趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

508 指示をもらえるだろうか

少し落ち着いた頃。職員達が書類片手に戻ってきた。

「あ、あの……まだまとめられていないものも……あるのですが……」
「全部で良い。それと、そろそろ下に俺の兄達が来る。こっちに呼んでくれ」
「は、はい!」

イヤフィスで連絡して、セルジュとカリュエル、それと、ユゼリアを応援として呼んでいたのだ。

「お連れいたしました!」

ルイナがやってきた三人を案内してきた。

「お待たせ、フィルっ。何すれば良いの?」
「すごい事になっているねえ」
「これは……」

執務室は、職員達が常に書類を持って集まってくる。その集まった書類はドカドカと机に積み上げられていた。

「兄さんとカリュは、帳簿の確認を頼む。この二人に、計算を任せてくれ」

職員達にそう頼む。そして、大事な確認をする。

「兄さんもカリュもそろばん持ってるよな?」
「「持ってる」」

腰に付けているフィルズと同様の小さなカバンは、マジックバッグだ。その中に当然のようにそろばんが入っていた。

「帳簿の付け方、覚えてるか?」
「「もちろん!」」
「その要領で良い。頼む」
「「分かった」」

二人には、卒業後に親から学ぶ領地経営に関する実務を、フィルズが少しずつ教えていた。帳簿の付け方は、商会でもそう変わらない。簿記を教え込む気でいる。基礎はすでに教えたため、即戦力にできるだろう。

後で部外者がどうのと言われるかもしれないが、商業ギルドは実績がものを言う。地球産の帳簿の付け方を見れば、文句は出ないだろうとの計算の上だ。

「ユゼリアは、書類の仕分けを手伝ってくれ。この前、兄さん達と王宮で手伝っただろう? それと同じだ」
「わ、分かった」

貴族の粛清は粗方済んだとはいえ、不正の証拠書類や領主がいなくなった各領地の帳簿など整理する必要があった。領地の状態を確認しながらも、実務の方も目を通す必要がある。

馬車でそれらの書類を運び出すため、移動に時間もかかる。そうして遅れて各地から大量に城に運び込まれてくる書類を整理する者が必要になり、ファスター王とリゼンフィアから相談された。そこで、提案したのが、ついでに子ども達に実戦経験を積ませること。

これにより、ユゼリア達が手伝うことになったのだ。次代を担う者達だ。無関係ではないし、これも経験だと言う事になった。

学園の生徒で、できそうな者を選び、ブラーナやリサーナ、学年一位の成績優秀者達など、性別問わずに経験させた。大人達に指導されながら、ユゼリアもそれを手伝っていたのだ。だから、何をやるべきかは分かる。寧ろ、ユゼリアは勉強はそれほど得意ではないが、こうしたことは難なくやれていたため、自信もついていた。

「どこにどう集めるか指示をもらえるだろうか」

その指示が欲しいとフィルズを見るユゼリア。それを受けて、フィルズはハウトラに呼びかける。

「ギルド長! 良い加減正気に戻って、また教会に行くのか、ここで書類をまとめるのか決めろ!」

燃え尽きたような様子で呆然と座っていたハウトラは、ビクリと体を震わせた。

「っ、す、すぐに書類をまとめます! あ、ああ、そっちには帳簿類を集めて、こっちには取引の書類を。ここには、手紙類を!」

すぐにそれぞれやるべき事を確定し、作業に入る。フィルズは、手紙を確認していく。取引と関係あるものは、どの取引とのものかを特定して番号とメモを付ける。

セルジュとカリュエルの方も、最初は職員達が不安そうに張り付いて見ていたが、十分もすれば完全に任せようと判断が付いたらしく、二人の補佐に数人が付いているだけになった。

「ここ、やっぱり合わない」
「こっちも差額が結構出ている。どこに行った?」
「あっ、その数字! お待ちください。確か先ほど……っ」
「こちらの金額だと……予想されるのはコレとコレです。日付……っ、はない……ない? なら品物は……」

そうして関連の取り引きも見つかり、それにナンバーを振ってメモしていく。

フィルズも手紙関係をチェックしながら、問題がありそうなものは種類ごとで分けておく。その合間に、商品の売り込みも兼ねて職員達のサポートもしていた。

「気になるのは、この付箋を付けて置いておくといい」
「っ、これはっ、なるほど! 便利です!」
「あらかたまとまったら、このファイルに閉じてくれ」
「ふぁっ!? これは、束が崩れませんねっ。製本した本のように見れる! 助かります!」

さすがは商業ギルドの職員。用途を説明すれば、すぐに納得して使いこなす。まだまだ地方にはセイスフィア商会の商品は届かないようだ。

そんな忙しない執務室に、職員が申し訳なさそうにやって来て声をかける。

「あのっ。ギルド長! 問題のあった者達ですけど、衛兵に任せるのはよくないのですよね……?」
「そうだな……領主と繋がりが……」

ハウトラはすぐに手元の書類に目を落とす。繋がりが明らかなのだ。それも代理をしていた者は、親戚筋の者。すぐに解放されかねない。

「ですよね……今、衛兵は外にというか、追い出してるんですけど……どうすれば……ぎ、ギルド長を出せとか言ってますし……」

キラ達が、追い払ってくれているはずだが、不安にはなるだろう。少し意識を集中すれば建物の外から聞こえる怒鳴り声が分かる。

『証拠もなく拘束するなど、許されんぞっ!』

とても偉そうだ。

「ううっ。あの衛兵……副ギルド長と仲が良いから……っ」
「めちゃくちゃ繋がってんじゃん」

ここで、カリュエルが口を挟む。

「フィル。なんなら、私が対応しようか? というか、父上から一筆もらっていたりしないのかい?」
「何か問題があれば、一任するってやつ? 一応もらってるけど……ここでやるのは違くね?」
「「確かに」」

セルジュもカリュエルと共に納得の声を上げる。そこで、ユゼリアが遠慮がちに確認する。

「どのみち、牢屋にいれるんだよね? けど、ここにはないんだっけ? なら、教会に頼んではどうかな?」
「教会か……聖騎士に頼めれば……」
「そういえば、聖騎士には、領兵も私兵も手が出せないんだって、リュブランから聞いたことが……」

セルジュが思い出しながらそう告げる。

「ああ。犯罪者とはいえ、あそこは保護の形を取るしな。地下牢は一応あるらしいが……そうだな……教会に……」

頼もうと口にしようとした時。部屋にファリマスがやって来た。

「フィル。それ、私に任せな」
「へ?」

どこから聞いていたのか、ファリマスはニヤリと笑った。






**********
読んでくださりありがとうございます◎

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