくはっきりと見えるようなってきたあの魔物は、確かデヴァーンという名前だったか。マナーゼンのギルドで配布されていた洞窟の攻略図に描かれていたそれは、単体ではそれほどの脅威にはならないものの、集団で襲い掛かられると非常に危険だと注意書きされていた。シルエットだけを見れば以前戦ったドラゴンに見えなくはないが、鱗のない哺乳類じみた黒い体表や短めのマズル、短い尾を見ると、どちらかといえばコウモリに近いと思えてくる。
立ち上がれば人間ほどはあろうかという巨体を躍らせてこちらに走り寄るデヴァーンに向かって、俺は長剣を下ろしたまま疾走していく。見る間に俺たちの距離は縮まっていき、奴の血濡れの大口と爪が俺を引き裂かんと伸ばされた瞬間、俺は一気に体を前方に倒すと纏いを発動させて超低空で飛び出した。背中の数センチ上をデヴァーンの牙と爪が掠めていく。ここからは俺のターンだ。強烈な加速で強引に攻撃をかわした俺はさらに右足にマナを集めると、体をねじりながら再び纏いを繰り出して地面を蹴りつけた。強烈な蹴りとねじりによってドリルのように回転する俺は剣でデヴァーンの柔らかい腹を切り裂きながら突き進んでいった。やがて回転が収まり、俺は剣を地面に突き立ててどうにか体を静止させる。右前方に転がる先ほどまでデヴァーンに襲われていた男に近寄るも、すでに彼は息を引き取っていた。俺がもう少し早くここにたどり着いていれば。叫び声を聞く前にここに向かっていれば。様々な後悔が駆け巡り口中に苦い味が広がる。
残りの敵の数は五体。そのうち二体はマナーゼンと交戦中なので、二体は彼らにどうにか頑張ってもらって、俺は三体をなんとしてでも仕留めよう。じわじわと灰に変わっていくデヴァーンの死体をちらりと睨んで、俺は再び剣を構えて走り出した。
俺の討伐すべき三体のデヴァーンは現在空中を飛んで戦況を窺っている。周囲の音をキャッチするのに効率的な行動なのだろうが、自由に空を飛び回ることが出来ない俺たちマナーゼンにとってはかなり厄介な行動だと言える。心の中で舌打ちをすると俺は腰のポーチから投擲釘をあるだけ全部、一気に抜き出した。幸い奴らの飛行能力はドラゴンほど高くない。打ち抜けない的ではない──。
「ッ!!」
無言の気合とともにオーバースローで釘を上空のデヴァーンに向かって投げつける。魔石灯の光を受けてきらりと閃きながら闇を駆け抜ける投擲釘の大半はデヴァーンの体には直撃しなかったものの、数本は確かにその皮膜を貫いて見せた。もとよりデヴァーンという魔物は魔法で体を浮遊させるドラゴンとは異なり、自分の重み全てをその貧弱な皮膜での羽ばたきでのみ浮かせているのだ。ゆえに投擲釘の穴が一つ空いただけでも奴らの羽は揚力を失い、ふらふらと二つの黒い影が地面に落下し始めたのが見えた。まずはこの二体をどうにかしなければ。
デヴァーンの落下地点に目星を付けると、俺は左手をそのあたりに伸ばし親指、薬指、小指で輪を形作った。以前は両腕で大きな輪を作る、グレン村で俺に魔法を教えてくれたライさん曰く魔法の効率を上げる構えを取っていたが、右腕に竜皮症が発症して以来、右腕にマナを流すわけにはいかず大分規模を縮小した形で輪を作る構えをするようになった。正直魔法の効率についてあまり効果を実感したことはないが、まあ願掛けみたいなものだろう。
大きく深呼吸をして照準代わりの左人差し指・中指を落下予想地点へ。周囲への警戒も忘れないようにしながらも意識を一本の線のように研ぎ澄まし、俺は魔法の詠唱を開始した。
「テネロ・ショトゥ・フォル:セウズ・タグ:アラウ・スペウ:フォンドレート」
声を限界まで抑えた詠唱とともに左手の先に同心円状の魔法陣が形成されていき、闇に満ちた空間に紫色の仄かな明かりが生じた。あとはデヴァーンの落下に合わせて”ルーン”のたった一言を呟けば魔法は発動される。奴らが地面に落下するまであと五メートル……三メートル……一メートル……、今!
「ルーンッ!!」
二体のデヴァーンがぐしゃりとその体躯を硬い地面に叩きつけられた直後、魔法陣から放たれた六本の漆黒な矢が超速で奴らを刺し穿った。後方の地面に六本の矢がガツンガツンとやかましい音を立てながら突き刺さり、同時にデヴァーンたちも灰に変わっていく。
これで残りは一体。まだ空中にいるだろうと上を見上げた俺の目の前に広がっていたのは真っ暗闇。瞬間途方もないような力で地面に押し倒されて、遅まきながら俺は先ほどの暗闇が虚空ではなく残党のデヴァーンの影であると悟った。巨大な二足歩行の豚や大ガニの魔物、ドラゴンほどにはその体格は大きくないものの、俺の両腕をがっちりと押さえつける膂力は人間とは比較にならない。みしみしと軋みの音を上げる腕の痛みを無理やり無視して藻掻くも依然として俺の上半身は地面に張り付いたまま。その間も鋭い歯がずらりと並ぶ犬にもトカゲにも似たデヴァーンの口が近づいていき、俺を今にも貪らんとしていることが腐った肉のような口臭とともに伝わってくる。
まずい。このままではマナーゼンの男たちを助けるどころか俺自信が食い尽くされてしまう。地面に接する背中がじっとりと汗で湿るのが分かった。
洞窟内の大空間に男の断末魔の叫び声が響く。声を発した男を上から抑え込んでいるのはコウモリともドラゴンともつかぬ巨大な魔物。皮膜のついた細長い腕で男の体をがっちりと抑え込むと、その魔物は再び容赦なく男に牙を突き立てた。
もはや助からないであろうその男の他にも、その洞窟の中には同じ種類の魔物と戦う二、三人の男たちの姿があった。しかしいずれも大小の怪我を負っており、戦況はまさに全滅一歩手前という所だった。そしてうずくまり浅い呼吸を繰り返す少年と彼を守ろうと武器を構える男の前にも、目ざとく、いや耳ざとく音を聞きつけた怪物がゆっくりと接近していく。
「くそッ! やっぱりか……!」
俺が叫び声を聞いてこの大空間に到着する頃にはすでにマナーゼンのパーティと思しき一団はほぼ壊滅状態となっていた。魔石灯の光を頼りに目を凝らすと、見える限りでは六体の魔物が半球状のドーム型の空間を飛び回ったり地面を駆けたりしながら男たちに襲いかかっている。俺は焦って逸る気持ちを抑えて左腰から長剣を引き抜くと洞窟の中心目がけて走り出した。
新たな足音が出現したのを感知した魔物が貪っていた男から口を離して起き上がった。接近して俺の目にもようやくはっきりと見えるようなってきたあの魔物は、確かデヴァーンという名前だったか。マナーゼンのギルドで配布されていた洞窟の攻略図に描かれていたそれは、単体ではそれほどの脅威にはならないものの、集団で襲い掛かられると非常に危険だと注意書きされていた。シルエットだけを見れば以前戦ったドラゴンに見えなくはないが、鱗のない哺乳類じみた黒い体表や短めのマズル、短い尾を見ると、どちらかといえばコウモリに近いと思えてくる。
立ち上がれば人間ほどはあろうかという巨体を躍らせてこちらに走り寄るデヴァーンに向かって、俺は長剣を下ろしたまま疾走していく。見る間に俺たちの距離は縮まっていき、奴の血濡れの大口と爪が俺を引き裂かんと伸ばされた瞬間、俺は一気に体を前方に倒すと纏いを発動させて超低空で飛び出した。背中の数センチ上をデヴァーンの牙と爪が掠めていく。ここからは俺のターンだ。強烈な加速で強引に攻撃をかわした俺はさらに右足にマナを集めると、体をねじりながら再び纏いを繰り出して地面を蹴りつけた。強烈な蹴りとねじりによってドリルのように回転する俺は剣でデヴァーンの柔らかい腹を切り裂きながら突き進んでいった。やがて回転が収まり、俺は剣を地面に突き立ててどうにか体を静止させる。右前方に転がる先ほどまでデヴァーンに襲われていた男に近寄るも、すでに彼は息を引き取っていた。俺がもう少し早くここにたどり着いていれば。叫び声を聞く前にここに向かっていれば。様々な後悔が駆け巡り口中に苦い味が広がる。
残りの敵の数は五体。そのうち二体はマナーゼンと交戦中なので、二体は彼らにどうにか頑張ってもらって、俺は三体をなんとしてでも仕留めよう。じわじわと灰に変わっていくデヴァーンの死体をちらりと睨んで、俺は再び剣を構えて走り出した。
俺の討伐すべき三体のデヴァーンは現在空中を飛んで戦況を窺っている。周囲の音をキャッチするのに効率的な行動なのだろうが、自由に空を飛び回ることが出来ない俺たちマナーゼンにとってはかなり厄介な行動だと言える。心の中で舌打ちをすると俺は腰のポーチから投擲釘をあるだけ全部、一気に抜き出した。幸い奴らの飛行能力はドラゴンほど高くない。打ち抜けない的ではない──。
「ッ!!」
無言の気合とともにオーバースローで釘を上空のデヴァーンに向かって投げつける。魔石灯の光を受けてきらりと閃きながら闇を駆け抜ける投擲釘の大半はデヴァーンの体には直撃しなかったものの、数本は確かにその皮膜を貫いて見せた。もとよりデヴァーンという魔物は魔法で体を浮遊させるドラゴンとは異なり、自分の重み全てをその貧弱な皮膜での羽ばたきでのみ浮かせているのだ。ゆえに投擲釘の穴が一つ空いただけでも奴らの羽は揚力を失い、ふらふらと二つの黒い影が地面に落下し始めたのが見えた。まずはこの二体をどうにかしなければ。
デヴァーンの落下地点に目星を付けると、俺は左手をそのあたりに伸ばし親指、薬指、小指で輪を形作った。以前は両腕で大きな輪を作る、グレン村で俺に魔法を教えてくれたライさん曰く魔法の効率を上げる構えを取っていたが、右腕に竜皮症が発症して以来、右腕にマナを流すわけにはいかず大分規模を縮小した形で輪を作る構えをするようになった。正直魔法の効率についてあまり効果を実感したことはないが、まあ願掛けみたいなものだろう。
大きく深呼吸をして照準代わりの左人差し指・中指を落下予想地点へ。周囲への警戒も忘れないようにしながらも意識を一本の線のように研ぎ澄まし、俺は魔法の詠唱を開始した。
「テネロ・ショトゥ・フォル:セウズ・タグ:アラウ・スペウ:フォンドレート」
声を限界まで抑えた詠唱とともに左手の先に同心円状の魔法陣が形成されていき、闇に満ちた空間に紫色の仄かな明かりが生じた。あとはデヴァーンの落下に合わせて”ルーン”のたった一言を呟けば魔法は発動される。奴らが地面に落下するまであと五メートル……三メートル……一メートル……、今!
「ルーンッ!!」
二体のデヴァーンがぐしゃりとその体躯を硬い地面に叩きつけられた直後、魔法陣から放たれた六本の漆黒な矢が超速で奴らを刺し穿った。後方の地面に六本の矢がガツンガツンとやかましい音を立てながら突き刺さり、同時にデヴァーンたちも灰に変わっていく。
これで残りは一体。まだ空中にいるだろうと上を見上げた俺の目の前に広がっていたのは真っ暗闇。瞬間途方もないような力で地面に押し倒されて、遅まきながら俺は先ほどの暗闇が虚空ではなく残党のデヴァーンの影であると悟った。巨大な二足歩行の豚や大ガニの魔物、ドラゴンほどにはその体格は大きくないものの、俺の両腕をがっちりと押さえつける膂力は人間とは比較にならない。みしみしと軋みの音を上げる腕の痛みを無理やり無視して藻掻くも依然として俺の上半身は地面に張り付いたまま。その間も鋭い歯がずらりと並ぶ犬にもトカゲにも似たデヴァーンの口が近づいていき、俺を今にも貪らんとしていることが腐った肉のような口臭とともに伝わってくる。
まずい。このままではマナーゼンの男たちを助けるどころか俺自信が食い尽くされてしまう。地面に接する背中がじっとりと汗で湿るのが分かった。
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