エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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19th ステージ

211 正しく神のご意志です

メイドが静かに頭を下げた後、配膳ワゴンのような台車から一歩だけ離れる。

それを確認したソルマルトが、順に乗っている物の説明をし始めた。

「右手前から『幸運転化の宝玉』これにより、召喚が成功する確率を最大限に高めておりました。次に『穢れた王冠』呪われた元教皇の王冠です。これを着ける者は次第に弱っていきます。教皇がこれまで短命であった原因の一つです。私も就任当初は着けておりました」

教皇はその激務から数年の命だと言われている頃があった。その理由がこの王冠だった。早い代替わりによって、独裁は防がれていた。しかし、これが原因であったとは誰も気づかなかったようだ。

「次に『召喚の杖』本来ならば、従魔などの召喚の際に使われるはずだったものですが、これと異世界召喚の魔法陣を使うことで、更に成功率が上がっておりました」

従魔の召喚であっても、召喚とは強制転移のようなもの。それ自体が次元に干渉する力だ。これにより、別次元への穴が開きやすくなった。

「次にあるケースに入った石が『隷属の香石』ですが、これを浸けた水が、洗脳や隷属の魔法をかけやすくし、式典などの折に聖堂にあったことで、多くの人々の思考を奪っておりました」

一番質が悪かったのがこれだ。

「ほお……その洗脳や隷属を利用していると、教皇であるお前は気付かなかったと?」
「そうですね……そもそも、教皇は贄です。歴代の教皇も、知らずあのような王冠を付けられておりました。教会には、二つの大きな派閥があり、その一つが、代々これらの事実を隠しながら教皇をも操ってきたのでしょう。今はそう確信しております」

ソルマルトも、そうして消えていくはずだった。リンディエールが動かなければ、あのままベッドで動けなくなっていただろう。

「捕えた者達が自白していないのか?」
「……神のご意志だったと言うだけです。彼らは、最初に異世界召喚を企み、アレらの力を使って教会をより強い組織にしようとした者達から受け継いだ伝統のようなものを守っていただけなのでしょう……」

そこに個人の意志などない。それを信じてやってきた。ただそれだけ。

「教会の悪い部分です。信じる力を履き違えてしまう……盲信は思考を奪います。選択しているようで、していない。信仰とは常に隣にある支えであって、全てではないのですから」
「……教皇の言葉とは思えんな……」
「これまでの教皇とは違うのだと示していかねばなりませんので」
「なるほど……」

竜王はソルマルトを見据える。しばらくして、その視線をふと外した。

「嘘はないようだ……確かに今までの、我々の知る教皇というものとは違うようだ」

これを聞いて、ソルマルトよりも王達の方がほっとしていた。

「それで? アレは誰が管理しているのだ?」
「神の愛し子様です。ですが、元々、大厄災が落ち着いた後、神にお返しすることになっておりました」
「……返せるのならば、なぜすぐに返さなかった」
「正しく神のご意志です。乗り越えるために役に立つこともあるだろうと」
「……使ったのか……」

良い印象はないだろう。竜王は、それらを使ったということに顔を顰める。

しかし、ソルマルトに後ろ暗い所はない。

「『幸運転化の宝玉』は、力の足りない、危ない戦況の場所に持参し、参戦いたしました。これにより、想定された被害をほぼ抑えられました」

力が足りない分、運を味方に付けたのだ。

「『穢れた王冠』は弱体化の呪いをかけるものなので、キングやクイーン個体に着けました。結果、格段に倒しやすくなり、討伐も早く済みました」

魔獣にも穢れってダメなんだなと、研究者達がメモった部分だ。

「『召喚の杖』は、本来ならば契約できなかった従魔との契約を可能にし、最低限の負担で喚び出すことができ、戦況は一気に楽になりました」

従魔達のパワーアップもしてくれたようで、どちらかといえば、かなりマイナーで不遇を強いられていた従魔術師達が、輝ける舞台となった。

「そして、『隷属の香石』は、混乱する魔獣達を誘導したり、一部の役目を放棄しようとする貴族達を働かせるために使用いたしました」
「……よく使えたものだ……」
「ええ。本当に……」
「どういうことだ? お前の案ではないのか?」
「愛し子様と異世界から召喚された聖女の案になります」
「聖女の……?」
「はい。あちらの娘がその聖女です」
「……隷属しているのか?」
「いえ。彼女自身の意志です」
「……そんなはずは……」

召喚された者は、教会に隷属しているというのが、当たり前の常識だったのだろう。竜王も、その補佐も驚きながら、視線は静かに微笑みながら佇む、メイド姿の悠に向けられていた。

そんな探る様な目を向ける竜王達の様子を、同じく探る様に、リンディエールとヒストリアは使い魔の目を通して見つめていた。






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