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第十一章
428 怒ってたの?
コウヤは獣人の里へ行ってくると言って出て行ったエリスリリアが戻るのを、モニターを見ながら待っていた。
部屋には、ゼストラークと二人きりだ。リクトルスは現場を直接見に行くついでにエルフの里を見てくると言って出て行っている。
「心配か……?」
ゼストラークが小さくコウヤに問いかける。これに、振り返ってコウヤは答えた。
「……うん。少しね。エルフ族と違って、獣人の人たちは、子どもを守るために、里に閉じこもったのが始まりだから……さすがに、みんなで籠城するとは思わなかったけど」
コウルリーヤであった時、人族は、獣人族の子ども達を従魔のように側に置きたがった。可愛らしい見た目、けれど、人族にはあり得ない耳や尻尾がついている。だから、人族達には人と認識する気がなかった。
何度かそうして捕らえられてしまった獣人の子ども達を保護したり、神託として注意もしたが、禁止されたとしても、完璧ではなかった。罰を与えても、新たにやる者は出てくる。
そこで、獣人達がコウルリーヤに願ったのだ。子ども達を安全に守れる場所が欲しいと。
これにより、結界の魔導具を作り授けた。子ども達や弱い女達は大人になり、力をつけてからしかそこから出ないようになった。
「仕方あるまい……時と共に変わることは止められん……我々神でもな……」
「うん……」
けれど、それによって今回彼らには不名誉な称号がついてしまった。
「……気付けなかったのかなあ」
自分たちで、気付いて欲しかった。生き方を変えなくてはならないことに。
「俺、この迷宮化は、そのためだったんじゃないかと思うんだ……」
「……精霊達が、気付かせるために……か……そうだな……」
「……」
精霊達は、昔からコウルリーヤの想いに反応していた。何より、彼らは世界を回すための重要な歯車の役目を持っている。
世界に変化をもたらし、そこに住む者たちへ何かを考えさせる。そういうところが精霊にはある。南の島でのこともそうだ。だから、今回もと思った。
「どのみち、迷宮化の影響で、どちらの里でも里の中だけでは、生きられなくなってたよね?」
「うむ……作物も、それほど育っていない状況だ。毒性もある。外に出ねば、どうにもならなくなっていただろう」
「だよね……」
そこで気付けた可能性はある。だが、それに対処しようとしたかどうかはまた別だ。
「だが、獣人達は外に出ても、森からは出られなかっただろう。エルフたちは、略奪に走ったかもしれん」
「……うん……」
獣人族達は、閉じ籠り過ぎた。戦える戦士として神教国を包囲した者たちの数はそれほど多くはなく、彼らで里の者たち全員を守りながら生きることは困難だっただろう。
特に今は迷宮化によって、森を抜けることさえかなり難しくなっていた。足手まといになる者を連れてというのは、絶望的だ。多くがそこで犠牲になるだろう。
そして、エルフ族達は、傲慢に人族に略奪を仕掛ける可能性が高い。とはいえ、半数以上は寝込んでいる状況。里から脱出できる者は少なく、略奪に向かったとしても、討伐対象にされて終わっただろう。
どちらも命の危険がかなり高い。
「死ぬよりは不名誉な称号を受ける方が、幾分かよかろう」
「けど、エルフの人たちはプライド高そうだよ?」
「……うむ……いい薬だ」
「……怒ってたの?」
「……少しな……あちらには……期待していたところもある……」
「調整役にするつもりだったもんね……」
「ああ……」
長い時間を生き、更に知恵、思考を大切にする種族だ。この世界を引っ張って行く役割も任せられる種族として目をかけていた。
だが、コウルリーヤが人族に討たれた所で、決定的にその役割から外れてしまった。本来ならば、人族を見捨てず、コウルリーヤは邪神ではないのだと説得することもできたはずだ。
それをしなかった。彼らは早い段階で人族に見切りを付けてしまったのだ。神が見放す前に、その判断をしてしまった。
「……人族との仲を取り持てたはずの神子達が、手一杯だったこともあるが……それでもな……」
「うん……」
だからこそ、エルフ達に対する『失望』は大きかった。
そこで、コウヤが立ち上がる。
「けど、挽回する機会はあげないとね」
「……コウヤ……」
ゼストラークはコウヤが何をしようとしているのか分かっていた。けれど、呆れ顔だ。
「彼らの時間は長いから」
「……まあ、そうだな……」
「ふふっ。エリィ姉が戻って来たら、エルフの里に行ってくるよ。せめて動けるようにはしてこないと、この様子も見られないしね」
「うむ……それくらいはな」
寝込んでいるエルフ達を叩き起こすくらいはしてやろう。そうコウヤとゼストラークは笑ったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
部屋には、ゼストラークと二人きりだ。リクトルスは現場を直接見に行くついでにエルフの里を見てくると言って出て行っている。
「心配か……?」
ゼストラークが小さくコウヤに問いかける。これに、振り返ってコウヤは答えた。
「……うん。少しね。エルフ族と違って、獣人の人たちは、子どもを守るために、里に閉じこもったのが始まりだから……さすがに、みんなで籠城するとは思わなかったけど」
コウルリーヤであった時、人族は、獣人族の子ども達を従魔のように側に置きたがった。可愛らしい見た目、けれど、人族にはあり得ない耳や尻尾がついている。だから、人族達には人と認識する気がなかった。
何度かそうして捕らえられてしまった獣人の子ども達を保護したり、神託として注意もしたが、禁止されたとしても、完璧ではなかった。罰を与えても、新たにやる者は出てくる。
そこで、獣人達がコウルリーヤに願ったのだ。子ども達を安全に守れる場所が欲しいと。
これにより、結界の魔導具を作り授けた。子ども達や弱い女達は大人になり、力をつけてからしかそこから出ないようになった。
「仕方あるまい……時と共に変わることは止められん……我々神でもな……」
「うん……」
けれど、それによって今回彼らには不名誉な称号がついてしまった。
「……気付けなかったのかなあ」
自分たちで、気付いて欲しかった。生き方を変えなくてはならないことに。
「俺、この迷宮化は、そのためだったんじゃないかと思うんだ……」
「……精霊達が、気付かせるために……か……そうだな……」
「……」
精霊達は、昔からコウルリーヤの想いに反応していた。何より、彼らは世界を回すための重要な歯車の役目を持っている。
世界に変化をもたらし、そこに住む者たちへ何かを考えさせる。そういうところが精霊にはある。南の島でのこともそうだ。だから、今回もと思った。
「どのみち、迷宮化の影響で、どちらの里でも里の中だけでは、生きられなくなってたよね?」
「うむ……作物も、それほど育っていない状況だ。毒性もある。外に出ねば、どうにもならなくなっていただろう」
「だよね……」
そこで気付けた可能性はある。だが、それに対処しようとしたかどうかはまた別だ。
「だが、獣人達は外に出ても、森からは出られなかっただろう。エルフたちは、略奪に走ったかもしれん」
「……うん……」
獣人族達は、閉じ籠り過ぎた。戦える戦士として神教国を包囲した者たちの数はそれほど多くはなく、彼らで里の者たち全員を守りながら生きることは困難だっただろう。
特に今は迷宮化によって、森を抜けることさえかなり難しくなっていた。足手まといになる者を連れてというのは、絶望的だ。多くがそこで犠牲になるだろう。
そして、エルフ族達は、傲慢に人族に略奪を仕掛ける可能性が高い。とはいえ、半数以上は寝込んでいる状況。里から脱出できる者は少なく、略奪に向かったとしても、討伐対象にされて終わっただろう。
どちらも命の危険がかなり高い。
「死ぬよりは不名誉な称号を受ける方が、幾分かよかろう」
「けど、エルフの人たちはプライド高そうだよ?」
「……うむ……いい薬だ」
「……怒ってたの?」
「……少しな……あちらには……期待していたところもある……」
「調整役にするつもりだったもんね……」
「ああ……」
長い時間を生き、更に知恵、思考を大切にする種族だ。この世界を引っ張って行く役割も任せられる種族として目をかけていた。
だが、コウルリーヤが人族に討たれた所で、決定的にその役割から外れてしまった。本来ならば、人族を見捨てず、コウルリーヤは邪神ではないのだと説得することもできたはずだ。
それをしなかった。彼らは早い段階で人族に見切りを付けてしまったのだ。神が見放す前に、その判断をしてしまった。
「……人族との仲を取り持てたはずの神子達が、手一杯だったこともあるが……それでもな……」
「うん……」
だからこそ、エルフ達に対する『失望』は大きかった。
そこで、コウヤが立ち上がる。
「けど、挽回する機会はあげないとね」
「……コウヤ……」
ゼストラークはコウヤが何をしようとしているのか分かっていた。けれど、呆れ顔だ。
「彼らの時間は長いから」
「……まあ、そうだな……」
「ふふっ。エリィ姉が戻って来たら、エルフの里に行ってくるよ。せめて動けるようにはしてこないと、この様子も見られないしね」
「うむ……それくらいはな」
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