元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

文字の大きさ
323 / 504
第十一章

428 怒ってたの?

コウヤは獣人の里へ行ってくると言って出て行ったエリスリリアが戻るのを、モニターを見ながら待っていた。

部屋には、ゼストラークと二人きりだ。リクトルスは現場を直接見に行くついでにエルフの里を見てくると言って出て行っている。

「心配か……?」

ゼストラークが小さくコウヤに問いかける。これに、振り返ってコウヤは答えた。

「……うん。少しね。エルフ族と違って、獣人の人たちは、子どもを守るために、里に閉じこもったのが始まりだから……さすがに、みんなで籠城するとは思わなかったけど」

コウルリーヤであった時、人族は、獣人族の子ども達を従魔のように側に置きたがった。可愛らしい見た目、けれど、人族にはあり得ない耳や尻尾がついている。だから、人族達には人と認識する気がなかった。

何度かそうして捕らえられてしまった獣人の子ども達を保護したり、神託として注意もしたが、禁止されたとしても、完璧ではなかった。罰を与えても、新たにやる者は出てくる。

そこで、獣人達がコウルリーヤに願ったのだ。子ども達を安全に守れる場所が欲しいと。

これにより、結界の魔導具を作り授けた。子ども達や弱い女達は大人になり、力をつけてからしかそこから出ないようになった。

「仕方あるまい……時と共に変わることは止められん……我々神でもな……」
「うん……」

けれど、それによって今回彼らには不名誉な称号がついてしまった。

「……気付けなかったのかなあ」

自分たちで、気付いて欲しかった。生き方を変えなくてはならないことに。

「俺、この迷宮化は、そのためだったんじゃないかと思うんだ……」
「……精霊達が、気付かせるために……か……そうだな……」
「……」

精霊達は、昔からコウルリーヤの想いに反応していた。何より、彼らは世界を回すための重要な歯車の役目を持っている。

世界に変化をもたらし、そこに住む者たちへ何かを考えさせる。そういうところが精霊にはある。南の島でのこともそうだ。だから、今回もと思った。

「どのみち、迷宮化の影響で、どちらの里でも里の中だけでは、生きられなくなってたよね?」
「うむ……作物も、それほど育っていない状況だ。毒性もある。外に出ねば、どうにもならなくなっていただろう」
「だよね……」

そこで気付けた可能性はある。だが、それに対処しようとしたかどうかはまた別だ。

「だが、獣人達は外に出ても、森からは出られなかっただろう。エルフたちは、略奪に走ったかもしれん」
「……うん……」

獣人族達は、閉じ籠り過ぎた。戦える戦士として神教国を包囲した者たちの数はそれほど多くはなく、彼らで里の者たち全員を守りながら生きることは困難だっただろう。

特に今は迷宮化によって、森を抜けることさえかなり難しくなっていた。足手まといになる者を連れてというのは、絶望的だ。多くがそこで犠牲になるだろう。

そして、エルフ族達は、傲慢に人族に略奪を仕掛ける可能性が高い。とはいえ、半数以上は寝込んでいる状況。里から脱出できる者は少なく、略奪に向かったとしても、討伐対象にされて終わっただろう。

どちらも命の危険がかなり高い。

「死ぬよりは不名誉な称号を受ける方が、幾分かよかろう」
「けど、エルフの人たちはプライド高そうだよ?」
「……うむ……いい薬だ」
「……怒ってたの?」
「……少しな……あちらには……期待していたところもある……」
「調整役にするつもりだったもんね……」
「ああ……」

長い時間を生き、更に知恵、思考を大切にする種族だ。この世界を引っ張って行く役割も任せられる種族として目をかけていた。

だが、コウルリーヤが人族に討たれた所で、決定的にその役割から外れてしまった。本来ならば、人族を見捨てず、コウルリーヤは邪神ではないのだと説得することもできたはずだ。

それをしなかった。彼らは早い段階で人族に見切りを付けてしまったのだ。神が見放す前に、その判断をしてしまった。

「……人族との仲を取り持てたはずの神子達が、手一杯だったこともあるが……それでもな……」
「うん……」

だからこそ、エルフ達に対する『失望』は大きかった。

そこで、コウヤが立ち上がる。

「けど、挽回する機会はあげないとね」
「……コウヤ……」

ゼストラークはコウヤが何をしようとしているのか分かっていた。けれど、呆れ顔だ。

「彼らの時間は長いから」
「……まあ、そうだな……」
「ふふっ。エリィ姉が戻って来たら、エルフの里に行ってくるよ。せめて動けるようにはしてこないと、この様子も見られないしね」
「うむ……それくらいはな」

寝込んでいるエルフ達を叩き起こすくらいはしてやろう。そうコウヤとゼストラークは笑ったのだ。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
感想 2,852

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?

シエル
恋愛
「彼を解放してください!」 友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。 「どなたかしら?」 なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう? まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ? どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。 「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが? ※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界 ※ ご都合主義です。 ※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて

碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。 美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。 第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。