元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第八章 学校と研修

332 宴会よ!

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コウヤ達が地上に降りてから二時間ほど、深夜も近付く頃に、ようやく全ての討伐が終わった。

改めて島を見回せば、城も大型の魔獣達によって綺麗に瓦礫さえ均されているのが見て取れた。

「これはまた、綺麗に均されましたねえ」

リクトルスが感心しながら笑う。

「ハリー君が居たからね」
「ああ、そういえば、立派なジャイアントハリーが何体かいましたね」

町のあった場所は、これにより綺麗に均されたのだ。お陰で、マンタやエイを着陸させやすいし、今日の夜営地の設営もやり易かった。

場を整えるのにそれほど時間がかからなかったため、炊き出しの準備が整うまでの間、ユースール組以外の冒険者達やギルド職員達も協力して、ドロップ品拾いに出かけていた。

「そういえばコウヤくん」
「ん?」

リクトルスの声音が微妙に変わったのに気付く。これは、お説教の前触れだ。そう察したコウヤは、先に尋ねておいた。

「何かあったっけ?」
「そうですね……アレはなんですか? 私は知らないのですけど」
「アレ?」

指差されたのは、パックンへとせっせと切先に引っ掛けてきたドロップ品を運ぶ羽根ペン。

ひよひよと声を出して、代わる代わる鮮やかなな色の羽根が飛んでくる。

「『なないろ』のこと? 鳴き声可愛いよねっ」
「そうですね……いえ、それもありますが、何なのです? アレは。武器ですよね?」
「うん。ゴーレムの部類に入るんだ。いいでしょ~」
「……」

何とも言えない表情を浮かべるリクトルス。こうなると、お説教まではいかないはずだ。ほっとしている所に、エリスリリアがやってきた。

「ふふふ。リクト、落ち着いて。戦い振りを見ていたけど、面白かったわよ。後で記録した映像を観てみなさいな。あなたなら、欲しくなるんじゃないかしら」
「そこまでのものですか……確認しましょう」

新しい武器への興味の方が優ったらしい。完全にお説教が回避されたところで、エリスリリアが楽しそうに手を打つ。

「そんなことより~♪  宴会よ! 屋台部隊も呼んだわ!」

ドロップ品の回収を始めた頃には、既に指示が出ていたようだ。手配は済んでいた。

「コウヤちゃん! カニパも出来るようにしたからね!」
「え、カニ!? やったー! って、もう焼いてる?」

素直に喜んだ。そして、大きな網で焼いていたのは、恐らく屋台部隊と来たのだろうベニだった。その隣に居るのはミラルファだ。アルキスやニール、近衛騎士達がせっせとカニを解体し、甲羅に切れ込みを入れている。更に、シンリームとビジェがキイやセイにあっちこっちと指示されて、カニを運んでいた。

ちなみに、このカニを獲ったのはテンキだった。王侯貴族の回収の片手間に乱獲したらしい。久し振りの海を楽しんだようだ。

「……えっと……」

ただ、ちょっと混乱した。一体、王族が揃って何をしているのだろう。答えは単純明解。

「さあ! 王族と聖魔教主催のカニパよ!」
「あ、はい」

冒険者達が王族と気付いて、大変恐縮している。だが、すぐに打ち解ける。アルキスやミラルファはとても気安い。その二人についているのが、最早コウヤに飼い慣らされたと認識されている騎士と魔法師だ。ベニ達が居ることもあり、ユースール組の適応は早かった。そこからはもう無礼講だ。

「ほら、コウヤちゃん! 行きましょう!」
「うん! リクト兄もっ」
「そうですね」

エリスリリアに手を引かれ、リクトルスを引っ張る。そうして、冒険者達の宴会に加わった。エリスリリア達の正体を知っているユースール組は慣れたもので、他のギルド職員達と同様に巻き込んでいった。

気絶し、遮音した結界の中に放置された王侯貴族を他所に、宴会は大変盛り上がった。

宴会が終わり、エリスリリアが張った結界によって、安心して皆が徐々に眠りにつく頃。

アルキスやミラルファ達トルヴァランの王族関係者とベニ達聖魔教の関係者の代表数名に加え、グランドマスターのシーレスとタリスで話し合いが行われた。もちろん、コウヤやエリスリリア、リクトルスも居る。

最初に口を開いたのはベニだ。

「こっちに居た似非聖女だけでなく、王女も頭の軽いので良かったよ。あの王女の様子と、先に保護した住民達の証言で今回のこちらの正当性は証明されたからね」

ユースールやトルヴァランの王都に運ばれた住民達は、どれほど横暴な国だったのかを暴露したらしい。

聞き上手、聞き出し上手なベニ達や神官達によって、不満は全て吐き出された。国の外で、その王侯貴族も手出しできないと知ったことで、我慢しなくていいのだと納得した彼ら住民達は、嬉々としてこれを外に広めた。

ちなみに、ビジェの妹と一緒にいた二人の王女の三人は、保護対象として宴会にも大人しく参加していた。現在は女性神官に見守られて眠っている。

「明日の昼までには、大陸中に『クズで最悪な国の貴族の話』として広まっているよ。同時に『神教国が乗っ取ろうとしていた』ってのもね」

転移でトルヴァラン内の教会は繋がっている。よって、最速で話は国内に広まり、更に最近特に諜報能力を付けた神官達によって、他国の酒場を使い、噂を広めたようだ。明日にはしっかり拡散しているだろう。

「迷宮を放置するとどうなるかっていう今回の話も、明日以降広めるつもりだよ」

そうすることで、今回のこの国へのギルドの強引な介入も文句を言えなくなる。これに、シーレスとタリスが礼を伝えた。

「感謝いたします」
「ボクらがやるより、きっと何倍も早く広まるので、有り難いです」

冒険者ギルドの存在意義もはっきりするだろう。職員の指導だけでなく、冒険者達にもいい影響がありそうだ。

「気にすることはないよ。冒険者ギルドがきちんと仕事をしてくれれば世界は回り、人々は楽に暮らせるからね」

どうやら、ベニ達ばばさまは、世界の仕組みも理解していたようだ。それを察して、シーレスとタリスは恐縮する。当事者である冒険者側が理解していなかったのだから恥じているらしい。

それは気にするなと、ベニは話を変えた。

「それより、この島の今後だね。あの貴族共はどうされる?」

これは、アルキスやミラルファへの問いかけだった。

「そのまま放置で良くないっすか?」
「あんな王侯貴族の風上にも置けない者たちなど、そのまま野垂れっ……放置でよいと思いますわ」

二人ともかなりイラついているのはわかった。これに意見したのはエリスリリアだ。こちらも少し不機嫌だった。

「民たちに生かされていたと教えるには良いのではないかしら」

リクトルスも頷く。

「自覚できるかはともかく、民を失くした王侯貴族がどうなるかというのは、とても気になりますね」

これにコウヤも続いた。

「うん。見てみたいね」

うんうんと頷き合う神達を見て、ベニが反対するはずがない。ミラルファ達に同意を求める。

「試してみようかねえ」
「そうしましょう」
「そうしよう」
「うん……」

ミラルファとアルキスが同意し、シンリームは気の毒そうな顔をして頷いた。

この後、王侯貴族を現在野営しているこの場所に放置することが決定した。様子見はするが、ひと月ほどは、彼らだけでサバイバル生活を堪能してもらう予定だ。

最後の討伐の折、意外にも生き残っていた魔獣や魔物が居ることが分かった。人里からしっかり距離を取って生きていたようだ。島から人が一気に居なくなったのだ。きっと彼らの姿も王侯貴族達はその目で確認することになるだろう。

一応、騎士も居るのだ。早々に死にはしないはずだ。

そしてもう一つ。リクトルスが前に提案したように、コウヤがコウルリーヤとしてあの漁師の集落の住民に顔を見せることになった。

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読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
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