趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

509 教会、安全っ!

いつの間にか、外から聞こえていた怒鳴り声も聞こえないことに気付く。これは確認が必要だろう。

「……ばあちゃん。外の兵士どうした?」
「ここの子達は元気だねえ。初めて木の剣を持たせた子どものようだったよ」
「……稽古でもつけてやったのか?」

晴れやかに笑うファリマス。きっと兵士達は遊んでと群がってくる子どもにしか思えなかったのだろう。ファリマスにとってみれば、怒鳴りつけてくるむさい男でも、構ってちゃんな可愛い坊やでしかない。そうして泣かされた男は数知れず。以降その男達は、気まずくて一切顔を見せないか、母親恋しい甘えた坊やになるかだ。

ファリマスを慕う男達の大半は『ママ』や『お母ちゃん』と呼びそうになっているらしい。

「男の子は元気だよねえ。はしゃぎ過ぎるから心配になるよ」
「……寝かしつけた?」
「ああ。今日は陽気も良くて、昼寝日和だよねえ」
「外に寝てる? あ、地面?」
「今の時期は、地面も温かいよ」

ここまで来れば、どうなったか、どうすべき者達だったかは理解できるというものだ。ユゼリアも察して、そっと窓の外を覗きに行っていた。

「そっか。それはよく寝られそうだな」
「だろう?」

ギルド職員達が、内容を頭で咀嚼そしゃくし、そっと窓から外を覗いてから、ふっと目を逸らしていた。誰もが無言で通す。

「で? ばあちゃんがあいつら教会まで連れて行ってくれるのか?」
「ああ。それは問題ないよ。それに、私は聖騎士の資格も持っているからね」
「……は?」

ファリマスがマジックバッグから出したのは、メダルのようなものだ。フィルズは、公爵領都の聖騎士に、それを見せてもらったことがあった。そこに、第一級と書いてあるのを見つけて唖然とする。

「第一級って……国家権力も通用しない階級って聞いたことが……」
「え……」

ユゼリアがこれに驚いているが、構わずファリマスとフィルズは会話を続ける。

「そうだよ? 仮に国王をぶっ飛ばしても、神の赦しが得られて、文句が言えないというやつだ。寧ろ、殴られたやつが悪いというな」

これにより、子ども達は誰のために取得した資格かが分かった。

「……それ、もしかして、じいちゃんのために……」
「そうさっ。もう何人の王族をぶっ飛ばして来たかわからないよ」
「……冗談じゃないとは思っていたが……なるほどな。それがあるから問題にならないのか……」

随分と遠慮なくやって来たという話を聞いている。凄いなと思うだけで終わっていたが、よくよく考えてみるとかなり無茶をしている。後始末とか面倒なことになるのが予想できた。しかし、聖騎士の、それも第一級となれば話は簡単だ。

『神のご意向です』といえば、ぶっ飛ばされても王族は文句が言えない。寧ろ、神に赦されないことをしたのだと言うことで、王族の籍を抜かれて然るべきというものだ。

「その第一級? の聖騎士って、凄いの?」

セルジュには聞き慣れない言葉だったのだろう。カリュエルも興味深々だ。ユゼリアはちょっと怯えている。

「聖騎士は分かるか?」
「うん。教会に居る騎士様だよね」
「ああ。冒険者と同じで階級があるんだ。三級以上は、聖女や聖人の専属護衛とかが多いな。アル姉も確か三級だ。きちんと神による選抜も受けるから、三級以上の聖騎士は信用していい」
「神様の信頼もある人ってこと?」
「ああ。だから、理不尽に誰かに襲われたりしたら、教会が一番安全だ。それこそ、国の力も跳ね除けられる。ウサギ達でさえ、敬意を払っているからな」
「「「えっ!?」」」

これには隠密ウサギを知るカリュエルとユゼリアも驚いていた。

「あの人ら、強いぜ? カザンとリューラの加護が特に強いんだろうな。ウサギ達のいい訓練相手らしい」
「あ、あのウサギさん達の……それって、本当に強いってことだね……」
「そんな風にはとても見えなかったが……」
「……っ」

セルジュとカリュエルは、公爵領都の教会に居る聖騎士達を思い出していた。ユゼリアは隠密ウサギのことを思っているのか顔色が悪い。

「めちゃくちゃいい人達にしか見えないもんな」
「「うん……」」

これには、この部屋にいる職員達も頷いていた。あまり聖騎士のことについてというか、教会の内部事情など外に出ることはない。興味深いと手を動かしながらも一同は聞いているようだ。もちろん、セルジュとカリュエル、フィルズも手や書類を読む目は動いている。衝撃を受けて手が止まっているのはユゼリアだけだ。

「公爵領の教会は神殿長がいるから、あそこの聖騎士は三級以上しかいない。何かあったら、頼りにするといいよ。カリュやユゼリアも、困ったことがあったら、教会を頼るのが一番だ。覚えておくといい」
「うん。けど、クルフィ達がいればそんな危機的な状況にはならないでしょう?」
「私も、トマを信頼している」
「まあな。けど、覚えておいて損はないよ。ユゼリア。聞いてるか?」
「う、うん、はい! 教会、安全っ!」
「そうだな。それでいい」

それだけ理解すれば充分だ。ユゼリアははっとした後、作業を再開した。

「で? ばあちゃん。他に何か問題は?」

ファリマスがわざわざここに来た理由があるのではないかと、フィルズは問いかける。すると、バッグから書類の束を取り出し、それをフィルズは受け取る。

「これは?」
「教会がまとめていた領民からの苦情だそうだ。個人的なものではなくて、商業ギルドだったり、冒険者ギルドだったり、領主へだったりするやつだ。一緒に送っておくれ。送れるんだろ?」

これに、フィルズはニヤリと笑った。

「なるほど。了解だ」
「ふふっ。それじゃあ、下の子達を連れて行くよ。ついでに寝ている子達もお家に帰しておくかねえ」
「うん。よろしく」
「フィル達も、あまり遅くならないようにね」
「「「は~い」」」

セルジュとカリュエルも揃って返事をしてファリマスを見送った。ユゼリアはコクコクと頭を縦に振って答えていた。

そこでハウトラは、フィルズが受け取った書類が気になったようだ。







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