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ミッション13
552 加護付けちゃお
第一部が終了して、感想を言い合い、話が止まらない者も多い。
しかし、演者達への花束を渡す抽選をしてこなくてはならないと、観客達は会場の外に出て行く。その流れにフィルズと神達も乗っていた。
ロビーでは、思い思いの場所に人が集まっている。物販の辺りが一番混雑しているようだ。
神達は、抽選に応募するらしく、登録の魔導具の方へと向かう。その間、思い出したようにリザフトがフィルズへと尋ねた。
「まだ役で出て来てない人たちもいるよね? それはどうするの?」
「ん? いないけど? ほら、二役してるんだよ」
そう言ってフィルズが指を差す先には、演者へのメッセージを投函するBOXが並んでおり、それぞれのBOXには役の写真が貼り出されている。
それをしばし確認したリザフト達は、唖然としていた。
「……本当だ……歌ってた……え? クーちゃんも?」
「上級生役してたりしたけど? 仲裁に入った生徒会長」
「……本当だ……ステキな子だなとは思ったけど……」
ロビーにあるメッセージカードを入れるBOXを前にして、そうして驚く者は多いようだ。そこここで『え!?』とか『確かにいた!』とか聞こえる。
「大体、主役になった母さんとか、抽選率ヤバいだろ。そういうヤバそうなのは一部で派手に動かない脇役や端役で出してる」
「うわ~……そこも作戦だったか……」
「まあな」
抽選が集中しそうな者は、一部では端役で出すようにしていた。しかし、多分、分かる者には分かるはずだ。
「変装が本当にすごいね……」
「半分本職みたいな所あるから」
「なるほど」
普通に誰だか分からない。顔が売れているクラルスでさえ、分からないのだから相当だ。
「えっ!? ちょっ! リーリルちゃんもいたの!? あっ! 木の上で笛吹いていた学園生!?」
恵みの女神マルトが、BOXの写真を見て大興奮していた。
「あ~、な。ばあちゃんも騎士役やってたぜ?」
「もう一回! もう一回観ないと! 確認したい!」
「じゃあ、またチケット買ってね?」
「悪魔! 悪魔の子だ! 僕らの子が化けた!」
可愛くよろしくと言えば、裏切られたとリザフト達は大袈裟に騒いだ。まあ、半分くらい冗談だ。
しかし、この『二回観ないと』や、また見逃したから三回目と、中々に魅力的な舞台になっている。
「観る場所によっても違うから、何度来ても飽きなさそうだろ?」
「ヤバいね! すごいわ商売人!」
「ありがとう?」
一応褒められたようだ。
抽選の受付は、それなりに並んではいるが、混乱はなさそうだ。
「受付もスムーズに行ってるな。やっぱ六台ずつ用意して正解。大変だったけど」
係員達はメガホンを持って案内している。
『受付の順番で有利になるということもございません。操作は一分もかかりませんので、慌てずにお並びください。十分お時間はございます』
「私も行ってくるわ!」
リューラが並ぶと、神達全員が並んでいた。ふと視線を端の方に移すと、そこではメッセージカードを立ったまま書ける背の高い机で、リゼンフィアが真剣にカードを書いている姿があった。セルジュやエルセリア、ミリアリアが和やかな雰囲気で書いているのに対して、少し鬼気迫ったように見えるのは気のせいだろうか。間違いなく、クラルスへのメッセージを書いているはずだ。
「……ガチのファンにしか見えんよな……」
いまいち夫婦らしくならないのはなぜなのか。しかし、息子であるフィルズがこれ以上手を出すのもおかしな話だ。頑張ってもらいたい。
戻って来たリザフトがフィルズの視線の先を見る。
「なに? ああ、父親ね」
「母さんがとっくの昔に離婚届を処分してるって知らないんだな~と思うと哀れで」
「教えてないの?」
「いつ確認取ってくるか楽しんでる所あって」
「賭けてる?」
「うん。俺はあと一年。母さんは五年は先じゃないかって笑ってた」
「このままの状態を後五年……可哀想だよ……加護付けちゃお」
リザフトがとんでもないことを言った。
「何してんの……」
「いやあ、頑張ってるの知ってるし。努力は報われてほしいからねっ」
「優しい神様だなあ」
「いやいや。努力とかしてないと意味ないから。結局は本人次第なところが大きいんだよ」
「あ~、まあでも、神様が認めるくらい努力したって事だな」
「そうそう。本人がいくら努力したって思っていても、足りない事の方が多いから」
「納得」
結果が伴わなかった時、努力が足りなかったんだと納得出来る者は少ない。努力が報われなかったと悔しがる者の方が多いはずだ。
「神頼みって、十分努力した人がすべきなんだろうな。事故や思わぬ不運で結果が出ないなんてことにならないように、本当に努力が報われるように」
「そういうこと。全然努力もしてないのに頼まれてもねえ」
神の方も迷惑だろう。
「あの子は大丈夫。よく頑張ってるよ」
「父親の努力が認められてるって息子が聞くのはなんか……どう反応すべき?」
「あはは。そろそろ、お父さんって呼んであげたら?」
「っ……その内な」
「あはは」
ちょっと照れ臭くなっているというのが、本音だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
しかし、演者達への花束を渡す抽選をしてこなくてはならないと、観客達は会場の外に出て行く。その流れにフィルズと神達も乗っていた。
ロビーでは、思い思いの場所に人が集まっている。物販の辺りが一番混雑しているようだ。
神達は、抽選に応募するらしく、登録の魔導具の方へと向かう。その間、思い出したようにリザフトがフィルズへと尋ねた。
「まだ役で出て来てない人たちもいるよね? それはどうするの?」
「ん? いないけど? ほら、二役してるんだよ」
そう言ってフィルズが指を差す先には、演者へのメッセージを投函するBOXが並んでおり、それぞれのBOXには役の写真が貼り出されている。
それをしばし確認したリザフト達は、唖然としていた。
「……本当だ……歌ってた……え? クーちゃんも?」
「上級生役してたりしたけど? 仲裁に入った生徒会長」
「……本当だ……ステキな子だなとは思ったけど……」
ロビーにあるメッセージカードを入れるBOXを前にして、そうして驚く者は多いようだ。そこここで『え!?』とか『確かにいた!』とか聞こえる。
「大体、主役になった母さんとか、抽選率ヤバいだろ。そういうヤバそうなのは一部で派手に動かない脇役や端役で出してる」
「うわ~……そこも作戦だったか……」
「まあな」
抽選が集中しそうな者は、一部では端役で出すようにしていた。しかし、多分、分かる者には分かるはずだ。
「変装が本当にすごいね……」
「半分本職みたいな所あるから」
「なるほど」
普通に誰だか分からない。顔が売れているクラルスでさえ、分からないのだから相当だ。
「えっ!? ちょっ! リーリルちゃんもいたの!? あっ! 木の上で笛吹いていた学園生!?」
恵みの女神マルトが、BOXの写真を見て大興奮していた。
「あ~、な。ばあちゃんも騎士役やってたぜ?」
「もう一回! もう一回観ないと! 確認したい!」
「じゃあ、またチケット買ってね?」
「悪魔! 悪魔の子だ! 僕らの子が化けた!」
可愛くよろしくと言えば、裏切られたとリザフト達は大袈裟に騒いだ。まあ、半分くらい冗談だ。
しかし、この『二回観ないと』や、また見逃したから三回目と、中々に魅力的な舞台になっている。
「観る場所によっても違うから、何度来ても飽きなさそうだろ?」
「ヤバいね! すごいわ商売人!」
「ありがとう?」
一応褒められたようだ。
抽選の受付は、それなりに並んではいるが、混乱はなさそうだ。
「受付もスムーズに行ってるな。やっぱ六台ずつ用意して正解。大変だったけど」
係員達はメガホンを持って案内している。
『受付の順番で有利になるということもございません。操作は一分もかかりませんので、慌てずにお並びください。十分お時間はございます』
「私も行ってくるわ!」
リューラが並ぶと、神達全員が並んでいた。ふと視線を端の方に移すと、そこではメッセージカードを立ったまま書ける背の高い机で、リゼンフィアが真剣にカードを書いている姿があった。セルジュやエルセリア、ミリアリアが和やかな雰囲気で書いているのに対して、少し鬼気迫ったように見えるのは気のせいだろうか。間違いなく、クラルスへのメッセージを書いているはずだ。
「……ガチのファンにしか見えんよな……」
いまいち夫婦らしくならないのはなぜなのか。しかし、息子であるフィルズがこれ以上手を出すのもおかしな話だ。頑張ってもらいたい。
戻って来たリザフトがフィルズの視線の先を見る。
「なに? ああ、父親ね」
「母さんがとっくの昔に離婚届を処分してるって知らないんだな~と思うと哀れで」
「教えてないの?」
「いつ確認取ってくるか楽しんでる所あって」
「賭けてる?」
「うん。俺はあと一年。母さんは五年は先じゃないかって笑ってた」
「このままの状態を後五年……可哀想だよ……加護付けちゃお」
リザフトがとんでもないことを言った。
「何してんの……」
「いやあ、頑張ってるの知ってるし。努力は報われてほしいからねっ」
「優しい神様だなあ」
「いやいや。努力とかしてないと意味ないから。結局は本人次第なところが大きいんだよ」
「あ~、まあでも、神様が認めるくらい努力したって事だな」
「そうそう。本人がいくら努力したって思っていても、足りない事の方が多いから」
「納得」
結果が伴わなかった時、努力が足りなかったんだと納得出来る者は少ない。努力が報われなかったと悔しがる者の方が多いはずだ。
「神頼みって、十分努力した人がすべきなんだろうな。事故や思わぬ不運で結果が出ないなんてことにならないように、本当に努力が報われるように」
「そういうこと。全然努力もしてないのに頼まれてもねえ」
神の方も迷惑だろう。
「あの子は大丈夫。よく頑張ってるよ」
「父親の努力が認められてるって息子が聞くのはなんか……どう反応すべき?」
「あはは。そろそろ、お父さんって呼んであげたら?」
「っ……その内な」
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ちょっと照れ臭くなっているというのが、本音だった。
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