趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション13

564 天職に出会いました!

レヴィリアはふと手を止めて女性を見る。

「そういえばあなた、騎士になるんじゃなかったの? 女性騎士も採用されるようになったのに。聞いた話だと、騎士を辞めて派遣社員になった者も多いらしいじゃない。あなたの兄とか」
「それはそうですよ! こっちの方が断然、待遇もいいですしっ。商会で学んで、王宮に教えに行くのも、ある程度身分を証明できる人がいいですからね。そっちを見込んで、特に兄も辞める時に反対されなかったとか。まあ、同僚にすっげえ羨ましがられたって言ってたっスけどね~」
「それはそうでしょうね……」

闘い方など、本格的に学んだ教官や警備員の派遣社員として、騎士を辞めてセイスフィア商会に就職する者が増えていた。

「というか、あなた、騎士になりたかったのよね? 学生の時、ずっとそう言って私に女性騎士の採用を打診していたじゃない。煩いくらいに毎日」

レヴィリアと彼女は、学園で出会っていた。レヴィリアより二つ下だった彼女は、先輩でも臆することなく向かってくる後輩だった。親しく喋ることができるほどに、毎日のように顔を合わせた。

「ええ。まあ」
「私の方の記憶に間違いがなければ、あなた……今のこれ、諜報員よね?」
「ええ。まあっ。天職に出会いました!」

晴れやか笑顔だ。

「正道から裏側に行ってどうするのよ。夢はどこに行ったの!」
「夢は夢っスよ。時に現実に負ける儚いものですわ」
「……あなたが良いならいいけれど……片や騎士を辞めたお兄さん。そしてあなたが諜報員……長く続いた騎士の家系が泣くわね……上にもう一人お兄様がいて良かったわ……」
「え? 普通に父親には勘当されましたけど?」
「……かんどう……勘当!? 追い出されてるじゃないの!」
「頑固じじいは、しょーもねえっスよねっ。泣いて戻って来いって言っても帰らないっス」
「何してるのよ……」

親との反発はあり得たことだ。特に貴族家の子息が、決められた道ではなく、別の道を選ぶことは、本来あり得ない。

「けど~、ウチがリーリル様の弟子で、兄がファリマス様の弟子って知って、じじいが泣いたらしいっスけどね! ざまあ~」
「……リーリル様にも?」
「うっス。一目惚れしたって」
「……お父様が?」
「母もっス。夫婦になってはじめて両思いになれたって言ってたっスよ?」
「両思いって、そう言う意味じゃないわよね? え? リーリル様を挟んで?」

この間、ちゃんと二人も部屋の片付けをしている。そして、ふと思い出したようにレヴィリアへ問いかけられる。

「そういえば、一目惚れって言えば、ヴィランズさんに一目惚れしたって本当っスか?」
「っ!? ど、どうしてそれを!?」
「一目惚れ……?」
「エインっ。ち、違うのよ!?」

王となったエイルエインが、思わず顔を上げた。それにレヴィリアは焦って否定する。

「違うんスか?」
「ううっ……だって、あの頃は友人とも交流していなかったし、リゼン達に冷たくあしらわれた後だったものだから……っ」

真っ赤になってそう早口で告げるレヴィリア。

「ついコロっと行ってしまったと?」
「悪かったわねっ。だからエイン、安心して。今はエインだけだから」
「うん。ありがとう」
「っ、も、もう。恥ずかしいわっ」

照れるレヴィリアを、エイルエインは微笑ましげに見る。

「はいはい。お熱いっスねえ。寧ろ、一目惚れとかする方がびっくりっスわ」
「うっ。自分でもアレはないって今なら思うわっ。頭の足りない女みたいで恥ずかしいのよっ。それをフィルさんに見られたとか……っ、忘れて欲しいわっ」
「え? ヴィランズさんにじゃなく、会長に?」
「そうだけど?」
「そうですか……じゃあ、ヴィランズさんのことは……」
「何とも思ってないわよ!」

エイルエインに伝えるようにということもあるが、しっかりと否定した。

一方、ヴィランズのことを確認した女性は、うんうんと頷いた。

「なら、狙ってもいいっスよね!」
「……え……まさか、あなた……」
「憧れの人なんスよ。じじいは片腕も失って、左遷されたようなやつとか言って、求婚するのは絶対許さなかったですけど、今はもう家なんて関係ないんで!」
「……そ、そう……本当に戻る気ないのね……応援してるわ……」
「うっス! ヴィランズさんは、女らしい女は苦手とかウサギ師匠に聞いたんで、いける気がします!」
「そうね。女らしくないものね……」
「いやあ~。運命っスかね?」
「……そうね……」

レヴィリアが微妙な顔になったのは仕方がない。

そこで、エイルエインが苦笑しながら問いかける。

「それで? 集会の内容は? まだ何かやりそうかな」

これが本題だ。

「この国にはないっスね。総出で移動するっぽいです。予定通り、会長に喧嘩を売るために。潰すとか言ってましたよっ。あははっ」
「あなた……よく笑わずにいられたわね……」
「あははっ。いやあ、真面目な顔してるのが大変でしたよ~」

腹を抱えて笑いそうだった。セイスフィア商会の身内ならば、アホかと呆れるものだろう。

「ですが……生まれ変わりは、ちょっと信じられませんが、賢者の子孫ですか……」
「あ、そこ、調べたところ、子孫もいなかったみたいっスよ」
「……え?」
「は? けど、子孫だから復讐をって……え? 子孫じゃない?」
「みたいっスねえ。ジュエルさん調べっス。確かっスよ。いやあ、もうあれは、洗脳レベルっスよね」
「……潰されても文句は言えないわね」
「あちらがだね。うん。同情の余地もなさそうだ。我が国から出て行ってくれて、潰されに行くとは……なんとも、ご苦労なことですね」
「そうね……もういいわね。自業自得ってやつだわ」

そう結論付け、レヴィリアとエイルエインはため息をついた。

「そんな者達に国を潰されかけたとは……」
「エイン。フィルさんに頼んでおく? 一発殴らせてもらえるわよ」
「……それよりも、賠償金は取れないかな?」
「っ……頼んでおくわ」

その方がはっきり言って、ただ殴る権利をもらうよりも有り難い。

「あいつら、教会にも喧嘩売るつもりみたいっスよ~」
「……はあ……大聖女様や大聖者様も集まってる今?」
「待ち構えてますよね~。いやあ、最大に事故る予感っ」
「笑い事じゃないわよ……喧嘩にさえならないわ……」
「……顔だけでも見せてもらえるように頼んでおいてくれるかい?」
「了解っス! それじゃあ、ウチはこの辺で!」

そう言って、女性は姿を消した。

「あの子……本当に天職なのね……」
「元気な子だよね。裏の仕事をするようには見えないよ……」
「そこが逆にいいのかも」
「なるほど。本当に優秀なものが集まってるんだね」
「そこに喧嘩売りに行くとか……高く買われちゃうのね」
「大変だね……」

そんな感想を溢しながら、呆気ない最期を迎えそうな組織を想った。





**********
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