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第一章
013 やってみたらできました
さすがに鉄や金のインゴッドを普通の商家に売れるとは思えず、それならばとユウリに連れられてやって来たのが、商業ギルド。この世界では商稼組合と言うらしい。
「う~ん。あまり人がいないね」
「ここに個人的に来る必要がある人は、この辺境では少ないですからね」
そうユウリが説明してくれた。なんだか、活気がないと感じてしまうのは気のせいだろうか。
窓口の一つにユウリとビルスに挟まれながら向かう。
「こんにちは。どのようなご用件でしょうか」
にこやかに微笑み、窓口の女性は声をかけてくれた。しかし、ここで油断はしない。ユウリが口を開こうとするところで、キリアルートが前に出た。
「こんにちは。ぼく、コレを売りたいんですけど、ここでお願いできますか?」
そう言って、ゴトっと鉄のインゴッドを空間庫からカウンターの上に直接出現させた。とりあえず一つだ。
「へ? あ、え? 空間庫……っ、というか、鉄!? 嘘、純度がっ……っ、し、少々お待ちください!」
最後は声が裏返っていた。それでも大声にならないように努めていたのはわかった。
「いい人かも~」
「坊ちゃま……」
呑気なキリアルートの様子に、ユウリは嗜めるべきかと悩んでいた。
「あの人、鑑定眼持ってたね。ここの人達ってみんなそうなのかな?」
「商稼組合の受付は、鑑定眼持ちか、鑑定魔法の取得が義務付けられていたはずです」
「へえ。ビルスって、意外と物知りだね」
「……恐れ入ります……」
その目は、お前に言われたくないとでも言いたそうだったが、それは綺麗にスルーだ。
そこに、先ほどの受付嬢が戻って来て、頭を下げる。
「お部屋の方をご用意させていただきました。こちらへお願いいたします」
「は~い」
「はい……」
「……」
案内された部屋は、商談用なのだろう。絨毯やソファなど、とても良いものを使っているようだった。
中には初老の男性が一人とその補佐らしき青年が一人待っていた。
「お連れしました」
「そちらが?」
「はい。どうぞ、こちらにおかけください」
男性の前のソファ、中央にキリアルートは腰掛けた。足がつかないのは当たり前なのでブラブラしないように気をつける。
「ありがとうございます」
「失礼いたします……」
「……」
ユウリが横に座り、ビルスは護衛らしく後ろに控えた。その関係を男達は推測しているようだ。
「私はここの支店の組合長、マギールという。こちらは補佐のリーディルだ。単刀直入に聞く。この鉄のインゴッドは、どこで手に入れられた?」
確認してくるだろうなとは思っていたことだった。なので、キリアルートは、空間庫から風呂敷サイズの分厚い布を出して机の上に広げ、空間庫に入れてあった土を盛る。
「これは森の地下深くから取り出した土です。それを……こうして攪拌し、砂鉄を取り出して、熱っし、圧縮して形成する……と、こうなります」
「「「……」」」
組合の者達は扉の前に立って控えていた受付嬢も含めて、唖然としながらそれを見ていた。
「「……」」
ユウリとビルスは、ゆっくりとキリアルートに視線を動かして、何してるのと言う顔をしている。それに答えるように、土と見事な鉄のインゴッドにしっかり分かれたことを満足げに見てから、えへへと後ろ頭を掻いて照れて見せるキリアルート。
「……坊ちゃま……」
「……これはない……」
意思の疎通はできていなかった。
そして、組合長は覚醒した。
「こっ、こんなことが可能なのか!?」
「やってみたらできました」
「なんてことをっ……」
「あ、でも、多分、近くに鉱脈もありそうでしたよ? ほら、金もあったんです」
「っ、なに!?」
「「っ!?」」
ゴトっと空間庫から出した金のインゴッドが机の上で輝いていた。
「ということで、出所はすぐそこの森です。未開地で拾いました。適正価格で買い取ってください」
どうぞよろしくと、手を開いて微笑んで見せるキリアルート。
「……わかりました……」
出所が確かならば、問題にすることではないと判断してくれたようだ。さすがに、目の前で作られてしまっては、言いがかりもつけられない。キリアルートの強引な勝利だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「う~ん。あまり人がいないね」
「ここに個人的に来る必要がある人は、この辺境では少ないですからね」
そうユウリが説明してくれた。なんだか、活気がないと感じてしまうのは気のせいだろうか。
窓口の一つにユウリとビルスに挟まれながら向かう。
「こんにちは。どのようなご用件でしょうか」
にこやかに微笑み、窓口の女性は声をかけてくれた。しかし、ここで油断はしない。ユウリが口を開こうとするところで、キリアルートが前に出た。
「こんにちは。ぼく、コレを売りたいんですけど、ここでお願いできますか?」
そう言って、ゴトっと鉄のインゴッドを空間庫からカウンターの上に直接出現させた。とりあえず一つだ。
「へ? あ、え? 空間庫……っ、というか、鉄!? 嘘、純度がっ……っ、し、少々お待ちください!」
最後は声が裏返っていた。それでも大声にならないように努めていたのはわかった。
「いい人かも~」
「坊ちゃま……」
呑気なキリアルートの様子に、ユウリは嗜めるべきかと悩んでいた。
「あの人、鑑定眼持ってたね。ここの人達ってみんなそうなのかな?」
「商稼組合の受付は、鑑定眼持ちか、鑑定魔法の取得が義務付けられていたはずです」
「へえ。ビルスって、意外と物知りだね」
「……恐れ入ります……」
その目は、お前に言われたくないとでも言いたそうだったが、それは綺麗にスルーだ。
そこに、先ほどの受付嬢が戻って来て、頭を下げる。
「お部屋の方をご用意させていただきました。こちらへお願いいたします」
「は~い」
「はい……」
「……」
案内された部屋は、商談用なのだろう。絨毯やソファなど、とても良いものを使っているようだった。
中には初老の男性が一人とその補佐らしき青年が一人待っていた。
「お連れしました」
「そちらが?」
「はい。どうぞ、こちらにおかけください」
男性の前のソファ、中央にキリアルートは腰掛けた。足がつかないのは当たり前なのでブラブラしないように気をつける。
「ありがとうございます」
「失礼いたします……」
「……」
ユウリが横に座り、ビルスは護衛らしく後ろに控えた。その関係を男達は推測しているようだ。
「私はここの支店の組合長、マギールという。こちらは補佐のリーディルだ。単刀直入に聞く。この鉄のインゴッドは、どこで手に入れられた?」
確認してくるだろうなとは思っていたことだった。なので、キリアルートは、空間庫から風呂敷サイズの分厚い布を出して机の上に広げ、空間庫に入れてあった土を盛る。
「これは森の地下深くから取り出した土です。それを……こうして攪拌し、砂鉄を取り出して、熱っし、圧縮して形成する……と、こうなります」
「「「……」」」
組合の者達は扉の前に立って控えていた受付嬢も含めて、唖然としながらそれを見ていた。
「「……」」
ユウリとビルスは、ゆっくりとキリアルートに視線を動かして、何してるのと言う顔をしている。それに答えるように、土と見事な鉄のインゴッドにしっかり分かれたことを満足げに見てから、えへへと後ろ頭を掻いて照れて見せるキリアルート。
「……坊ちゃま……」
「……これはない……」
意思の疎通はできていなかった。
そして、組合長は覚醒した。
「こっ、こんなことが可能なのか!?」
「やってみたらできました」
「なんてことをっ……」
「あ、でも、多分、近くに鉱脈もありそうでしたよ? ほら、金もあったんです」
「っ、なに!?」
「「っ!?」」
ゴトっと空間庫から出した金のインゴッドが机の上で輝いていた。
「ということで、出所はすぐそこの森です。未開地で拾いました。適正価格で買い取ってください」
どうぞよろしくと、手を開いて微笑んで見せるキリアルート。
「……わかりました……」
出所が確かならば、問題にすることではないと判断してくれたようだ。さすがに、目の前で作られてしまっては、言いがかりもつけられない。キリアルートの強引な勝利だった。
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