趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション13

563 賢者のために

レヴィリアが王妃となったガーネルの端。廃村となっていたその場所で、その者達は集まっていた。

「このガーネルにいた商隊が二つ。消息を絶っていると報告が……」
「……政権は変わったのだろう?」
「はい……ですが、新しい王には、流民がついていたと」
「それだけじゃないです! カルヴィアの王妹が、王妃になったって!」
「っ、あの、わがまま王女が!?」

定例の集まりは、そうした大きな声が飛び交う中進められていた。

「そろそろ教会にも思い知らせてやりましょう。神のかつての行いは間違っていたのだと、世界に知らしめるべきです!」
「賢者の子孫や生まれ変わりである私たちは、それを伝える義務があります。過ちを繰り返さないために必要なことです!」

彼らにとって全ては正義なのだ。そう思うからこそ、何世代もその意志が引き継がれてきた。信じて疑うことはない。

「あの……最近、いくつかの商業ギルドが正常化され、全ての商業ギルドに監査が入ると噂が……」
「人々の不満が溜まっていたはずなんだがな……」
「貴族共を大人しくさせてから商業ギルドの方は手を出す予定でしたが……」
「何百年とかけた計画が狂い始めている……」
「はい……先ずは王侯貴族。そして、商業ギルド、その後に教会でしたが……」
「腐った貴族なんて、処分してもすぐにまた出てくるもんねえ」
「我らの復讐は……」
「「「……」」」

いつその思いは遂げられるのか。彼らもわからなくなり始めていた。

「とりあえず、最大の障害となる、あの商会を調べに行きましょう。敵を知ることは大事です」
「聞くところによると、商会長は賢者を名乗っているとか」
「っ、王族とも交流を持っているんだろう!?」
「商業ギルドの女傑、ミラナにも可愛がられていると」
「なんてことだ!」
「仮にも賢者を名乗る者が……許されることではない!」

迷走しかけていた彼らは、今一度同じ目的を持った。

「セイスフィア商会……潰さねばならんな」
「賢者のために」
「「「賢者のために」」」
「……」

集会が終わると、そのメンバーの一人はガーネルの王都に駆けた。何も不思議なことではなく、彼の拠点は王都にあると仲間達も知っている。

そうして辿り着いたのは、賑わいを取り戻しはじめた酒場だ。

その奥へと進み、更に地下へと下りる。

地下道を通って出たのは、王宮の中だった。

迷わず王宮内を進み、騎士達に通行証を見せながら、磨き上げたらしい豪華な扉の前に辿り着く。

「失礼しま~す」

軽い声をかけて扉を開く。そこは、王の執務室だ。しかし、今は文官も少ないため、大きな部屋一つで、事務所のように多くの人を詰めている。

「うわ、やばっ。ちょっとは整理しましょうよ~」
「え、うわ~……気付かなかった……」
「これは……どうしよう……」

机に向かって黙々と作業をしていた文官達が、その声で正気付く。

「あんたら……優秀過ぎる人も問題っスね……レヴィ様~。これ補佐官も要るっスわ」

一番奥、そこに、レヴィリアとエイルエインが仲良く机を並べて仕事をしていた。

「どこにそんな人がいるのよ。そんなの転がってたら拾って来てちょうだい!」
「ウチに言ってます? ただの派遣社員に無茶言うっスわ……」

そう言いながらも、斜めがけしていたバッグからセイスフィア商会の商品であるファイルなどを取り出す。

因みに、見た目も仕草も男に見せているが、女性である。

「これ使えば良いんすよ。ってか、会長にお願いしたら良いじゃないっスか」
「あっちも手が足りてないって聞いたのよ。これ以上、迷惑をかけられないわ。それより、潜入捜査はどうだったの? バレなかった?」

彼女の今回の仕事は、賢者の子孫や生まれ変わりだと言って暗躍している組織に潜入すること。

男として潜入しているのだが、それもバレてはいないらしい。

「余裕っスわ。仮にもリーリル様に合格もらってるウチが! 失敗するはずないでしょ」
「確かに……そんなことになれば、リーリル様が悲しまれるわ……っ、無理よ。あの方が悲しむなんてっ」
「ウチも無理っスわ……大量に恨みも買いそう……っ、恐ろしい! 命賭けて仕事してるって自覚します!」

二人で震え上がる。リーリルのファンは、ここ最近まだまだ増え続けている。リーリルに悲しい顔をさせただけで睨まれるのは必至だ。

「ちょっと、あなた達! 先に一度片付けるわよ!」
「「「「「はい!」」」」」

報告を聞きながらでも全員でやった方が早いと、整理を始めた。







**********
読んでくださりありがとうございます◎






感想 2,875

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みんなの感想(2875件)

sirotan3131
2026.04.10 sirotan3131

『賢者のために!』な人達より
『リーリル様のために!』な方達の方が
強そうだな~w

2026.04.10 紫南

感想ありがとうございます◎

強そうですよね!

読んでくださりありがとうございます◎

解除
玲羅
2026.04.10 玲羅

「賢者のために」って、ほとんど洗脳状態ですね。というか、商業ギルドの腐敗って自然発生的なものじゃなかったの?
敵を知ることはたしかに大切ですよ。でもねぇ、相手はフィルズなのよね。神様達も大量にバックについているし、流民の皆さんも付いている。
というか、フィルズって賢者を名乗っていましたっけ?

2026.04.10 紫南

感想ありがとうございます◎

勝手に決めつけて盛り上がってるみたいですね。

読んでくださりありがとうございます◎

解除
しふぉん
2026.04.10 しふぉん

その内にフィル信者の一部(?)が暴走して爆弾とかヤベーもんを作ってバカ共に制裁(死ぬ威力でなく大怪我を負う程度)を与えるために暴走しそうなイメージが思い浮かぶ……

しかし商業ギルドの腐敗などの原因がコイツらだったとは……腐敗が全体に行き渡るように何百年も掛けるとか暇人の集団?○ート軍団の呼び方が正しい。コイツらが居なくてもその内腐敗もしただろうし貴族社会が崩壊したかも知れないのにご苦労様w
万全の準備をしてもフィルには敵わないんだろうなぁ…やること為すこと全てがフィルの掌の上でまな板の鯉状態で何もできないまま捕まる未来しか見れない

2026.04.10 紫南

感想ありがとうございます◎

気の長い計画だったみたいですね。
ここで終了ですね(笑)

読んでくださりありがとうございます◎

解除

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