元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十一章

433 素材と思って

ユキは先導しながら続けた。

「私からしたら死刑囚と変わらないというだけで、実際彼らや里の者は、崇高な役割と名誉の為に戦士として出ていきます」

里のため、エルフの戦士としての誇りを持って出て行くのだという。

「二度と里には戻らないとして出ていきますが、正確には、戻れないのです。彼らは、二つの呪いのような力を宿して出て行くので……」
「その二つというのが、強化と吸収ですか……」
「そうです」

コウヤは先程からそうした影響を与える魔導具などの検索をかけていた。

「そんな魔導具は……作れるものでもないと思うんだけど……」

そう呟きながら、逆に作れるかどうかを考えてみる。

「う~ん……作れても、使い捨てかな?」
《呪いとして継続させられるのは、私くらいのはずなのですが……》
「そうだよね……薬で強化ならあり得るけど、そもそも、呪い系は完全にこっちの領域のはず……」

神や神の眷属以外が手を出せるものではない。

考え込んでいれば、ユキにジンクが質問していた。

「強化は分からないでもないけど、吸収って、何を吸収するの?」

森を出て、里の裏切り者を見つけるため、強靭な身体をというのは、分からないでもない。しかし、吸収は分からない。

「……魔力と精神力だと……聞いています。裏切り者であっても、エルフです……その命が……誰かの……特に人族の糧になることだけは許してはならないと……」
「……なるほどね……」
「……」

言ってしまえば、経験値だ。一般的には魔獣や魔物を倒すことで得る力だが、人を殺しても得られる。

エルフ達は徹底して自分達とは違う種族を嫌い、その力となることさえも許せなかったらしい。だからこそ、同胞に手をかけるのだ。

ただ、呪いとしての吸収は、もちろん特別だったようだ。

「その吸収は……例えば他の者が手を下したとしても、その死の近くに在れば、手を下した者が得るべきものをも引き寄せ、吸収するようです……周りから、盗むのです」
「あ~……そうだよなあ。さすがに、エルフだけのものを選択できる訳ないよなあ」

他の者が倒した魔獣や魔物の経験値も、横取り出来るということだ。それも、全く手を出さずに密かに。

だが、そんな都合の良いことが、常にまかり通るなんてことはないだろう。欠点はあった。

「ただ、それが出来るのは、一日の間に数回だけです。上限があるようで……その上、ある一定の量を常に吸収しないと、強化の呪いが消えてしまうんです。そうなると、逆に弱体化します」
「それは、一度弱体化したら、そのままですか?」
「はい。ですから、戦士達は戦い続けていなくてはならなくなるのです」

これを聞いて、コウヤ達は納得した。

「それは……間違いなく呪いだねえ」
「呪いですねえ」
《間違いありません》

そうとしか言えなかった。しかし、そこまで聞いて、コウヤはふと思った。

「これ、吸収はただ、強化をするために付いただけのものかも?」
《確かに、吸収は強化のための力ですね。エルフ達がたまたまこれに意味を持たせただけで、本来は強化だけを目的としたのかもしれません……》

そこまで考えて、コウヤはテンキと目配せ合った。

「経験値を奪う……ううん……本来は分け合うやつだね。それで、その吸収した魔力を使って強制的に身体強化に回す……呪いのような力……」
《本来ならば、弱者のレベル上げを手伝うためのもの……》

思い当たった。

《……私の角ですね……》
「テンキの天竜バハムートモードの時の角だねえ……」
「「……え?」」

それならあり得ると思った。だが、それでも気になる所はある。

「ただ、一定以上、常に吸収し続けなくてはならないとかって制限はないはず……」
《はい。弱体化もしません。なので……恐らく……私が正気でなかった時のものが、変質したのでしょう。角は取れやすいですから》

普通の角とも違う。折れたり、取れたりしても、テンキの場合はすぐに生えてくるのだ。変化をし直せば元通りになったりもする。

「すぐ生えるから、薬にしても困らないしね」
《主様……鱗もですけど、私の体、素材と思っていませんか? パックンもたまに変化しないのかと聞いてくることがあるんですが……》
「……っ」

コウヤは目を逸らした。

《否定してくださいよ……》
「ウン」

動揺するコウヤに、テンキは呆れたようにため息をつく。

《……嫌とかではないですから構いませんよ。寧ろ、お役に立てていると思えば、悪い気はしません》
「あ、本当? 良かったっ」
《……なるほど、間違いなく素材と思ってますね……》
「……ちょっとだけ……」
《……》

コウヤは正直だった。パックンは間違いなく素材の生る木くらいの認識をする時がある。

《パックンに鱗を全部剥がされそうになった時は、さすがに逃げましたけど》
「……それは、怖いね?」
《あの、物への執着はどうにかならないものでしょうか……》
「でも、アレなくなったら、パックンじゃない気がして……」
《……なるほど……適度に逃げることにいたします》
「そうして」

ユキとジンクが、確認したそうにしていたが、口を挟める隙はなく、この時、ようやくエルフ達の潜んでいる場所に足を踏み入れたのだ。

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