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19th ステージ
214 来てしもうたわ
竜王側は、悠の吐き捨てた言葉を理解出来なかったらしい。『無能』などと言われるとは思ってもみないだろう。この場で一国の王相手にそのようなことを誰が口にするというのか。
それを実際口にした悠は、平然としている。
「ユウちゃんは聖女ではなく勇者じゃったか」
そう言ったのは、この場に今しがた現れた大賢者イクルスだ。
「ごきげんよう。イクルス様」
「いつもみたくじいちゃんでええよ?」
「それはまたの機会に」
「場によって使い分けられるのも寂しいもんじゃ」
「我慢してください」
さすがにこの場では呼べない。これにより、悠のピリピリとした雰囲気が和らいだのは良かった。
このやり取りを見れば、悠とイクルスの関係が親しいものだと言うのも分かる。それを知って、竜王側は動揺した。
「だ、大賢者イクルス……」
イクルスは魔族の血が濃い上にレベルも高いため、竜族並みに長命だ。異種族の交わりがあった最後の世代であるため、今の竜王よりも遥かに年上だった。
大賢者イクルスの名は彼らの国でも偉人として残っているらしく、動揺したのはそのせいでもある。
「いかにも。勇者が頑張っておるなら、賢者も頑張らんでどうすると言われてのお。来てしもうたわ」
リンディエールの采配だと人族側の者達には分かった。
「先代はもう少し賢かったが、やはりオヌシは器ではなかったようじゃな」
「っ……」
「どうじゃ? 次代を無理にでも退けてまで座った玉座の座り心地は」
「「「っ……!」」」
ギロリと強い視線で睨まれ、竜王側は口を開けなくなった。人族側の王達も、何人かが厳しい目を向けた。
イクルスはなおも続ける。
「その後の責任も、国民との未来も描けず、ただ王になりたいという一念だけでその席に座った愚か者よ」
「「「っ……」」」
図星過ぎて言葉もないのだろう。竜王だけでなく、側近達も顔を青ざめさせる。今の地位にあることに、後ろ暗い思いがあるからだろう。
「国民は王の鏡じゃ。今の国民らが楽観的で先を見ない愚か者になったのは、オヌシらがそうだからだ。責任は取るべきじゃろう?」
「そ、それは……っ」
「失敗を認められん者と失敗してもそれを認めてはならん者とは違うんじゃぞ? 王侯貴族は民の生活を預かっておる。政策に失敗は許されん。しかし、失敗しないわけがない……」
「「「「「……」」」」」
どの王も、静かにそれを聞いていた。
「それを次に活かさねばならん。立ち止まらず、結論を失敗と決めず、挽回するよう立ち回る。なかった事にするのではなく、それを通過点とする。それが責任の取り方の一つじゃ」
「……」
「他人にその責任を押し付けるのは愚か者のすることじゃわい。国民の見ていない所では、頭を下げることも必要じゃ」
「……っ」
責任転嫁させて、賠償のように人族から何かを得るのではなく、きちんと頭を下げて頼めということだ。
「意味は分かるな? 少し見て来たが、アレでは、ふた月と保つまいよ……田畑は踏み荒らされ、怪我人や遺体が転がっておる。力を過信する所も、オヌシとそっくりじゃなあ」
「……っ、わ、私は……っ」
「三百年は良い思いをしたじゃろ? まあ、人族と違うのは、女に走らん所じゃなあ。そう言った欲が王に薄いのは良い。子を無責任に増やせば、色々と複雑な問題を抱える事になるからのお。それは良い。とにかく、良い思いをした分、働いて返せ」
「……っ、そんな簡単では……」
「そうじゃよ? 怠けたオヌシらが悪い。先ずはユウちゃんに謝らんかい」
「っ……」
知っていて放置した結果が悠の召喚だ。そこは認めてもらわなくてはならない。
「イクルス様にも謝っていただきましたね」
「まあの。一時期、潜入もしてみたんじゃが……まさか、神物が使われておるとは思わなんだ。それに、ソルがしっかりしとったから、止められるもんだと思っておった」
「面目次第もございません」
「いやいや。ソルの様子を気にしておらなんだのがいかんのよ」
「イクルス様は、先を見通し対策もされるけれど、先が見え過ぎて、遥か先の予想をされるので、ズレが出やすいのと、結果を見ずに次に行くから注意が必要だと聞いています」
「うわ~。その通り。これが長く生きてるせいだよね~。百年先、二百年先を見ちゃうのよ。色んな事例とかも知ってるから、先ず外す事はないんだけど、人って予想外の行動とか突然起こしたりするから」
問題が起きたら、微調整すればいいのだが、イクルスは経過を見ない。他ごとをやっていて忘れるということが多いらしい。
「竜王も、本来なるべき者で予想していたから、僕の中では完全に異世界召喚はなされていなかったんだよ。あの次代なら、人族の国との関係もいずれ見直すと思っていたしね」
「それが、喧嘩売りに来てますが?」
「っ……」
「あははっ」
笑い事ではないが、イクルスからすれば、笑ってお終いにできることなのだろう。
竜王達はこの後どうすべきかと、考え込んでしまった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
それを実際口にした悠は、平然としている。
「ユウちゃんは聖女ではなく勇者じゃったか」
そう言ったのは、この場に今しがた現れた大賢者イクルスだ。
「ごきげんよう。イクルス様」
「いつもみたくじいちゃんでええよ?」
「それはまたの機会に」
「場によって使い分けられるのも寂しいもんじゃ」
「我慢してください」
さすがにこの場では呼べない。これにより、悠のピリピリとした雰囲気が和らいだのは良かった。
このやり取りを見れば、悠とイクルスの関係が親しいものだと言うのも分かる。それを知って、竜王側は動揺した。
「だ、大賢者イクルス……」
イクルスは魔族の血が濃い上にレベルも高いため、竜族並みに長命だ。異種族の交わりがあった最後の世代であるため、今の竜王よりも遥かに年上だった。
大賢者イクルスの名は彼らの国でも偉人として残っているらしく、動揺したのはそのせいでもある。
「いかにも。勇者が頑張っておるなら、賢者も頑張らんでどうすると言われてのお。来てしもうたわ」
リンディエールの采配だと人族側の者達には分かった。
「先代はもう少し賢かったが、やはりオヌシは器ではなかったようじゃな」
「っ……」
「どうじゃ? 次代を無理にでも退けてまで座った玉座の座り心地は」
「「「っ……!」」」
ギロリと強い視線で睨まれ、竜王側は口を開けなくなった。人族側の王達も、何人かが厳しい目を向けた。
イクルスはなおも続ける。
「その後の責任も、国民との未来も描けず、ただ王になりたいという一念だけでその席に座った愚か者よ」
「「「っ……」」」
図星過ぎて言葉もないのだろう。竜王だけでなく、側近達も顔を青ざめさせる。今の地位にあることに、後ろ暗い思いがあるからだろう。
「国民は王の鏡じゃ。今の国民らが楽観的で先を見ない愚か者になったのは、オヌシらがそうだからだ。責任は取るべきじゃろう?」
「そ、それは……っ」
「失敗を認められん者と失敗してもそれを認めてはならん者とは違うんじゃぞ? 王侯貴族は民の生活を預かっておる。政策に失敗は許されん。しかし、失敗しないわけがない……」
「「「「「……」」」」」
どの王も、静かにそれを聞いていた。
「それを次に活かさねばならん。立ち止まらず、結論を失敗と決めず、挽回するよう立ち回る。なかった事にするのではなく、それを通過点とする。それが責任の取り方の一つじゃ」
「……」
「他人にその責任を押し付けるのは愚か者のすることじゃわい。国民の見ていない所では、頭を下げることも必要じゃ」
「……っ」
責任転嫁させて、賠償のように人族から何かを得るのではなく、きちんと頭を下げて頼めということだ。
「意味は分かるな? 少し見て来たが、アレでは、ふた月と保つまいよ……田畑は踏み荒らされ、怪我人や遺体が転がっておる。力を過信する所も、オヌシとそっくりじゃなあ」
「……っ、わ、私は……っ」
「三百年は良い思いをしたじゃろ? まあ、人族と違うのは、女に走らん所じゃなあ。そう言った欲が王に薄いのは良い。子を無責任に増やせば、色々と複雑な問題を抱える事になるからのお。それは良い。とにかく、良い思いをした分、働いて返せ」
「……っ、そんな簡単では……」
「そうじゃよ? 怠けたオヌシらが悪い。先ずはユウちゃんに謝らんかい」
「っ……」
知っていて放置した結果が悠の召喚だ。そこは認めてもらわなくてはならない。
「イクルス様にも謝っていただきましたね」
「まあの。一時期、潜入もしてみたんじゃが……まさか、神物が使われておるとは思わなんだ。それに、ソルがしっかりしとったから、止められるもんだと思っておった」
「面目次第もございません」
「いやいや。ソルの様子を気にしておらなんだのがいかんのよ」
「イクルス様は、先を見通し対策もされるけれど、先が見え過ぎて、遥か先の予想をされるので、ズレが出やすいのと、結果を見ずに次に行くから注意が必要だと聞いています」
「うわ~。その通り。これが長く生きてるせいだよね~。百年先、二百年先を見ちゃうのよ。色んな事例とかも知ってるから、先ず外す事はないんだけど、人って予想外の行動とか突然起こしたりするから」
問題が起きたら、微調整すればいいのだが、イクルスは経過を見ない。他ごとをやっていて忘れるということが多いらしい。
「竜王も、本来なるべき者で予想していたから、僕の中では完全に異世界召喚はなされていなかったんだよ。あの次代なら、人族の国との関係もいずれ見直すと思っていたしね」
「それが、喧嘩売りに来てますが?」
「っ……」
「あははっ」
笑い事ではないが、イクルスからすれば、笑ってお終いにできることなのだろう。
竜王達はこの後どうすべきかと、考え込んでしまった。
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感想ありがとうございます◎
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読んでくださりありがとうございます◎
おじいちゃん、しっかりズバズバ言ってくれて嬉しいです!
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