216 / 221
mission 20
216 救世主達と王様
「おう。どうぞ~」
ドアをノックする音が聞こえたとほぼ同時に、宗徳が返事をする。誰が来たのかなんて宗徳にはわかっていた。
「ルース。紹介するぜ。新しく同僚になった友人の亮司と幸菜だ。二人とも。こっちはこの国の王のルーセリウスだ」
「っ、亮司です。初めまして。お会いできて光栄です……」
「ゆ、幸菜です! よろしくお願いします」
緊張気味な二人に、ルーセリウスは微笑む。立場柄、こうした態度になる方が慣れている。
「ルーセリウス・セド・クラナードだ。我が国にようこそおいでくださった。異世界からの救世主殿」
「っ、きゅ、救世主!?」
「わ、私たち?」
「ああ。現に、かなりムネノリ達には助けてもらっている。勇者のような位置付けだ」
「そんなっ……」
「勇者だなんて……」
勇者のように、派手な動きはないが、国や世界を変えるのだから同じだろうという解釈をされているようだ。
「戸惑われるのも分かる。だが、異世界から来られた方は、敵対しないのならば、それだけで特別な存在だ。神によって来ることを許されたのだから、この世界に意味のある存在ということになる」
「おおっ……そういう解釈か……あっ、すみません」
「いや。異世界人は神を信じない場合があると記録もある。別の次元の存在であるが故に、そうなのだとの記述も」
「……それ、無理やり納得するために……あ、いえ……」
神を信じないなんてあり得ないと思っているこの世界の住民が、無信仰を納得するには、仕方のない理由付けなのかもしれない。
そこで、宗徳が思いつく。
「そういや、ルースはどれくらい滞在するんだ? 視察だろ?」
「うむ……三日ほどになるだろうな」
「あら。もっとゆっくりしていらしたら良いのに。王様業はお忙しいのねえ」
寿子と亮司達は、部屋の隅にあるテーブルセットの方に腰掛ける。寿子は、ルーセリウスを気の毒そうに見た。年齢が年下ということもあり、大変な仕事をしているのだと感心してもいた。気持ち的には、親戚のおばさんのようなものだろうか。
「やはり、年々、移動するのが辛くなってきてしまって……国内を回る視察も、そう何度もできませんのでね……」
ルーセリウスが弱みを見せられるのも、宗徳達の前だけだ。
「それでも、ムネノリが作ってくれた馬車のお陰で、かなり体に負担なく移動できるようになったものだ」
「王族の馬車が、座ってられないくらい飛び撥ねるとか、居た堪れなさすぎるだろ」
「馬に乗っているようなものだ。馬車とはそうだろう?」
騎馬での移動ではなく、風もなく、雨にも振られない。それだけで騎馬と馬車に乗る待遇の違いは十分だと思われているようだ。十分荷物贅沢だと。
「間違ってねえ感じはするけど、やっぱ乗り物は寝れねえとなあ。それに、子どもらが大変だろ」
「まあ、時間はかかる」
「だよな。そんじゃあ、舗装工事でもするか。ルース。先ずはこの辺からだな。王様が居るんだ。現場で決められることができるんだ。かなり手間が省ける!」
そう言って、宗徳は地図を取り出した。
「ルース。茶を持ってくれ。あ、これは防水加工もしてあるから、上に置いていいぞ」
「こ、この上に……っ?」
大きく精巧な、この国の地図。その上にカップを置けと言われても躊躇うものだ。
しかし、ルーセリウスのそんな心情に気付かず、宗徳はペンを差し出す。
「……これで何を……」
何をして欲しいのか、ルーセリウスはある程度察していた。
「これで、舗装工事する道を決めるんだよ。亮司達に魔法も教えないといけないからな。一石二鳥だぜ」
「「え? 魔法……!?」」
「あら。二人ならすぐに使えるようになるわよ。実践あるのみ!」
「そういうことだ。ということで、ほれ、遠慮なく線を引いてくれ。それが国の主要道路になるからな?」
「…………少し時間をくれ……」
「おう……?」
いくら王でも、すぐに決断できないこともある。人の命がかかるものでもないので、宗徳としてはざっと決めてもらえれば良いと思っている。
だが、ルーセリウスの持つペン先はいつまでも震えていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
ドアをノックする音が聞こえたとほぼ同時に、宗徳が返事をする。誰が来たのかなんて宗徳にはわかっていた。
「ルース。紹介するぜ。新しく同僚になった友人の亮司と幸菜だ。二人とも。こっちはこの国の王のルーセリウスだ」
「っ、亮司です。初めまして。お会いできて光栄です……」
「ゆ、幸菜です! よろしくお願いします」
緊張気味な二人に、ルーセリウスは微笑む。立場柄、こうした態度になる方が慣れている。
「ルーセリウス・セド・クラナードだ。我が国にようこそおいでくださった。異世界からの救世主殿」
「っ、きゅ、救世主!?」
「わ、私たち?」
「ああ。現に、かなりムネノリ達には助けてもらっている。勇者のような位置付けだ」
「そんなっ……」
「勇者だなんて……」
勇者のように、派手な動きはないが、国や世界を変えるのだから同じだろうという解釈をされているようだ。
「戸惑われるのも分かる。だが、異世界から来られた方は、敵対しないのならば、それだけで特別な存在だ。神によって来ることを許されたのだから、この世界に意味のある存在ということになる」
「おおっ……そういう解釈か……あっ、すみません」
「いや。異世界人は神を信じない場合があると記録もある。別の次元の存在であるが故に、そうなのだとの記述も」
「……それ、無理やり納得するために……あ、いえ……」
神を信じないなんてあり得ないと思っているこの世界の住民が、無信仰を納得するには、仕方のない理由付けなのかもしれない。
そこで、宗徳が思いつく。
「そういや、ルースはどれくらい滞在するんだ? 視察だろ?」
「うむ……三日ほどになるだろうな」
「あら。もっとゆっくりしていらしたら良いのに。王様業はお忙しいのねえ」
寿子と亮司達は、部屋の隅にあるテーブルセットの方に腰掛ける。寿子は、ルーセリウスを気の毒そうに見た。年齢が年下ということもあり、大変な仕事をしているのだと感心してもいた。気持ち的には、親戚のおばさんのようなものだろうか。
「やはり、年々、移動するのが辛くなってきてしまって……国内を回る視察も、そう何度もできませんのでね……」
ルーセリウスが弱みを見せられるのも、宗徳達の前だけだ。
「それでも、ムネノリが作ってくれた馬車のお陰で、かなり体に負担なく移動できるようになったものだ」
「王族の馬車が、座ってられないくらい飛び撥ねるとか、居た堪れなさすぎるだろ」
「馬に乗っているようなものだ。馬車とはそうだろう?」
騎馬での移動ではなく、風もなく、雨にも振られない。それだけで騎馬と馬車に乗る待遇の違いは十分だと思われているようだ。十分荷物贅沢だと。
「間違ってねえ感じはするけど、やっぱ乗り物は寝れねえとなあ。それに、子どもらが大変だろ」
「まあ、時間はかかる」
「だよな。そんじゃあ、舗装工事でもするか。ルース。先ずはこの辺からだな。王様が居るんだ。現場で決められることができるんだ。かなり手間が省ける!」
そう言って、宗徳は地図を取り出した。
「ルース。茶を持ってくれ。あ、これは防水加工もしてあるから、上に置いていいぞ」
「こ、この上に……っ?」
大きく精巧な、この国の地図。その上にカップを置けと言われても躊躇うものだ。
しかし、ルーセリウスのそんな心情に気付かず、宗徳はペンを差し出す。
「……これで何を……」
何をして欲しいのか、ルーセリウスはある程度察していた。
「これで、舗装工事する道を決めるんだよ。亮司達に魔法も教えないといけないからな。一石二鳥だぜ」
「「え? 魔法……!?」」
「あら。二人ならすぐに使えるようになるわよ。実践あるのみ!」
「そういうことだ。ということで、ほれ、遠慮なく線を引いてくれ。それが国の主要道路になるからな?」
「…………少し時間をくれ……」
「おう……?」
いくら王でも、すぐに決断できないこともある。人の命がかかるものでもないので、宗徳としてはざっと決めてもらえれば良いと思っている。
だが、ルーセリウスの持つペン先はいつまでも震えていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
あなたにおすすめの小説
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。