秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
84 / 463
第二章 秘伝の当主

084 見た目ですか?

しおりを挟む
時刻はとっくに優希が帰ってきている時間だ。しかし、今日は珀豪も他の式達も全員で本家へ殴り込みに行っていた。

迎えも行けなかったし、家で一人にしているということになると今更ながらに高耶は気づいた。

「優希は……」
《優希ならば心配ない。今日は樹殿が早く帰って来られていてな。我らも主が本家へ向かうと知って行ってくると言っておいた》
「え……あ、メール入ってた」

出張前の用意のためにもう家にいるとメッセージが入っていた。統二を連れて行くというメールの後にそれが入ったようだ。

《美咲も帰ってきているようだな》
「珍しいな」

家の前に来ると、母も既に帰宅済みであることが分かった。

《では、早く夕食を作らねばな》
「手伝う」
《色々と主は説明をしなくてはならないのではないか? 統二のこともある》
「……そうだな……」

美咲が早かったのは、恐らく連れてくると伝えた統二のことがあったからだろう。本家の者と知って少し警戒しているのかもしれない。高耶や実父が本家に疎まれていたと以前話していたのだから。

「やっぱり僕……」
「大丈夫だ。行くぞ」

尻込みする統二の背中を押して、家のドアを開けた。

「ただいま」
「お、お邪魔します……」

すると、優希が転がり出てきた。

「おかえりぃ、おにいちゃん」
「ただいま。宿題は済んだか?」
「あとはおんどくだけ。ハクちゃんにきいてもらうのっ」

国語の音読だけは、どうしても珀豪に聞いてほしいらしく、夕食の後に残している。珀豪はどうも、子どもを褒めるのが上手いようだ。

「分かった。統二、妹の優希だ」
「はい。はじめまして、統二です。高耶兄さんの従兄弟になります」
「ゆうきです。よろしくおねがいしますっ」

高耶が連れてきたからだろう。優希も警戒することなく元気に挨拶してくれた。

家に上がって父母にも統二を紹介する。

最初はやはり、母は少し渋い顔をしていたが、珀豪が夕食を作る間に今日本家であったことを話すとあっさり受け入れていた。

「そんなことがあったのね。統二君。いつまででもいてくれていいわ」
「ありがとうございます。一応、今後は瑶迦様の所にご厄介になることになっていますので」

統二は本家に戻る気がないらしく、瑶迦のところで陰陽術を更に磨いていくつもりのようだ。あそこは、そういった資料も豊富だし、魔女である瑶迦が色々と教えてくれるだろう。何より、瑶迦も統二を引き取る理由があるようだ。

《瑶姫は、統二を弟子にするつもりだろう。昔から素質があると目を付けていたようだからな》
「ぼ、僕が弟子に……?」

驚く統二だが、高耶は納得していた。

「なるほど、それはいい。瑶迦さんも話し相手が出来て喜んでくれるだろうしな」

これからは、寂しい思いをしなくて済みそうだ。

「わたしもいきたい」
「また休みの日にな」
「うんっ。トウジおにいさんともあえるねっ」
「そうだね。遊びに来てね」

統二はすっかり優希にも慣れ『トウジおにいさん』と呼ばれて嬉しそうだ。

夕食も終わって統二が泊まるために布団を用意したりしてから一息つく頃には、いつもの平和な夜になっていた。

音読も終了し、お風呂に入る準備をし始めた優希へ、珀豪が思い出したように声をかけた。

《そういえば、優希。昨日出し忘れたと言っていたお知らせの紙はどうした?》
「あっ、わすれてたっ」

優希が部屋から持ってきたのは、学校からのお知らせの手紙。

「あのね。がっこうでゆうがたにあそぶとあぶないんだって」
「危ない?」

父母ではなく、高耶に差し出されたのは、珀豪がそうするように言ったからのようだ。

《どうやら、学校に妖がちょっかいをかけているらしいのだ》
「……怪我をしたわけではないな。少しの間拐かされるくらいか……」

手紙には、学校を閉める直前まで遊んでいた子どもが出ていかないので、時間を守って欲しいということ。校庭以外には放課後、入らないようにということが書かれていた。珀豪から妖と聞いて、その文章の裏の意味を正確に読み取る。

「拐かされるって……高耶くん、それ妖が?」

父が不安そうに確認する。

「ええ。でも、学校は昔からそういうことが起きやすいんです。心も不安定な子どもが集まる場所ですから、妖が好んで住み着くんですよ。ただ、守り神もいるので大きな悪さはできません。学校の怪談っていうのは、どこの学校にも一つや二つあるものでしょう?」
「ま、まぁ、確かに……そういうのって、どうにかしないの?」
「学校の守り神から要請があれば手を出しますが、不干渉っていうのが昔から基本なので」

解決したとしても、すぐにまた違う妖が寄って来てしまうのだ。それが学校という所の特殊性。

なので、陰陽師達も基本は手を出さない。出した所で意味がないからだ。

「珀豪君達にちょっと様子を見てもらうとかは?」

母は心配そうだ。そんな不確かな所に優希を行かせるのは、親として嫌なものだ。

「学校の敷地自体が守り神……大抵は土地神なんだけど、その中心部になるから、ちゃんとお伺いを立てないといけないんだ。勝手に入ると敵と認識されかねない。とりあえず、明日にでも確認してくるよ」
「お願い」

心配はいらないと思うが、高耶も気にはなっている。明後日には榊家に行かなくてはならないのだ。明日しかチャンスはなかった。

「明日は俺が迎えに行くからな」
「わぁいっ。なら、おしごとのかっこうできてね」
「ん? 仕事の?」

仕事ってのはどんな格好のことを言っているのだろうと、内心首を傾げる。すると、優希が腰に手を当てて力一杯頷いた。

「メガネとって、かみのけもちゃんとしてほしいのっ」
「あ……はい……」
《……優希も女だな……》
《主様はもっと自分の見た目を利用することを知った方がいい》
「……」

普段の丸渕メガネにボサボサ頭のオタクルックが気に入らないことだけは分かった。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
2018. 12. 12
しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。 ※タイトルはそのうち変更するかもしれません※ ※お気に入り登録お願いします!※

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...