シルバーヒーローズ!〜異世界でも現世でもまだまだ現役で大暴れします!〜

紫南

文字の大きさ
143 / 221
mission 14 大地の再生

143 特別な実

その効果は絶大だった。

枯れた黄色と茶色でしかなかった大地の色が、緑に塗り替えられていく。

それは遥か視線の先まで拡がっていき、景色があっさりと一変した。

「こりゃあ……花咲か爺さんもビックリだな」

思わず目が向いたのは、町のから少し離れた場所にぽつんとあった枯れ木だ。早送りした映像を見ているように、木はどんどん幹が太くなり、高い場所に葉が生え、花が咲き、あっという間に実が生っていく。

ぽとりと落ちたその実は、弱って眠っていた魔獣の側にまで転がっていく。それを思わず口にした魔獣は、突然身を起こす。

《ッ……ガウ……?》

戸惑うように見える、その動きに笑いながら、宗徳はまるで無害なペットに近付く様子で歩み寄った。

「ははっ。なんだお前、元気になったなあっ」
《ガウっ……?》

本来ならば、人など近付くことが出来ない、凶暴な獣。見た目はトラのようなものだ。大きな牙も持つ。けれど、そんな魔獣も宗徳を襲おうなどとは思わなかったようだ。

無意識だろう。それは本能のようなもの。

《くるる~》
《ぐるるっ》
《ガ、ガウ……》

宗徳の肩に乗る白欐と黒欐に畏怖を感じたのだ。魔獣は、頭を少し下げて、後退っていた。

そんな様子を気にするでもなく、宗徳は木を見上げ、目についた実を一つ風を使って取る。この木は幹が長く、枝分かれする場所が三メートルほど上だ。よって、実もかなり上の方に生っている。

幹はツルツルしており、足場がないので、魔術か導具を使わなくては、実を取ることは不可能だろう。


【カリュン(神果)】
高濃度の魔素と神力が込められた実。
病や呪いさえ消し去る神霊薬の材料の一つ。
本来は数百年に一粒しか生らない。
一つ食べれば、魔力を持つものは、弱ったものも本来のあるべき状態へ戻る。


たくさんの知識が頭に流れ込んできた。それを一つずつ自分の中に留めながら、一口食べてみた。

大きさは姫林檎と同じくらい。甘酸っぱい、桃のような味だった。だが、食感はリンゴのようで、美味しいのに、思わず眉を寄せてしまう。

それに気付いた白欐と黒欐が、美味しくないのかと首を傾げる。

《くる?》
《ぐる?》
「ん? ああ、いや。美味いよ。食べてみるか?」

齧った実の反対側。そこを風で作ったナイフで切り、一切れずつを二匹に差し出す。

《っ、くるるっ!》
《っ、ぐるっ、ぐるっ》

気に入ったようだ。

「おう。美味いよな。っても……何百年に一つ生るって実が……こんなにとはなあ。上の方のは、少しもらっていくか。なんか薬の材料になるようだし、寿子や子どもらにも食べさせてやりたいからな」
《くるる~》
《ぐる~》
「あ、おいっ」

白欐と黒欐は、それならと宗徳の肩から飛び立ち、上の方の実を取りにかかった。

だが、黒欐がすぐに戻ってきて、宗徳の腰の鞄をつつく。

《ぐるるっ》
「んあ? ああ。袋な。ほれ、これに入れてくれるか?」
《ぐるるっ!》

任せろっとそれを咥えて飛び立っていった。

宗徳も下の方の実を少し取り、小さな袋に入れる。それを、すっかり大人しくなっている魔獣に差し出した。

《ガウ……?》
「これ持って、仲間に食べさせてこい。動ける奴がいたら、ここに来るように言ってくれ。しばらく俺らはここに居るから、実も取ってやれる。足りなかったらまた来てくれ」
《ガウ……ガウっ》

頷くような仕草をした後、その袋を咥えて、駆け出した。

それを見送って、町の方から魔素の帯を引き寄せる。

「魔素が関係ありそうだからな」

それを肥料にすれば良いかと考え、水と混ぜる感じで木の近くに撒いた。

すると、それに応えるように、また花が咲き、実が生る。

「おお……よく考えたら、受粉とかも無しで生るとか……なんつうめちゃくちゃなやつだ……」

リンゴ農家、桃農家に謝りたくなる。

「まあ、ここは異世界だしな。神さまアレだしな」

見上げると、楽しそうに実を取る白欐と黒欐の姿。神が喜んで果物狩りしているのだから、良いのだろう。

「さてと、後はこの魔素……何に使おうか……」

どこまで引っ張っていけるか、影響を与えられるかを考えながら、宗徳はしばらくこの木の所にやって来るだろう魔獣たちを待つことにした。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
また二週空きます。
よろしくお願いします◎
感想 262

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

ゴミスキルと呼ばれた少女は無限を手にする

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。