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第十二章
476 団体で動くのが……
王子であったフレスタとディスタには以前、コウヤの侍従となることを提案したが、迷宮化のための遠征に出る前には、国に戻りたいならば構わないと伝えていた。
二人は、後ろ盾を失くし、敵対派閥の者達の策略にかけられ、国から追い出されて来た。表向きは、この国に助けを求めるためだったが、国を出た時点で命を狙われ、王子としての立場も取り上げられていたのだ。
しかし、彼らが国を出ることになった原因、神教会の企みであった、王やその関係者にかけられた呪いのような病は、この国の薬師達により薬が作られ、確実に快方に向かっている。
その彼らが元気になれば、二人も国に戻ることが叶うだろう。だから、それならばそれで構わないと伝えたのだ。
だが、二人はそれをきっぱりと断った。戻ったとしても、敵対派閥に狙われる事は変わらないし、守りたいと思う者ももう、国元にはなかった。それよりも、この国で与えられるものがあるならば、そちらが良いと思ったようだ。
そして、コウヤの侍従になるべく、この国に残って勉強していたというわけだ。
「久し振りですね。フレスタ、ディスタ」
「「はいっ。お帰りなさいませ!」」
二人は、この国に来た頃とは別人のように、晴れやかな笑顔を見せるようになっていた。
「何か困った事はありませんでしたか?」
自分たちの国で暮らして来た生活とは、全く違うだろう。身内も近くに居らず、不安もあるのではないかとコウヤは心配していた。
「特にありません。何より、私たちが困る前に、色々と周りの方が助けてくださいますので」
「どちらかと言うと、こんなに親切にしてもらっていいのかという方に戸惑っています」
彼らは、国ではとても肩身の狭い思いをしていたため、この国での生活がとても楽に感じていた。
そんな二人に、コウヤはクスクスと笑った。
「それは慣れてください」
「頑張ります……」
「努力します……」
「大丈夫ですよ。自然に慣れますから。もう数ヶ月もすれば、同じように誰かに親切に出来るようになってるかもしれませんね」
「「っ、はい!」」
その返事からは、そうなれたら良いなという、二人の気持ちが伝わってきた。
そして、ふとその後ろにいたニールの様子が気になった。
「ん? どうしました? ニール」
「っ、いえ……今日のお召し物、大変よくお似合いです」
「あ……そう? なんか、今までで一番派手な感じがするんだけど」
「お似合いですよ」
物凄く満足そうに頷かれた。その周りも一緒にだ。コウヤの後ろでは、いつの間にか起きていたパックンやダンゴも、テンキもベッドの上で並んで頷いている。
「……着慣れないなあ……」
この場で、納得出来ないのはコウヤだけだった。
ニールは咳払いをした後、和かに告げる。
「じきに、朝食の用意も整います」
「そうだね……じゃあ行こうか。今日の予定を歩きながら聞かせてもらえる?」
「かしこまりました。では」
「うん」
そうして、コウヤが一歩踏み出すと、パックン、ダンゴ、テンキが人化してその後を追う。
コウヤの斜め後ろにニール。その後ろにフレスタ、ディスタ。その更に後ろに人化したパックン達が並び、キルヤ達メイドも後を追う。
これに、本来ならば護衛の近衛騎士が前と後ろを挟む形になるのだが、聖魔教の神官が鍛えた暗部もいることもあり、城の中はそれほどガチガチに護衛を固める必要がないということになっていた。
コウヤは、ふと後ろの気配を感じ取り、クスリと笑った。
「どうかなさいましたか?」
ニールが気になったようだ。これに、コウヤはクスクスと笑いながら説明する。
「こうやって団体で動くのが……まるで病院の回診行列みたいで」
「かいしん?」
「ううん。気にしないで。ちょっと楽しかっただけだから。それより、ニールはこっちに来ちゃって良かったの?」
本来、ニールはまだ宰相の補佐官の一人としてあるはず。既に、コウヤの元に来る事は決まっていたが、まだ補佐官の方の補充が間に合っていないらしいのだ。
だから、ニールがこちらに来るのは、まだ少し先になるはずだった。
「こちらで休みを取る前に、私の方で候補を挙げ、伝えられる仕事は教えておいたのです。試験期間も終わり、無事に引き継ぎをして参りました。今日より、正式にコウヤ様付きになります」
ニールは、休みを取り、迷宮討伐に参加する前には、既に自分で後任候補を挙げ、宰相に試験期間として預けていたらしい。
討伐を終えて帰って来た昨日、そのまま使えるとの答えを宰相にもらい、今日、めでたく補佐官の任から下りることができたというわけだ。
時間を無駄にしない見事な作戦だった。ニールらしいと言える。
「制服が間に合っておりませんが、お側に居ることには変わりませんので」
「そうなんだ……ベルナディオ宰相が困ってないなら良かった。これからよろしくね」
「もちろんです」
引き継ぎまできちんと済ませて来たならと、コウヤもほっとしていた。コウヤが気にすると分かっているから、ニールも先手を打ったのだ。
今日の予定を聞きながら、辿り着いた部屋。そこには、王族が全員集まっていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回は30日です。
よろしくお願いします◎
二人は、後ろ盾を失くし、敵対派閥の者達の策略にかけられ、国から追い出されて来た。表向きは、この国に助けを求めるためだったが、国を出た時点で命を狙われ、王子としての立場も取り上げられていたのだ。
しかし、彼らが国を出ることになった原因、神教会の企みであった、王やその関係者にかけられた呪いのような病は、この国の薬師達により薬が作られ、確実に快方に向かっている。
その彼らが元気になれば、二人も国に戻ることが叶うだろう。だから、それならばそれで構わないと伝えたのだ。
だが、二人はそれをきっぱりと断った。戻ったとしても、敵対派閥に狙われる事は変わらないし、守りたいと思う者ももう、国元にはなかった。それよりも、この国で与えられるものがあるならば、そちらが良いと思ったようだ。
そして、コウヤの侍従になるべく、この国に残って勉強していたというわけだ。
「久し振りですね。フレスタ、ディスタ」
「「はいっ。お帰りなさいませ!」」
二人は、この国に来た頃とは別人のように、晴れやかな笑顔を見せるようになっていた。
「何か困った事はありませんでしたか?」
自分たちの国で暮らして来た生活とは、全く違うだろう。身内も近くに居らず、不安もあるのではないかとコウヤは心配していた。
「特にありません。何より、私たちが困る前に、色々と周りの方が助けてくださいますので」
「どちらかと言うと、こんなに親切にしてもらっていいのかという方に戸惑っています」
彼らは、国ではとても肩身の狭い思いをしていたため、この国での生活がとても楽に感じていた。
そんな二人に、コウヤはクスクスと笑った。
「それは慣れてください」
「頑張ります……」
「努力します……」
「大丈夫ですよ。自然に慣れますから。もう数ヶ月もすれば、同じように誰かに親切に出来るようになってるかもしれませんね」
「「っ、はい!」」
その返事からは、そうなれたら良いなという、二人の気持ちが伝わってきた。
そして、ふとその後ろにいたニールの様子が気になった。
「ん? どうしました? ニール」
「っ、いえ……今日のお召し物、大変よくお似合いです」
「あ……そう? なんか、今までで一番派手な感じがするんだけど」
「お似合いですよ」
物凄く満足そうに頷かれた。その周りも一緒にだ。コウヤの後ろでは、いつの間にか起きていたパックンやダンゴも、テンキもベッドの上で並んで頷いている。
「……着慣れないなあ……」
この場で、納得出来ないのはコウヤだけだった。
ニールは咳払いをした後、和かに告げる。
「じきに、朝食の用意も整います」
「そうだね……じゃあ行こうか。今日の予定を歩きながら聞かせてもらえる?」
「かしこまりました。では」
「うん」
そうして、コウヤが一歩踏み出すと、パックン、ダンゴ、テンキが人化してその後を追う。
コウヤの斜め後ろにニール。その後ろにフレスタ、ディスタ。その更に後ろに人化したパックン達が並び、キルヤ達メイドも後を追う。
これに、本来ならば護衛の近衛騎士が前と後ろを挟む形になるのだが、聖魔教の神官が鍛えた暗部もいることもあり、城の中はそれほどガチガチに護衛を固める必要がないということになっていた。
コウヤは、ふと後ろの気配を感じ取り、クスリと笑った。
「どうかなさいましたか?」
ニールが気になったようだ。これに、コウヤはクスクスと笑いながら説明する。
「こうやって団体で動くのが……まるで病院の回診行列みたいで」
「かいしん?」
「ううん。気にしないで。ちょっと楽しかっただけだから。それより、ニールはこっちに来ちゃって良かったの?」
本来、ニールはまだ宰相の補佐官の一人としてあるはず。既に、コウヤの元に来る事は決まっていたが、まだ補佐官の方の補充が間に合っていないらしいのだ。
だから、ニールがこちらに来るのは、まだ少し先になるはずだった。
「こちらで休みを取る前に、私の方で候補を挙げ、伝えられる仕事は教えておいたのです。試験期間も終わり、無事に引き継ぎをして参りました。今日より、正式にコウヤ様付きになります」
ニールは、休みを取り、迷宮討伐に参加する前には、既に自分で後任候補を挙げ、宰相に試験期間として預けていたらしい。
討伐を終えて帰って来た昨日、そのまま使えるとの答えを宰相にもらい、今日、めでたく補佐官の任から下りることができたというわけだ。
時間を無駄にしない見事な作戦だった。ニールらしいと言える。
「制服が間に合っておりませんが、お側に居ることには変わりませんので」
「そうなんだ……ベルナディオ宰相が困ってないなら良かった。これからよろしくね」
「もちろんです」
引き継ぎまできちんと済ませて来たならと、コウヤもほっとしていた。コウヤが気にすると分かっているから、ニールも先手を打ったのだ。
今日の予定を聞きながら、辿り着いた部屋。そこには、王族が全員集まっていた。
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2026.03.30 内容紹介一部修正