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第一章
014 それが賢明だね
キリアルートは、鉄のインゴッドを五つと金のインゴッドを一つ売ることにした。
「さ、さすがに金額は大きなものになりますので、口座を開設される方がよろしいかと……」
必死に現実を受け止めようとしている受付嬢が、片頬を引き攣らせながらもそう勧めてくれた。
「そうですね! では、ぼくとこの二人のもお願いします! あっ、年齢制限はありますか?」
「いえ……成人前のお子様のは、大人の方が保証人となれば可能です」
「引き出す時にその大人しか出来ないなんてことは?」
キリアルートが気にしたのは、子どもの意思をきちんと確認してくれるかどうかだ。子どもの資産を大人が勝手に引き出していかないかどうかの確認は必要だろう。
その問いかけをまさかまだ幼い子ども自身がしてくるとは思わなかったのだろう。女性は一瞬戸惑いながらも答えた。
「っ、き、基本、引き出しは本人様のみ可能です……ただし、十一才になるまでは、きちんと受け答えができるかどうかを毎回確認させていただきます。また、登録した保護者の方が年齢の関係で代わりに引き出したい場合、使用目的を確認し、こちらで調査した後に引き出しが可能となります」
「それは、組合が保障してくれるということですか?」
犯罪目的で使われないよう、子どもが利用されないように見てくれるようだ。
「は、はい。ですので、調査には十日間前後かかります」
「なるほど。よくわかりました。ありがとうございます。口座の開設をお願いします」
「しょっ、承知しました!」
女性は部屋を飛び出して行った。書類を取りに行くのだろう。
この間、組合長のマギールと補佐のリーディルは、目を丸くしてキリアルートと女性のやり取りを見ていた。その視線を感じるながらも、キリアルートは隣に座るユウリに声をかける。
「ユウリが保証人になってね。複数の保証人が可能なら、ビルスも。そういえば、二人はここの口座は持ってなかった? 作るって言ってしまったけど」
「はい……口座が必要になるほどのお金の持ち合わせはないので……」
「私も」
「ならよかった」
地球ではほぼ口座を作るのは当たり前だったが、こうした世界では、一般の人は家で管理する。一度に大きな金額を受け取ることもなく、それほどの金額でもない。質素な生活が当たり前で、貯蓄に回すお金は微々たるもの。わざわざお金を預けて、必要な時に下ろすという手間をかける必要性を感じないというのもありそうだ。
そこでようやくマギール組合長が口を開いた。
「君は……いくつなのかな」
「ぼくは五才です」
「ごっ……そうか……いやあ、賢い子だ……しかし、そちらの女性は母親ではないんだね?」
「うん。乳母なんだ。少し家庭の事情が複雑でね。外では母さんと呼ぶつもりだけど……あなた方には今後もお願いしたいことがあるから正直にね」
「……そ、そうですか……因みに、何をお求めで?」
早くからこの場でユウリをいつも通り呼んでいたのには理由があった。
「大したことじゃない。きちんと取引してもらえればいいよ。あの受付嬢の様子や、今こうして、子どもだと侮らずに対応してくれているのを見れば、信用できると思えたからね」
「っ、本当に賢い方だ……では、そこに誠意もあると示しましょう」
「へえ」
判断力も素晴らしいと、キリアルートは感心していた。利がある人物だと認められた証でもあるだろう。そうなれば、個人情報も守ってくれる。キリアルートが下手に子どもらしい演技をしなかったのも、この誠意を引き出すためだった。上手く行ったようだ。
「よろしければ、身分証を発行させていただきます。傭兵ギルドでは、十才以上にならなければ、発行できません。しかし、この商稼組合は違います」
うんと頷いた補佐が一礼して部屋を出ていく。マギールの説明は続いた。
「条件がありますが、それさえ問題なければ、年齢制限はありません」
「その条件は?」
「はい。一つは口座を開設した者であること。そして、有益な取引ができる者であること。それから……」
そこで戻って来た補佐のリーディルの手には、何枚かの用紙があった。その一枚をキリアルートの前に置き、書くものも用意した。
「その用紙に本人が記入できればというものです」
「なるほどね~」
「ぼっちゃ」
ユウリが不安そうに声をかけてくる。
「ユウリ。大丈夫だよ」
キリアルートは、読み書きをまだ教えられていない。年齢的にまだ五才。とはいえ、高位貴族の子どもならば、教育が始まっている頃ではある。
「ユウリが何度も本を読んでくれてたでしょう?」
「っ、で、ですが……本当に?」
「うん。ちゃんと分かるよ。上手く書けるかどうかは分からないけどね」
きちんと覚えているのだ。元々、記憶は戻ってはいなくても、素地はあったのだろう。よって、ユウリが何度も読み聞かせてくれた本のお陰で文字は頭に入っていた。
教皇であった前世の世界の文字とも似ているため、無意識に馴染んでいたようだ。
筆記用具はボールペンや鉛筆があるわけではなく、染み込みにくい先端を鉛筆のように尖らせた木の棒に、インクを付けて書くようだ。
「ん? これ、子ども用?」
「え? いえ」
「そう……」
短いもので、大人が使うには使いにくそうに思える。子どもの手にかなりちょうど良い長さだった。
「あの……」
長さを気にしている様子が、戸惑っているように感じたのだろう。ユウリがまた声をかけようとするが、キリアルートはしっかりとペンを握って笑った。
「まあ、見てて」
長さや太さが良いのか、スラスラと書くことができた。
書く項目は少ない。日にちとこの領地名。そして名前と保護者や後見役の名前くらいしかない。
日にちと領地名を書き、キリアルートと書きながらユウリに確認する。
「保護者はユウリね。あ、家名は無くてもいいかな」
「え……ああ、正直に書いていただけると……こちらで身分を保証するというものですので……」
「そうだよねえ。けど、知って面倒なことになるかもしれないよ?」
「……家名は無くても結構です……」
「それが賢明だね」
明らかに面倒事がありそうな言い方と、ユウリやビルスの表情を見て、マギールは首を突っ込まないことを選択した。
「じゃあ、これでいいかな」
「確認いたします……はい。問題ありません。身分証を発行いたします。少しお時間がかかりますがよろしいでしょうか。口座をご用意するのも同時に行いますので」
「うん。どれくらい?」
「一時間ほど……」
「なら、一度外に出てもいいかな。少し先にお金をもらいたいけど。買取の内訳は?」
「鉄の方が一つ1ケルト五万キール。金の方が一千万キールですので、合計一千二十五万キールです」
日本のものに変換すると1ケルトは1キロでキールは円だ。鉄もそれなりの金額が付くようだが、やはりこちらでも金の値段は高い。
「なら、二万キールを。確か……貨幣だと……そうですねえ。全て千キール単位の大銀貨に替えていただけますか? それで、二人の口座にそれぞれ十万キールを」
「「っ、そんっ」
ユウリとビルスが金額に驚いたのか口を挟もうとするのをキリアルートは手で制し続ける。
「残りはぼくのに」
「承知しました。入金はそのように。二万キールはすぐにお持ちいたします」
リーディルが書き込んだ書類を持って部屋を出て行った。
そして、戻って来た彼から受け取った大銀貨に二十枚、二万キールを持って、商稼組合を出たのだ。
「さあ! お買い物です!」
この世界で初めてのお買い物。意気込んで市場へと向かった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「さ、さすがに金額は大きなものになりますので、口座を開設される方がよろしいかと……」
必死に現実を受け止めようとしている受付嬢が、片頬を引き攣らせながらもそう勧めてくれた。
「そうですね! では、ぼくとこの二人のもお願いします! あっ、年齢制限はありますか?」
「いえ……成人前のお子様のは、大人の方が保証人となれば可能です」
「引き出す時にその大人しか出来ないなんてことは?」
キリアルートが気にしたのは、子どもの意思をきちんと確認してくれるかどうかだ。子どもの資産を大人が勝手に引き出していかないかどうかの確認は必要だろう。
その問いかけをまさかまだ幼い子ども自身がしてくるとは思わなかったのだろう。女性は一瞬戸惑いながらも答えた。
「っ、き、基本、引き出しは本人様のみ可能です……ただし、十一才になるまでは、きちんと受け答えができるかどうかを毎回確認させていただきます。また、登録した保護者の方が年齢の関係で代わりに引き出したい場合、使用目的を確認し、こちらで調査した後に引き出しが可能となります」
「それは、組合が保障してくれるということですか?」
犯罪目的で使われないよう、子どもが利用されないように見てくれるようだ。
「は、はい。ですので、調査には十日間前後かかります」
「なるほど。よくわかりました。ありがとうございます。口座の開設をお願いします」
「しょっ、承知しました!」
女性は部屋を飛び出して行った。書類を取りに行くのだろう。
この間、組合長のマギールと補佐のリーディルは、目を丸くしてキリアルートと女性のやり取りを見ていた。その視線を感じるながらも、キリアルートは隣に座るユウリに声をかける。
「ユウリが保証人になってね。複数の保証人が可能なら、ビルスも。そういえば、二人はここの口座は持ってなかった? 作るって言ってしまったけど」
「はい……口座が必要になるほどのお金の持ち合わせはないので……」
「私も」
「ならよかった」
地球ではほぼ口座を作るのは当たり前だったが、こうした世界では、一般の人は家で管理する。一度に大きな金額を受け取ることもなく、それほどの金額でもない。質素な生活が当たり前で、貯蓄に回すお金は微々たるもの。わざわざお金を預けて、必要な時に下ろすという手間をかける必要性を感じないというのもありそうだ。
そこでようやくマギール組合長が口を開いた。
「君は……いくつなのかな」
「ぼくは五才です」
「ごっ……そうか……いやあ、賢い子だ……しかし、そちらの女性は母親ではないんだね?」
「うん。乳母なんだ。少し家庭の事情が複雑でね。外では母さんと呼ぶつもりだけど……あなた方には今後もお願いしたいことがあるから正直にね」
「……そ、そうですか……因みに、何をお求めで?」
早くからこの場でユウリをいつも通り呼んでいたのには理由があった。
「大したことじゃない。きちんと取引してもらえればいいよ。あの受付嬢の様子や、今こうして、子どもだと侮らずに対応してくれているのを見れば、信用できると思えたからね」
「っ、本当に賢い方だ……では、そこに誠意もあると示しましょう」
「へえ」
判断力も素晴らしいと、キリアルートは感心していた。利がある人物だと認められた証でもあるだろう。そうなれば、個人情報も守ってくれる。キリアルートが下手に子どもらしい演技をしなかったのも、この誠意を引き出すためだった。上手く行ったようだ。
「よろしければ、身分証を発行させていただきます。傭兵ギルドでは、十才以上にならなければ、発行できません。しかし、この商稼組合は違います」
うんと頷いた補佐が一礼して部屋を出ていく。マギールの説明は続いた。
「条件がありますが、それさえ問題なければ、年齢制限はありません」
「その条件は?」
「はい。一つは口座を開設した者であること。そして、有益な取引ができる者であること。それから……」
そこで戻って来た補佐のリーディルの手には、何枚かの用紙があった。その一枚をキリアルートの前に置き、書くものも用意した。
「その用紙に本人が記入できればというものです」
「なるほどね~」
「ぼっちゃ」
ユウリが不安そうに声をかけてくる。
「ユウリ。大丈夫だよ」
キリアルートは、読み書きをまだ教えられていない。年齢的にまだ五才。とはいえ、高位貴族の子どもならば、教育が始まっている頃ではある。
「ユウリが何度も本を読んでくれてたでしょう?」
「っ、で、ですが……本当に?」
「うん。ちゃんと分かるよ。上手く書けるかどうかは分からないけどね」
きちんと覚えているのだ。元々、記憶は戻ってはいなくても、素地はあったのだろう。よって、ユウリが何度も読み聞かせてくれた本のお陰で文字は頭に入っていた。
教皇であった前世の世界の文字とも似ているため、無意識に馴染んでいたようだ。
筆記用具はボールペンや鉛筆があるわけではなく、染み込みにくい先端を鉛筆のように尖らせた木の棒に、インクを付けて書くようだ。
「ん? これ、子ども用?」
「え? いえ」
「そう……」
短いもので、大人が使うには使いにくそうに思える。子どもの手にかなりちょうど良い長さだった。
「あの……」
長さを気にしている様子が、戸惑っているように感じたのだろう。ユウリがまた声をかけようとするが、キリアルートはしっかりとペンを握って笑った。
「まあ、見てて」
長さや太さが良いのか、スラスラと書くことができた。
書く項目は少ない。日にちとこの領地名。そして名前と保護者や後見役の名前くらいしかない。
日にちと領地名を書き、キリアルートと書きながらユウリに確認する。
「保護者はユウリね。あ、家名は無くてもいいかな」
「え……ああ、正直に書いていただけると……こちらで身分を保証するというものですので……」
「そうだよねえ。けど、知って面倒なことになるかもしれないよ?」
「……家名は無くても結構です……」
「それが賢明だね」
明らかに面倒事がありそうな言い方と、ユウリやビルスの表情を見て、マギールは首を突っ込まないことを選択した。
「じゃあ、これでいいかな」
「確認いたします……はい。問題ありません。身分証を発行いたします。少しお時間がかかりますがよろしいでしょうか。口座をご用意するのも同時に行いますので」
「うん。どれくらい?」
「一時間ほど……」
「なら、一度外に出てもいいかな。少し先にお金をもらいたいけど。買取の内訳は?」
「鉄の方が一つ1ケルト五万キール。金の方が一千万キールですので、合計一千二十五万キールです」
日本のものに変換すると1ケルトは1キロでキールは円だ。鉄もそれなりの金額が付くようだが、やはりこちらでも金の値段は高い。
「なら、二万キールを。確か……貨幣だと……そうですねえ。全て千キール単位の大銀貨に替えていただけますか? それで、二人の口座にそれぞれ十万キールを」
「「っ、そんっ」
ユウリとビルスが金額に驚いたのか口を挟もうとするのをキリアルートは手で制し続ける。
「残りはぼくのに」
「承知しました。入金はそのように。二万キールはすぐにお持ちいたします」
リーディルが書き込んだ書類を持って部屋を出て行った。
そして、戻って来た彼から受け取った大銀貨に二十枚、二万キールを持って、商稼組合を出たのだ。
「さあ! お買い物です!」
この世界で初めてのお買い物。意気込んで市場へと向かった。
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読んでくださりありがとうございます◎
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