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第一章
058 おいくらで!?
迷宮の放出が終わったと確認が取れたのは、発生から丸一日と半日経った頃だった。
それから翌日まで騎士達は休み、傭兵ギルドの長とその代表者数名が領城にやってきて報告会と今後について話し合われることになった。
「……最初と思われるのを入れて十回だったのだが……これはつまり……」
「百階層まであるということですね! さすがは辺境です。脅威レベル10ですね」
「脅威レベル……?」
この場には、当然のようにキリアルートも呼ばれていた。
「はい。神が定めた迷宮レベルです。十階層しかないものをレベル1。十階層毎に数字は大きくなり、脅威度を示します。そして、百階層のものがレベル10。それ以上がレベル0です」
「それ以上があると!? え? レベル0?」
「計測不可能という意味です」
「な、なるほど……」
これはきちんとこの世界に提示されたものだが、それを把握出来ているものは今の時代では少ないだろうと二神からは言われていた。
この世界の神である二神は、作ったルールや教えなど、共有して欲しい大事な情報は、様々な場所に碑石に記した状態で出現させる。
迷宮のレベルの話も、統一すべきだとして、親切に提示しているらしいのだ。ただし、この時代の人たちが認識できているかはわからない。
碑石はそれこそこの世界が出来て間もない頃に用意したものだ。神の力が宿っているため、朽ちることはないが、その場所が今どうなっているかにもよるだろう。
以前の、キリアルートが教皇としてあった世界では、ほとんどは教会の敷地内にあるものとしていた。
「一応、公式なものとして、どこかの迷宮の近くに、迷宮のことを書いた碑石があったりすると思うのですが……」
知りませんかと傭兵ギルドの長を見て、問いかけるように首を傾げるキリアルート。これに、ギルド長がおおっと目を丸くする。
「確かにっ。最初の迷宮があると言われている、南の迷宮島にそのような碑石があると聞いたことがありますなあ」
「よかった。ギルドでもそれで管理してない?」
「しております。この後ギルドに戻り、本部に連絡します。それに、レベル10ですと、一級や二級の上位の傭兵を呼ぶ事ができますよ」
これを聞いて、今度は領主が目を丸くする。一級や二級の傭兵は、国のためには動かせない戦力だ。戦場に一人投入するだけで戦況がひっくり返る実力者。そう易々と国に貸し出せない。
傭兵とは言っているが、国のために戦うものではなく、そばに居る住民達のための傭兵なのだ。それも、彼ら自身の意志でというのが重要だった。
唯一、国のため、領のために協力をお願いできるのは、迷宮対策によるものだけ。人為的なものではないため、良しとされている。
迷宮を抱える領地の領主は、今回のような放出に備えて傭兵ギルドに献金し、上位の傭兵を呼んでもらおうと必死になっているという。だから、領主は驚いたのだ。献金はあくまでもよろしくというご挨拶程度のものでしかないが、それをしなければ上位の傭兵が自主的に来てくれるのを待つしかない。それが、呼ぶ事ができるというのだから、嬉しくもなる。
「っ、上位の傭兵を……し、しかし……それほどに危険ということですね……」
「そうですねえ……今回、対応できたのが奇跡です。まあ、この領の最大戦力で当たりましたからなあ」
「それは……確かに……」
はっきり言って、それでもギリギリだった。
「この地の魔獣は、元々凶暴なものが多い……その相手をできる領主様の騎士団がいなければ……ギルドだけでは無理だったと思います……」
「なるほど……」
「それと大きな影響をとしては、休みたい時に安全に休むことが出来たというのは大きいかと」
「っ、確かに! 食事も落ち着いて取れた上に、仮眠も取れた……あのような……森の奥で……」
「はい……あの結界は素晴らしい……野営が変わります……」
「そうだな……」
そう言ったギルド長をはじめ、全員の視線がキリアルートに向いた。
「ああ。安全地帯用の結界石ですね。携帯用のを開発中ですよ。今回のはちょっと材料からして市場価格で考えてもバカみたいに高くなりますから。組織用ですね。どうです? 四つずつまで領主様とギルドで買い取ってもらえたら……」
「「おいくらで!?」」
「一つ大金貨三枚? 三十万キールですかね。特大の魔光石と台座にアダマンタイト使ってるんで」
「「え……」」
「あ、アダマン……タイト……?」
この世界でもかなり希少らしい。とても硬く、重い鉱石だと言われている。
「迷宮より、もう少し奥に鉱脈がありますよ? とっても深い所ですけど」
「鉱脈!?」
「ええ。迷宮近くは、鉱脈が出来やすいんです。逆に鉱脈から迷宮の位置を推測したりも出来るんですけど……知りません?」
「……し、知りません……」
領主がポカンとしていた。自分の治める領地に鉱脈があるなんてことが信じられないのかもしれない。町の人たちに聞いても、それ以前のベンノールトやレモアに聞いても、この土地には何もないということだった。特産も何もない田舎。それがこの領地の特色だった。
しばらくして、ギルド長がはっと覚醒する。
「た、確かにっ! その様な記述を読んだことがあります! それも碑石による啓示で……」
「うんうん。そうでしょう? 不思議なことではないよ。それに、鉱脈以前に、せめてあの迷宮までの道を作らないとね」
「道を……迷宮に行けるようにですね……魔光石が取れますしね……」
「うん。それもあるけど、中の魔獣を倒せば、何か出てくるからね。何が出る迷宮なんだろう……ユウリ、どんな魔獣が多かった?」
ワクワクしながら、キリアルートは混乱する領主達ではなく、冷静なユウリに話を振る。どうやらユウリもかなり暴れられたようで、とても満足げで肌艶も良い。また若返ったようだ。
「記録しております。魔獣では、猪や鹿など肉食ではなさそうなものが多かったように思います。それと、草木の魔物ですね……わさわさしていました。弱点が見つけにくくて、剣で真っ二つにするのが後半は多かったかと」
「もしかして、食べられそうにないゴブリンとかコボルトなんかはいなかった?」
「あ、はい。そうです」
「おおっ。ならきっと食料迷宮だ! それも百階層なんてっ。費用対効果抜群ですよ!」
「え? え? 食料迷宮?」
領主がまた混乱した。
「はい! 迷宮の魔獣は外に出ると魔石しか落とさないで消えるでしょう?」
「あ、はい……お陰で早く帰ってこられました」
「魔石だけ拾えば良いのは有り難いです」
外に慣れてしまうと、実体を持ってかなり強くなってしまうのだが、放出されてしばらくか経っていなければ、倒したと同時に魔石だけを残して遺骸は煙の様に消える。
後始末をしなくていいのはとても助かる。何百と出てくるのだ。遺骸も残っていたら足の踏み場もなくなってしまうし、血生臭くて敵わない。
「浄化され、一度深層まで行って攻略された迷宮の中で迷宮の魔獣や魔物を倒すと、魔石だけか、それ以外の素材になって消えるんですよ」
「……そんなことが……」
「迷宮を攻略……」
「ええ。なので、さっさと攻略しましょう。ぼくが行っても良いですけど……」
「キリ」
「うん。もう少し大きくなってからにします。なので、ユウリとビルス、それと元傭兵のリュイとレモア司教を出します。もちろん迷宮内で問題なく動けるよう、魔導具もお渡ししますね」
すでにそのための準備は済ませていた。
「十階層毎に転移石があるので、そこで区切りをつけて帰ってきて、数日休んで、再開してまた十階層進むというように百階層まで攻略してください。ユウリとレモア司教に完全攻略としての迷宮の始末の仕方を教えておきますから」
「あ……ああ……」
「迷宮を攻略……」
領主達も、ギルド長もまだ頭が正常に動いていない様子。だが、構わず続けた。
「その他の人選はお任せします。大丈夫。ちょっと特殊な遠征訓練だとでも思ってください。領主様達の強さなら、きちんと休息や食事が取れれば深層の強さの魔物でも問題なく倒せますよ」
「そ、そうか……」
少し安心したようだ。だが、大事なことが一つある。
「放出で出てきた以上の強さのが一体だけ一番深層にいると思いますが、多分、辿り着くまでに実力も上がるので、油断しなければ大丈夫です。もし死にかけても、なんとかできるように対策は用意しますね」
「死にかける……」
「死ななければ大丈夫です! 即死だけ気を付けてくださいね」
「……わかりました……」
それを言うのが限界だったようだ。
「それじゃあ、三日ほど休息を。西地区の人たちは明日には戻しましょう。夫人、みなさんにそう伝えてください。シェルマ殿、また放送お願いしますね」
「っ、分かりました!」
「うん。原稿はまた……リーツ?」
「お手伝いいたしますのでご安心を」
「ありがとうっ」
そうして、危機を一先ず乗り切ったのだ。
「ユウリのためにも、野営道具を揃えなきゃね」
「キリ……無理はしないでくださいね」
「平気だよ。まあ、ぼくが一緒に行った方が簡単なんだけどね?」
「それはダメです」
「は~い」
キリアルートが行けば、快適な野営を約束できる。しかし、体は五才。それに、迷宮攻略のメンバーにキリアルートが入るのは後々の報告で面倒なことになる。道具を用意するくらいならば、職人であるリダやレモアを隠れ蓑にすることができる。
面倒だが気をつけるに越したことはない。とはいえ、道具を作るのは好きだ。この際、楽しもうとキリアルートは座り込んだままになっている領主達を残し、ユウリと共に屋敷へと飛んだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
今年も楽しんでいただければ幸いです。
それから翌日まで騎士達は休み、傭兵ギルドの長とその代表者数名が領城にやってきて報告会と今後について話し合われることになった。
「……最初と思われるのを入れて十回だったのだが……これはつまり……」
「百階層まであるということですね! さすがは辺境です。脅威レベル10ですね」
「脅威レベル……?」
この場には、当然のようにキリアルートも呼ばれていた。
「はい。神が定めた迷宮レベルです。十階層しかないものをレベル1。十階層毎に数字は大きくなり、脅威度を示します。そして、百階層のものがレベル10。それ以上がレベル0です」
「それ以上があると!? え? レベル0?」
「計測不可能という意味です」
「な、なるほど……」
これはきちんとこの世界に提示されたものだが、それを把握出来ているものは今の時代では少ないだろうと二神からは言われていた。
この世界の神である二神は、作ったルールや教えなど、共有して欲しい大事な情報は、様々な場所に碑石に記した状態で出現させる。
迷宮のレベルの話も、統一すべきだとして、親切に提示しているらしいのだ。ただし、この時代の人たちが認識できているかはわからない。
碑石はそれこそこの世界が出来て間もない頃に用意したものだ。神の力が宿っているため、朽ちることはないが、その場所が今どうなっているかにもよるだろう。
以前の、キリアルートが教皇としてあった世界では、ほとんどは教会の敷地内にあるものとしていた。
「一応、公式なものとして、どこかの迷宮の近くに、迷宮のことを書いた碑石があったりすると思うのですが……」
知りませんかと傭兵ギルドの長を見て、問いかけるように首を傾げるキリアルート。これに、ギルド長がおおっと目を丸くする。
「確かにっ。最初の迷宮があると言われている、南の迷宮島にそのような碑石があると聞いたことがありますなあ」
「よかった。ギルドでもそれで管理してない?」
「しております。この後ギルドに戻り、本部に連絡します。それに、レベル10ですと、一級や二級の上位の傭兵を呼ぶ事ができますよ」
これを聞いて、今度は領主が目を丸くする。一級や二級の傭兵は、国のためには動かせない戦力だ。戦場に一人投入するだけで戦況がひっくり返る実力者。そう易々と国に貸し出せない。
傭兵とは言っているが、国のために戦うものではなく、そばに居る住民達のための傭兵なのだ。それも、彼ら自身の意志でというのが重要だった。
唯一、国のため、領のために協力をお願いできるのは、迷宮対策によるものだけ。人為的なものではないため、良しとされている。
迷宮を抱える領地の領主は、今回のような放出に備えて傭兵ギルドに献金し、上位の傭兵を呼んでもらおうと必死になっているという。だから、領主は驚いたのだ。献金はあくまでもよろしくというご挨拶程度のものでしかないが、それをしなければ上位の傭兵が自主的に来てくれるのを待つしかない。それが、呼ぶ事ができるというのだから、嬉しくもなる。
「っ、上位の傭兵を……し、しかし……それほどに危険ということですね……」
「そうですねえ……今回、対応できたのが奇跡です。まあ、この領の最大戦力で当たりましたからなあ」
「それは……確かに……」
はっきり言って、それでもギリギリだった。
「この地の魔獣は、元々凶暴なものが多い……その相手をできる領主様の騎士団がいなければ……ギルドだけでは無理だったと思います……」
「なるほど……」
「それと大きな影響をとしては、休みたい時に安全に休むことが出来たというのは大きいかと」
「っ、確かに! 食事も落ち着いて取れた上に、仮眠も取れた……あのような……森の奥で……」
「はい……あの結界は素晴らしい……野営が変わります……」
「そうだな……」
そう言ったギルド長をはじめ、全員の視線がキリアルートに向いた。
「ああ。安全地帯用の結界石ですね。携帯用のを開発中ですよ。今回のはちょっと材料からして市場価格で考えてもバカみたいに高くなりますから。組織用ですね。どうです? 四つずつまで領主様とギルドで買い取ってもらえたら……」
「「おいくらで!?」」
「一つ大金貨三枚? 三十万キールですかね。特大の魔光石と台座にアダマンタイト使ってるんで」
「「え……」」
「あ、アダマン……タイト……?」
この世界でもかなり希少らしい。とても硬く、重い鉱石だと言われている。
「迷宮より、もう少し奥に鉱脈がありますよ? とっても深い所ですけど」
「鉱脈!?」
「ええ。迷宮近くは、鉱脈が出来やすいんです。逆に鉱脈から迷宮の位置を推測したりも出来るんですけど……知りません?」
「……し、知りません……」
領主がポカンとしていた。自分の治める領地に鉱脈があるなんてことが信じられないのかもしれない。町の人たちに聞いても、それ以前のベンノールトやレモアに聞いても、この土地には何もないということだった。特産も何もない田舎。それがこの領地の特色だった。
しばらくして、ギルド長がはっと覚醒する。
「た、確かにっ! その様な記述を読んだことがあります! それも碑石による啓示で……」
「うんうん。そうでしょう? 不思議なことではないよ。それに、鉱脈以前に、せめてあの迷宮までの道を作らないとね」
「道を……迷宮に行けるようにですね……魔光石が取れますしね……」
「うん。それもあるけど、中の魔獣を倒せば、何か出てくるからね。何が出る迷宮なんだろう……ユウリ、どんな魔獣が多かった?」
ワクワクしながら、キリアルートは混乱する領主達ではなく、冷静なユウリに話を振る。どうやらユウリもかなり暴れられたようで、とても満足げで肌艶も良い。また若返ったようだ。
「記録しております。魔獣では、猪や鹿など肉食ではなさそうなものが多かったように思います。それと、草木の魔物ですね……わさわさしていました。弱点が見つけにくくて、剣で真っ二つにするのが後半は多かったかと」
「もしかして、食べられそうにないゴブリンとかコボルトなんかはいなかった?」
「あ、はい。そうです」
「おおっ。ならきっと食料迷宮だ! それも百階層なんてっ。費用対効果抜群ですよ!」
「え? え? 食料迷宮?」
領主がまた混乱した。
「はい! 迷宮の魔獣は外に出ると魔石しか落とさないで消えるでしょう?」
「あ、はい……お陰で早く帰ってこられました」
「魔石だけ拾えば良いのは有り難いです」
外に慣れてしまうと、実体を持ってかなり強くなってしまうのだが、放出されてしばらくか経っていなければ、倒したと同時に魔石だけを残して遺骸は煙の様に消える。
後始末をしなくていいのはとても助かる。何百と出てくるのだ。遺骸も残っていたら足の踏み場もなくなってしまうし、血生臭くて敵わない。
「浄化され、一度深層まで行って攻略された迷宮の中で迷宮の魔獣や魔物を倒すと、魔石だけか、それ以外の素材になって消えるんですよ」
「……そんなことが……」
「迷宮を攻略……」
「ええ。なので、さっさと攻略しましょう。ぼくが行っても良いですけど……」
「キリ」
「うん。もう少し大きくなってからにします。なので、ユウリとビルス、それと元傭兵のリュイとレモア司教を出します。もちろん迷宮内で問題なく動けるよう、魔導具もお渡ししますね」
すでにそのための準備は済ませていた。
「十階層毎に転移石があるので、そこで区切りをつけて帰ってきて、数日休んで、再開してまた十階層進むというように百階層まで攻略してください。ユウリとレモア司教に完全攻略としての迷宮の始末の仕方を教えておきますから」
「あ……ああ……」
「迷宮を攻略……」
領主達も、ギルド長もまだ頭が正常に動いていない様子。だが、構わず続けた。
「その他の人選はお任せします。大丈夫。ちょっと特殊な遠征訓練だとでも思ってください。領主様達の強さなら、きちんと休息や食事が取れれば深層の強さの魔物でも問題なく倒せますよ」
「そ、そうか……」
少し安心したようだ。だが、大事なことが一つある。
「放出で出てきた以上の強さのが一体だけ一番深層にいると思いますが、多分、辿り着くまでに実力も上がるので、油断しなければ大丈夫です。もし死にかけても、なんとかできるように対策は用意しますね」
「死にかける……」
「死ななければ大丈夫です! 即死だけ気を付けてくださいね」
「……わかりました……」
それを言うのが限界だったようだ。
「それじゃあ、三日ほど休息を。西地区の人たちは明日には戻しましょう。夫人、みなさんにそう伝えてください。シェルマ殿、また放送お願いしますね」
「っ、分かりました!」
「うん。原稿はまた……リーツ?」
「お手伝いいたしますのでご安心を」
「ありがとうっ」
そうして、危機を一先ず乗り切ったのだ。
「ユウリのためにも、野営道具を揃えなきゃね」
「キリ……無理はしないでくださいね」
「平気だよ。まあ、ぼくが一緒に行った方が簡単なんだけどね?」
「それはダメです」
「は~い」
キリアルートが行けば、快適な野営を約束できる。しかし、体は五才。それに、迷宮攻略のメンバーにキリアルートが入るのは後々の報告で面倒なことになる。道具を用意するくらいならば、職人であるリダやレモアを隠れ蓑にすることができる。
面倒だが気をつけるに越したことはない。とはいえ、道具を作るのは好きだ。この際、楽しもうとキリアルートは座り込んだままになっている領主達を残し、ユウリと共に屋敷へと飛んだ。
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