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第七章 秘伝と任されたもの
415 秘伝の特別
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秘伝の継承は、高耶が出会った人に必要だと思い、その素質も見込んで伝えるものと、言い伝えとして残した事で、後世の人が秘伝に繋ぎを取り、継承を頼むものなど、様々な方法がある。
「よくよく考えてみると、秘伝の当主は偉いことをしているなあ。よくやる」
旅館で合流した鐘堂虎徹が、庭先で特訓を始めた橘家の者達を縁側から見ながら、隣に座る高耶を褒める。
すると、別の訓練で自分の一族を見ていた浮岸睦美がやって来て高耶の傍に腰掛けた。
「本当にそうよ。これを全部覚えているのでしょう? 条件とかも全て」
「ええ……そういったことを記憶する技もありまして……」
「「え!?」」
どういうことかと、高耶は詰め寄られた。
「その……特別な記憶術があるんです。元々、それが秘伝の持つ技で……これがあるから、秘伝を集めようということになったんですけど……」
「「……」」
この技がなければ、そもそも成り立たないものだった。預かった、知ったそれぞれの家門の奥義とも呼べるものを、何代もかけて継いでいく。なんてことは、普通無理だ。どれだけ記憶力が良くても、曖昧なところは出てしまう。それでは、完全に受け継がせることもできないだろう。
「秘伝家の当主の素質は、ある程度の枠を越えられる身体能力と、この記憶術を継承できるかが鍵なんです」
「それは……そうか……」
「「「……」」」
話が聞こえたのだろう。訓練に混ざっていた蓮次郎も神妙な顔をしていた。
そして、今しがた来たのだろう。達喜も聞こえたらしい。
「ほお~、なら、秘伝はただの脳筋集団じゃねえってことだなあ。ちょっと考えりゃ分かることだったか。馬鹿にしてた奴らにも教えてやりたいぜ」
「いえ。そう思われても仕方ないですからね。寧ろ、脳筋が褒め言葉だと思っている一族の者は意外と多いらしくて……」
「は? マジで? まあ、俺んとこも似たようなもんだが」
「ああ、達喜さんの所は似てるかもしれませんね。脳筋と呼ばれるほど、そちらに傾倒できることが誇りというか……」
「それそれ!」
極めている証拠だと、寧ろ誇りに思えるものだとの考え方だ。悪くはない。それだけに意識を傾け、ひたむきに取り組めるのは、得難い才能だ。
「でも、高耶は、当主は違えんだろ? こうやって、ピンポイントで求められたのを引き出して教えるってのは、真似できるもんじゃねえもんよ」
「そうだよなあ。俺も今まで覚えた技、初級から全部覚えているかって聞かれたら、自信ねえわ」
虎徹もよくよく考えてみて無理だと首を横に振った。
「そうねえ。それを覚えているのだものねえ。すごいことだわ。秘伝家を馬鹿にしていた奴らには、自分たちの出来なさ具合を知らしめた上で、きっちりシメておくわね」
睦美が物騒な決意を固めていた。
「いえ……まあ、一族のまとまりも悪かったですし……本家の者は特に、完全ではなくても、この記憶術を覚えて、それなりの数の秘伝を身に付けなくてはならなかったのですが……ここ最近は術者としての地位も確立しようと中途半端に手を出していまして……」
「修練が足りない奴が多かった?」
「ええ。なので、脳筋としても失格でした」
「「「「「ああ……」」」」」
少し前まで煩かった秘伝本家の者達をそれぞれ思い出し、納得したようだ。
「けど、どういう感覚なんだ? 今回のこともだが、ピンポイントでその技を思い出して教えるってのはさあ」
虎徹は興味津々だ。これに、高耶は少し考えてから答えた。
「なんと言うんでしょう……その人に向き合った時に、まず、会得できる可能性のある技が浮かびます。そこで直接向き合ってみて、素質や力量などで選んでいくと言う感じでしょうか……ただ覚えるだけの記憶術ではなく、引き出し方も特殊なので」
「それ、その記憶術って、本家の人たちも完璧じゃなくても使えるようにするのが、秘伝の普通なのよね?」
睦美がはっとして高耶に詰め寄る。
「はい」
「なら、それを私たちに教えることはできる? それとも、秘伝の秘密の技術?」
「え? いえ。そもそも、術者の中でも使える人はいたと聞いています。昔の術者の人は、こう……ゲームの技の選択画面分かります?」
「ええ。私、これでもゲーム結構するわよ」
「あ、その感じです。実戦の時は、その向かい合う妖に有効な技が感覚で分かるといいますか……選択肢が頭に浮かぶんです」
直感力と言った方が、分かりやすいかもしれない。
「っ、へえっ。面白そう! というか便利ね! そういうのって、経験と感覚でやるものでしょう?」
「その経験って数回じゃダメじゃないですか。それが、数百経験して会得したものと同じように会得できるのが、この記憶術です」
「それ教えてっ」
「「「「それ教えてくれ!」」」」
「……あ、はい……」
彼らは貪欲に力を求めていた。
「高耶にばっか、任せられねえもんなあ」
「おう。もっと技も磨かないといけないだろうし、今回みたいに、何が起きるか分からん戦いの場では、素早い判断が必要だ」
「総力戦になりそうだものね。攻撃力は上げておかないと!」
「覚えることいっぱいあるけど、久しぶりに楽しいねえ。やっぱり、新しいことを知れるのは良い!」
「なんだか……みなさん若返ったようですね……」
「「「「「まあね!」」」」」
そうとなればと、更にそれぞれの一族の者も集め、合同で猛特訓となった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「よくよく考えてみると、秘伝の当主は偉いことをしているなあ。よくやる」
旅館で合流した鐘堂虎徹が、庭先で特訓を始めた橘家の者達を縁側から見ながら、隣に座る高耶を褒める。
すると、別の訓練で自分の一族を見ていた浮岸睦美がやって来て高耶の傍に腰掛けた。
「本当にそうよ。これを全部覚えているのでしょう? 条件とかも全て」
「ええ……そういったことを記憶する技もありまして……」
「「え!?」」
どういうことかと、高耶は詰め寄られた。
「その……特別な記憶術があるんです。元々、それが秘伝の持つ技で……これがあるから、秘伝を集めようということになったんですけど……」
「「……」」
この技がなければ、そもそも成り立たないものだった。預かった、知ったそれぞれの家門の奥義とも呼べるものを、何代もかけて継いでいく。なんてことは、普通無理だ。どれだけ記憶力が良くても、曖昧なところは出てしまう。それでは、完全に受け継がせることもできないだろう。
「秘伝家の当主の素質は、ある程度の枠を越えられる身体能力と、この記憶術を継承できるかが鍵なんです」
「それは……そうか……」
「「「……」」」
話が聞こえたのだろう。訓練に混ざっていた蓮次郎も神妙な顔をしていた。
そして、今しがた来たのだろう。達喜も聞こえたらしい。
「ほお~、なら、秘伝はただの脳筋集団じゃねえってことだなあ。ちょっと考えりゃ分かることだったか。馬鹿にしてた奴らにも教えてやりたいぜ」
「いえ。そう思われても仕方ないですからね。寧ろ、脳筋が褒め言葉だと思っている一族の者は意外と多いらしくて……」
「は? マジで? まあ、俺んとこも似たようなもんだが」
「ああ、達喜さんの所は似てるかもしれませんね。脳筋と呼ばれるほど、そちらに傾倒できることが誇りというか……」
「それそれ!」
極めている証拠だと、寧ろ誇りに思えるものだとの考え方だ。悪くはない。それだけに意識を傾け、ひたむきに取り組めるのは、得難い才能だ。
「でも、高耶は、当主は違えんだろ? こうやって、ピンポイントで求められたのを引き出して教えるってのは、真似できるもんじゃねえもんよ」
「そうだよなあ。俺も今まで覚えた技、初級から全部覚えているかって聞かれたら、自信ねえわ」
虎徹もよくよく考えてみて無理だと首を横に振った。
「そうねえ。それを覚えているのだものねえ。すごいことだわ。秘伝家を馬鹿にしていた奴らには、自分たちの出来なさ具合を知らしめた上で、きっちりシメておくわね」
睦美が物騒な決意を固めていた。
「いえ……まあ、一族のまとまりも悪かったですし……本家の者は特に、完全ではなくても、この記憶術を覚えて、それなりの数の秘伝を身に付けなくてはならなかったのですが……ここ最近は術者としての地位も確立しようと中途半端に手を出していまして……」
「修練が足りない奴が多かった?」
「ええ。なので、脳筋としても失格でした」
「「「「「ああ……」」」」」
少し前まで煩かった秘伝本家の者達をそれぞれ思い出し、納得したようだ。
「けど、どういう感覚なんだ? 今回のこともだが、ピンポイントでその技を思い出して教えるってのはさあ」
虎徹は興味津々だ。これに、高耶は少し考えてから答えた。
「なんと言うんでしょう……その人に向き合った時に、まず、会得できる可能性のある技が浮かびます。そこで直接向き合ってみて、素質や力量などで選んでいくと言う感じでしょうか……ただ覚えるだけの記憶術ではなく、引き出し方も特殊なので」
「それ、その記憶術って、本家の人たちも完璧じゃなくても使えるようにするのが、秘伝の普通なのよね?」
睦美がはっとして高耶に詰め寄る。
「はい」
「なら、それを私たちに教えることはできる? それとも、秘伝の秘密の技術?」
「え? いえ。そもそも、術者の中でも使える人はいたと聞いています。昔の術者の人は、こう……ゲームの技の選択画面分かります?」
「ええ。私、これでもゲーム結構するわよ」
「あ、その感じです。実戦の時は、その向かい合う妖に有効な技が感覚で分かるといいますか……選択肢が頭に浮かぶんです」
直感力と言った方が、分かりやすいかもしれない。
「っ、へえっ。面白そう! というか便利ね! そういうのって、経験と感覚でやるものでしょう?」
「その経験って数回じゃダメじゃないですか。それが、数百経験して会得したものと同じように会得できるのが、この記憶術です」
「それ教えてっ」
「「「「それ教えてくれ!」」」」
「……あ、はい……」
彼らは貪欲に力を求めていた。
「高耶にばっか、任せられねえもんなあ」
「おう。もっと技も磨かないといけないだろうし、今回みたいに、何が起きるか分からん戦いの場では、素早い判断が必要だ」
「総力戦になりそうだものね。攻撃力は上げておかないと!」
「覚えることいっぱいあるけど、久しぶりに楽しいねえ。やっぱり、新しいことを知れるのは良い!」
「なんだか……みなさん若返ったようですね……」
「「「「「まあね!」」」」」
そうとなればと、更にそれぞれの一族の者も集め、合同で猛特訓となった。
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