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512 これも計画の内です
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2016. 10. 24
**********
エルヴァストは、仲良く手を繋ぎ、子ども達の後をついていく二人を険しい表情で見ていた。
「なぁ、ティア。あの二人が本当にイルーシュとカイラントなのか? どう見ても……双子にしか見えないんだが……」
そう、エルヴァストは当然、他の事情を知らない貴族や民達同様に、イルーシュとカイラントは一つ違いの弟達だと思っていたのだ。
しかし、どう見ても双子にしか見えなかった。
「双子だよ。二人とも六歳だって。王家に双子が生まれると、不吉だとか、禍を呼ぶとか言われるって知ってる?」
「あ、あぁ……聞いた事がある……だが、ならば……」
「その辺の事情のせいで、あの子達を双子って公表出来なかったんだ。因みに、見て分かるように、病弱ってのも嘘だから」
「……みたいだな……」
身体能力の高いクィーグの子ども達に付き合えるというだけで、もう元気なと形容するのも生温い状態だと分かる。
エルヴァスト達でさえも、何度体力の限界を思い知らされたかしれない。それは、マティが沢山いるようなと、かつて言い表した時があったほどだ。
双子の事は、また改めて話すと約束し、ティアは確認する。
「それで、二人ともちゃんと受かったんだ?」
「それはもう、問題なく、な」
「お兄様も?」
「あぁ。お祖父様に自慢できそうだ」
「そっか。お祖父様なら闘技場にいるから、報告して来て、激励になるから」
「お祖父様が?」
ティアが指さした先には、広い訓練場となる立派な闘技場がある。そこになぜサルバにいるはずのゼノスバートがいるのかと不思議に思うのも無理はない。
「お兄様がAランクの認定試験を受けるって知って、自分もって思ったみたい。もう半月前くらいからファル兄にべったりだよ。それでゲイルパパもついてるの」
「親父も?」
ゲイルも居ると聞いて、ルクスも驚いたようだ。だが、ほとんど隠居の身とはいえ、ゲイルはゼノスバートの護衛なのだから、おかしな事ではない。
「なら、皆で挨拶にいこう。師匠も、ファル先生に会いたいでしょう」
「あ、あぁ……そうだな」
「二人はいつまでここに居られるの?」
エルヴァストもベリアローズも、最近は長く外出した事がなかった。この際、羽を伸ばしてはどうかと提案しはしたが、いつまで滞在できるかは聞いていなかったのだ。
「ユフィアには、二週間と言ってあるが……」
「私は後二日だ。ビアンに伝言は頼んだから、問題はないはずだ」
ベリアローズは、移動の事も考えて言ったのだろうが、結局はマティで送るので、残り一週間ほどはのんびりできるようだ。ただし、ユフィアに早く会いたいと思い、早めに帰る可能性は大いにある。
対してエルヴァストは、試験を受ける事が心配で近くに滞在していたビアンと試験後に落ち合い、後二日で帰ると王に伝えてもらったらしい。
仕事は溜まるだろうが、前倒しでかなり試験前にこなしていたので、余裕はあるはずとの計算だ。
「ならその間、時間ができたら、なるべくイル君とカイ君に構ってやって」
「分かった。ただ、ちゃんと事情は聞かせてくれよ?」
「もちろん。それと、身内として色々知ってもらわないといけないからね」
「なんだか怖いな……」
わざわざこう言うということは、何かがあると察しているのだろう。間違ってはいない。
「ところで……サルバのギルドで聞かれたんだが、三バカさん達がどこにいるか知らないか?」
突然、そんな質問をするベリアローズ。不意に思い出したという感じだ。
「あの三人なら、騎士学校で指導教員をしてるよ」
「え……騎士学校で?」
ベリアローズが不審に思うのも無理はない。騎士学校の卒業生とはいえ、冒険者になった三人が指導教員として入れるだろうかと思ったのだろう。
しかし、ティアが説明するより先にこれにピンときたのはエルヴァストだった。
「もしかして、騎士団の強化要員を育成しようとしている……とか?」
「そういう事~」
「どういう事だ?」
ベリアローズはまだ知る由もない。後半月もすれば、騎士と冒険者との対抗戦が開かれる予定なのだ。
「もうすぐ公式発表される王都で開催する武闘大会があるんだけどね。それで使えない甘ちゃん達を振るいにかけようって事になって、自信喪失で辞める奴らが出るから、その穴埋め要員を三バカちゃん達とキルシュのお兄さんに鍛えてもらってるんだ」
「……なんて事を……」
「信じられない……」
エルヴァストとベリアローズは、得意気に説明したティアに、頭を抱える。
ティアの息の掛かった三バカ達と、今や紅翼の騎士団の一員となったケイギル。そんなメンバーが教員なのだ。紅翼までとはいかなくても、それに近いものに進化してしまう可能性がある。
「ティア、その武闘大会はティアが提案したんじゃ……」
「そうだよ?」
さすがはルクスだ。よく分かっている。そして、これも理解出来たらしい。
「まさか今回、二人にAランク認定試験を受けさせたのは……」
「あ、分かった? そう、対抗戦に出る冒険者はAランクって事にしたの。これでこっちのメンバーも揃ったよ」
「「え……」」
「エル兄様も、その時は騎士達をボッコボコにしてね」
「おいっ」
しかし、そんな楽しいイベントの前に、再び学園生活が始まるのだ。
**********
舞台裏のお話。
ユフィア「はぁ……ベル様は今頃どうされているでしょう……」
アリシア「そうですねぇ。そろそろ試験が終わられる頃です」
ベティ「終わりましたら、ティア様へ報告するためにディムースへ行かれるとか」
ユフィア「ええ。そこで少し、ゆっくりされるのですよね……」
アリシア「心配など無用ですよ。ベル様がユフィア様を思わない日はないでしょう」
ユフィア「っ、そ、そうかしらっ……で、でも、あちらにはお強い女の方とかいらっしゃるし……」
ベティ「浮気の心配ですか?」
ユフィア「し、失礼よねっ? でも……ベル様は素敵で……やっぱりティアさんのような強い女性が気になるのではと……」
アリシア「分からなくはありませんが、あり得ませんよ。別の意味で気になるかもしれませんが……それにまず……」
アリ・ベ「「ティア様が許されません」」
ユフィア「……そうよね……なんだか安心したわっ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
不安になるのも仕方がないです。
ラブラブですから。
子ども達の事はどうにかなりそうです。
そろそろ新学期。
その後には武闘大会が待っています。
では次回、一日空けて26日です。
よろしくお願いします◎
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エルヴァストは、仲良く手を繋ぎ、子ども達の後をついていく二人を険しい表情で見ていた。
「なぁ、ティア。あの二人が本当にイルーシュとカイラントなのか? どう見ても……双子にしか見えないんだが……」
そう、エルヴァストは当然、他の事情を知らない貴族や民達同様に、イルーシュとカイラントは一つ違いの弟達だと思っていたのだ。
しかし、どう見ても双子にしか見えなかった。
「双子だよ。二人とも六歳だって。王家に双子が生まれると、不吉だとか、禍を呼ぶとか言われるって知ってる?」
「あ、あぁ……聞いた事がある……だが、ならば……」
「その辺の事情のせいで、あの子達を双子って公表出来なかったんだ。因みに、見て分かるように、病弱ってのも嘘だから」
「……みたいだな……」
身体能力の高いクィーグの子ども達に付き合えるというだけで、もう元気なと形容するのも生温い状態だと分かる。
エルヴァスト達でさえも、何度体力の限界を思い知らされたかしれない。それは、マティが沢山いるようなと、かつて言い表した時があったほどだ。
双子の事は、また改めて話すと約束し、ティアは確認する。
「それで、二人ともちゃんと受かったんだ?」
「それはもう、問題なく、な」
「お兄様も?」
「あぁ。お祖父様に自慢できそうだ」
「そっか。お祖父様なら闘技場にいるから、報告して来て、激励になるから」
「お祖父様が?」
ティアが指さした先には、広い訓練場となる立派な闘技場がある。そこになぜサルバにいるはずのゼノスバートがいるのかと不思議に思うのも無理はない。
「お兄様がAランクの認定試験を受けるって知って、自分もって思ったみたい。もう半月前くらいからファル兄にべったりだよ。それでゲイルパパもついてるの」
「親父も?」
ゲイルも居ると聞いて、ルクスも驚いたようだ。だが、ほとんど隠居の身とはいえ、ゲイルはゼノスバートの護衛なのだから、おかしな事ではない。
「なら、皆で挨拶にいこう。師匠も、ファル先生に会いたいでしょう」
「あ、あぁ……そうだな」
「二人はいつまでここに居られるの?」
エルヴァストもベリアローズも、最近は長く外出した事がなかった。この際、羽を伸ばしてはどうかと提案しはしたが、いつまで滞在できるかは聞いていなかったのだ。
「ユフィアには、二週間と言ってあるが……」
「私は後二日だ。ビアンに伝言は頼んだから、問題はないはずだ」
ベリアローズは、移動の事も考えて言ったのだろうが、結局はマティで送るので、残り一週間ほどはのんびりできるようだ。ただし、ユフィアに早く会いたいと思い、早めに帰る可能性は大いにある。
対してエルヴァストは、試験を受ける事が心配で近くに滞在していたビアンと試験後に落ち合い、後二日で帰ると王に伝えてもらったらしい。
仕事は溜まるだろうが、前倒しでかなり試験前にこなしていたので、余裕はあるはずとの計算だ。
「ならその間、時間ができたら、なるべくイル君とカイ君に構ってやって」
「分かった。ただ、ちゃんと事情は聞かせてくれよ?」
「もちろん。それと、身内として色々知ってもらわないといけないからね」
「なんだか怖いな……」
わざわざこう言うということは、何かがあると察しているのだろう。間違ってはいない。
「ところで……サルバのギルドで聞かれたんだが、三バカさん達がどこにいるか知らないか?」
突然、そんな質問をするベリアローズ。不意に思い出したという感じだ。
「あの三人なら、騎士学校で指導教員をしてるよ」
「え……騎士学校で?」
ベリアローズが不審に思うのも無理はない。騎士学校の卒業生とはいえ、冒険者になった三人が指導教員として入れるだろうかと思ったのだろう。
しかし、ティアが説明するより先にこれにピンときたのはエルヴァストだった。
「もしかして、騎士団の強化要員を育成しようとしている……とか?」
「そういう事~」
「どういう事だ?」
ベリアローズはまだ知る由もない。後半月もすれば、騎士と冒険者との対抗戦が開かれる予定なのだ。
「もうすぐ公式発表される王都で開催する武闘大会があるんだけどね。それで使えない甘ちゃん達を振るいにかけようって事になって、自信喪失で辞める奴らが出るから、その穴埋め要員を三バカちゃん達とキルシュのお兄さんに鍛えてもらってるんだ」
「……なんて事を……」
「信じられない……」
エルヴァストとベリアローズは、得意気に説明したティアに、頭を抱える。
ティアの息の掛かった三バカ達と、今や紅翼の騎士団の一員となったケイギル。そんなメンバーが教員なのだ。紅翼までとはいかなくても、それに近いものに進化してしまう可能性がある。
「ティア、その武闘大会はティアが提案したんじゃ……」
「そうだよ?」
さすがはルクスだ。よく分かっている。そして、これも理解出来たらしい。
「まさか今回、二人にAランク認定試験を受けさせたのは……」
「あ、分かった? そう、対抗戦に出る冒険者はAランクって事にしたの。これでこっちのメンバーも揃ったよ」
「「え……」」
「エル兄様も、その時は騎士達をボッコボコにしてね」
「おいっ」
しかし、そんな楽しいイベントの前に、再び学園生活が始まるのだ。
**********
舞台裏のお話。
ユフィア「はぁ……ベル様は今頃どうされているでしょう……」
アリシア「そうですねぇ。そろそろ試験が終わられる頃です」
ベティ「終わりましたら、ティア様へ報告するためにディムースへ行かれるとか」
ユフィア「ええ。そこで少し、ゆっくりされるのですよね……」
アリシア「心配など無用ですよ。ベル様がユフィア様を思わない日はないでしょう」
ユフィア「っ、そ、そうかしらっ……で、でも、あちらにはお強い女の方とかいらっしゃるし……」
ベティ「浮気の心配ですか?」
ユフィア「し、失礼よねっ? でも……ベル様は素敵で……やっぱりティアさんのような強い女性が気になるのではと……」
アリシア「分からなくはありませんが、あり得ませんよ。別の意味で気になるかもしれませんが……それにまず……」
アリ・ベ「「ティア様が許されません」」
ユフィア「……そうよね……なんだか安心したわっ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
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不安になるのも仕方がないです。
ラブラブですから。
子ども達の事はどうにかなりそうです。
そろそろ新学期。
その後には武闘大会が待っています。
では次回、一日空けて26日です。
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