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11th ステージ

113 ダメですか?

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今の時間の授業が終わった所で、突然ではあるが、学園生達をダンスホールとしても使う広間に集まるよう指示を出すことになった。

学園長と副学長が、教師達へ伝えに行くため、部屋から飛び出して行く。二人とも、随分と顔色が悪かったのが心配だ。

リンディエールと学園の生徒会のメンバーは部屋に取り残された。

「ちょいあんたらも座りい。お茶を淹れるわ」

茶器とティーポットを亜空間から取り出しながら、リンディエールがそう告げれば、慌てて一年生役員達が駆け寄ってくる。

「あ、わ、わたくしが」
「ええて。気にせんと。まあ座りい」

ポンポンとリンディエールはソファの隣りを叩いて示す。これに、当然ながら戸惑うが、マルクレースとスレインが動いた。

「君たちはあちら側に座るといい」
「学園長達が戻ってくるまで、時間がかかると思いますからね」
「まあ、結構脅したでなあ。学園長は怒っとったし、直接集まるのをきちんと見届けるやろ」

学園長はかなり、今回のことに衝撃を受けたようだった。彼は信じていたのだろう。生徒達も、教師達も、そして副学長も。

マルクレースとスレインがリンディエールの両隣に別れて座る。そして、おずおずと残りの四人が向かいのソファに並んだ座った。

きっと、彼らはここで副学長に命じられていたことを怒られると思っているだろう。だが、リンディエールはその期待は裏切る子だ。

「今はまだお説教せんといてな」
「ダメですか?」

マルクレースもそのつもりだったようだが、止めておく。

「先ずはじっくり反省させなあかんやろ。いつ怒られるか分からんドキドキを経験しとくのもええよ」
「なるほど。では、もう少し後にしよう」
「「「「っ……」」」」

リンディエールは決して優しくない。味方にはならないのだと、彼らは絶望した。

「あんたら、良かったやんか。ここはまだ学園や。社会的な責任はかかってこぉへん。裏切るってのは……怖いことやって、知れたやろ」
「っ……はい……」

どうしてもそうなってしまう時もある。その時は仕方がないかもしれない。だが、それでも悩み、どうにかしようと思う必要がある。それを今回は、想定できて良かったと思うべきだ。

「今回の事で分かったんは……あんたらは権力に弱いってことやな。これは対策を考えておかんと、将来困るで? 腹黒い奴らに簡単に捨て駒にされるわ」

上から脅されれば、家族でも裏切るだろう。親しい友人も切り捨てる可能性は高い。

「どっ、どうすればよかったんでしょうか……っ」
「それや」
「……え……」

淹れたお茶に口をつけながら、リンディエールは指摘する。

「やから、それや。そうやって、味方にできる第三者に相談すれば良かったんよ。どうしても、天秤にかけられると視野が……心が狭くなるもんや。やから、追い詰められる前に、立ち位置を把握しとくんよ。その時のために、味方を用意しとくんや」
「……相談……出来る人を……」
「せや。それか、自分の命さえ、なんも未練なく孤独に、一人になるかやな」
「……」

とっても極端だが、追い詰めてくる者に対抗するには仕方ない選択だろう。

「……ですが……もしもっと上の方からの命令なら……」

貴族社会ならば仕方がない。どうしても身分には勝てない状況はある。だが、リンディエールならば、それに屈する気はない。

「賛同できんのやったら、同情引ける可能性のある所を中心に、広くぶちまける。そんで、できれば追い詰められとっても、余裕ある感じを見せる。『ちょっと聞いてよ~。おかしなこと言われたんっすけど~』ってさ」
「……」
「当事者達以外の意見が入れば、逃げ道も見つかる可能性は高い。どさくさに紛れて反対しちゃえば、天秤にかける前に逃げられるやん?」

うやむや大作戦だと笑った。

「ここは、そういうことも学ぶ所やろ? もっと悩めや、若者よ」
「「「「っ……」」」」

冗談っぽく言ってやれば、少しだけ笑顔が見えた。

「あ~せやけど、それなら優等生ばっかにするんも考えものか?」

試練の練習をする場所としては、問題児が多い方がいいのかもしれない。

「これは悩みどころやなあ」

これに、マルクレースが笑う。

「ふふふっ。確かにそうですが、そういう勉強以外が遅れてしまいますから」
「せやったな。まともに授業も受け取らんのや。そんなことに時間は割いとれんなあ」

あれだけ教師を馬鹿にしていたのだ。真面目に聞いている生徒は少ない。それだけ、授業自体理解できていないということだ。

「まあ、もっと情緒とか、心の面も鍛えんとあかんね」
「そのようですね……」
「ええ」

マルクレースとスレインがリンディエールを挟んで頷いた。それはとても含みのある笑みで。

「「「「っ……」」」」

彼らには悪いが、精神面については、この二人によって鍛えられることになりそうだ。

そうこうしている間に、生徒が集まったと学園長が呼びに来た。

リンディエールは学園生達と対面することになった。

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