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mission 17
179 羨ましいものです
瑠偉は地球で生まれた狼の獣人族らしい。祖先は異世界から来た種族だったのかもしれないと言った。そんな獣人族たちは、隠れ里を作って暮らしているという。
かなり血は薄まり、獣人として二つの姿を持つ者は本当に少数になっていると聞いている。血が濃い者は、地球では生きにくい。だから、ライトクエストから異世界に移住してしまう者も少なからず居たという。
その日、廉哉と徨流達を悠遠達の所に残して、宗徳と寿子は久しぶりに夫婦二人だけでライトクエストへとやって来ていた。
向こうではどの扉を通っても、異世界ならば若返る。これは、扉の仕様らしい。その人の最も肉体的、精神的に充実していた姿を取るというものだ。
よって、宗徳と寿子は、最近は大分慣れて来たが若めの者が着る簡素な防具と服装をすることになる。
その着替えが終わり、扉の部屋へと向かって廊下を歩く。そんな中、寿子が隣を歩く宗徳に確認する。
「待ち合わせ場所は、扉の所で良いんですよね?」
「おうっ。それにしても、違う世界ってえのはやっぱ緊張するなあ。落ち着かん」
「あなたの場合は緊張ではなく、楽しみなんですよ」
「っ、あ……そうかっ、このソワソワはワクワクかっ!」
緊張して落ち着かないのではなく、楽しみ過ぎて、宗徳は落ち着かないのだ。
「ふふふっ。もう、あなたは本当に昔から変わりませんねえ」
「中々、そこは変わらんだろ。嫌だったか」
「嫌ならとっくに口にしてますよ。何年一緒に居ると思っているんです?」
「まあ、そうかっ」
二人には、遠慮などない。言いたいことは言うのが当たり前だ。不満も普通に口にする。
そんな話を、聞いていた者達があった。
「なんて言うか……っ」
「これぞ、夫婦って感じっ!」
「羨ましいっ!」
「……」
「「ん?」」
後ろからそんな元気でキラキラとした声が聞こえたことで、宗徳と寿子は同時に振り返る。
そこには、瑠偉と二十代に入ろうとかという若い男二人、女が一人いた。
「あっ、瑠偉君」
「ルイっ。おはよう。同僚か?」
「ん……『収集課』の仲間……」
「へえっ。あ、お疲れさん。朝から元気で良いなあ」
「お疲れ様です。いいわねえ。若いわあ。それに、いい体付きね。鍛えてるの?」
「「「お疲れ様です!」」」
ハキハキとした喋り方がとても印象的だった。
「ルイはいつも眠そうなのに、お前らは本当元気だなあ」
「あははっ。ルイは無表情っスからねえっ」
「一緒に居ても、存在忘れるくらい静かだしっ」
「仕事中でも、飲み会してても、いつの間にか消えてるしな~」
「……?」
瑠偉に視線が集まるが、本人は首を傾げるだけで終わる。それを気まずく、心配に思うのは仲間達だった。
「え? 聞いてる? お前の話だぜ?」
「これよ。耳は良いはずなのに、内容に自覚がない。そして、表情がほぼ変わらないっ」
「落ち込んだりしてんのは分かるけど、嫌なのか問題ないのかが分かりづらいっ」
そう文句を付けている彼らだが、悪感情は感じられない。そんな瑠偉を、仲間として全て受け入れているのだろう。
まだまだ短い付き合いだが、瑠偉の性格は宗徳も寿子も理解し始めている。
「あ~……なるほど。面に出ねえよな」
「確かに……それが瑠偉君の個性って感じよね」
「「「それそれっ」」」
だから仕方ないと思っているようだ。
「……良くない……の?」
瑠偉が宗徳におずおずと確認する。
「もうちょい言葉にしても良いかもな」
「言葉……苦手」
「いや、喋ろうぜ。喋るのが億劫なわけじゃねえんだろ?」
「うん……上手く伝えられない……悪いと思うから……」
「喋っても上手く伝わらないと思うからってことか。口下手だなあ。けど、やっぱ、そういうのは、喋って慣れるしかねえよ。せっかく話が出来る奴らが側に居るんだから、もったいないぜっ」
「……そういう……もの……?」
こうした事を話す機会もなかったのだろう。瑠偉のような者を相手にするには、根気が必要だ。常に瑠偉の気持ちを察し続けなくてはならない。これも慣れれば良いのだが、反応がほぼないと話をし続けるのは人によってはとても難しいことだった。
「年とったらなあ、体の事で外に出られんくなったり、相手と会えんくなったりして、広告チラシやテレビ相手にしか話せなくなるんだぜ?」
「独り言、多くなりますよねえ……いやだわ。私たちはまだお互いが居ますから良い方ですけどね」
「いや、話さんくても答えが分かるから、聞くことも少なくなったかもしれん」
「ああ、それはありますね。そういえば、昔ほど聞きませんね」
「だよな~」
「……そう……なんだ……」
今よりも喋らなくなるのはまずいなと、瑠偉自身も思っているのかもしれない。
一方、それを聞いていた三人の仲間達は、コソコソ話し合っていた。
「惚気?」
「すげえな。こんなサラッと惚気られる夫婦」
「いいな~。こんな相手羨まし過ぎるっ」
「年取ってもコレとか、若い頃どうだったんだろ」
「分かんないわよ? 年を取ったからのこの雰囲気なのかもっ」
「うわ~、それだったら、マジで羨ましいよなっ。この人が唯一だったって思えそう」
「それいいっ」
宗徳と寿子の関係は若い者達にとっても、とても羨ましく見えるものだったようだ。
そこに、突然魔女の一人が後ろから現れる。
「アレよね。この二人って、見てて気分悪くなる嫌味なイチャイチャじゃなく、ちょっと見ていたいやつなのよね~」
「「「「っ!!」」」」
突然現れたその人に、瑠偉も含めた四人が飛び退く。
「あら。良い反応」
これに気付いた宗徳と寿子が笑顔で挨拶をした。
「お? ルルちゃんか」
「おはようございます。ルルちゃん」
「「「ルルちゃん!?」」」
「っ!?」
彼らにとっては、厄介で、できれば関わり合いになりたくないお姉さんという魔女。そんな相手にちゃん付けする宗徳と寿子に、何よりも驚いていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
かなり血は薄まり、獣人として二つの姿を持つ者は本当に少数になっていると聞いている。血が濃い者は、地球では生きにくい。だから、ライトクエストから異世界に移住してしまう者も少なからず居たという。
その日、廉哉と徨流達を悠遠達の所に残して、宗徳と寿子は久しぶりに夫婦二人だけでライトクエストへとやって来ていた。
向こうではどの扉を通っても、異世界ならば若返る。これは、扉の仕様らしい。その人の最も肉体的、精神的に充実していた姿を取るというものだ。
よって、宗徳と寿子は、最近は大分慣れて来たが若めの者が着る簡素な防具と服装をすることになる。
その着替えが終わり、扉の部屋へと向かって廊下を歩く。そんな中、寿子が隣を歩く宗徳に確認する。
「待ち合わせ場所は、扉の所で良いんですよね?」
「おうっ。それにしても、違う世界ってえのはやっぱ緊張するなあ。落ち着かん」
「あなたの場合は緊張ではなく、楽しみなんですよ」
「っ、あ……そうかっ、このソワソワはワクワクかっ!」
緊張して落ち着かないのではなく、楽しみ過ぎて、宗徳は落ち着かないのだ。
「ふふふっ。もう、あなたは本当に昔から変わりませんねえ」
「中々、そこは変わらんだろ。嫌だったか」
「嫌ならとっくに口にしてますよ。何年一緒に居ると思っているんです?」
「まあ、そうかっ」
二人には、遠慮などない。言いたいことは言うのが当たり前だ。不満も普通に口にする。
そんな話を、聞いていた者達があった。
「なんて言うか……っ」
「これぞ、夫婦って感じっ!」
「羨ましいっ!」
「……」
「「ん?」」
後ろからそんな元気でキラキラとした声が聞こえたことで、宗徳と寿子は同時に振り返る。
そこには、瑠偉と二十代に入ろうとかという若い男二人、女が一人いた。
「あっ、瑠偉君」
「ルイっ。おはよう。同僚か?」
「ん……『収集課』の仲間……」
「へえっ。あ、お疲れさん。朝から元気で良いなあ」
「お疲れ様です。いいわねえ。若いわあ。それに、いい体付きね。鍛えてるの?」
「「「お疲れ様です!」」」
ハキハキとした喋り方がとても印象的だった。
「ルイはいつも眠そうなのに、お前らは本当元気だなあ」
「あははっ。ルイは無表情っスからねえっ」
「一緒に居ても、存在忘れるくらい静かだしっ」
「仕事中でも、飲み会してても、いつの間にか消えてるしな~」
「……?」
瑠偉に視線が集まるが、本人は首を傾げるだけで終わる。それを気まずく、心配に思うのは仲間達だった。
「え? 聞いてる? お前の話だぜ?」
「これよ。耳は良いはずなのに、内容に自覚がない。そして、表情がほぼ変わらないっ」
「落ち込んだりしてんのは分かるけど、嫌なのか問題ないのかが分かりづらいっ」
そう文句を付けている彼らだが、悪感情は感じられない。そんな瑠偉を、仲間として全て受け入れているのだろう。
まだまだ短い付き合いだが、瑠偉の性格は宗徳も寿子も理解し始めている。
「あ~……なるほど。面に出ねえよな」
「確かに……それが瑠偉君の個性って感じよね」
「「「それそれっ」」」
だから仕方ないと思っているようだ。
「……良くない……の?」
瑠偉が宗徳におずおずと確認する。
「もうちょい言葉にしても良いかもな」
「言葉……苦手」
「いや、喋ろうぜ。喋るのが億劫なわけじゃねえんだろ?」
「うん……上手く伝えられない……悪いと思うから……」
「喋っても上手く伝わらないと思うからってことか。口下手だなあ。けど、やっぱ、そういうのは、喋って慣れるしかねえよ。せっかく話が出来る奴らが側に居るんだから、もったいないぜっ」
「……そういう……もの……?」
こうした事を話す機会もなかったのだろう。瑠偉のような者を相手にするには、根気が必要だ。常に瑠偉の気持ちを察し続けなくてはならない。これも慣れれば良いのだが、反応がほぼないと話をし続けるのは人によってはとても難しいことだった。
「年とったらなあ、体の事で外に出られんくなったり、相手と会えんくなったりして、広告チラシやテレビ相手にしか話せなくなるんだぜ?」
「独り言、多くなりますよねえ……いやだわ。私たちはまだお互いが居ますから良い方ですけどね」
「いや、話さんくても答えが分かるから、聞くことも少なくなったかもしれん」
「ああ、それはありますね。そういえば、昔ほど聞きませんね」
「だよな~」
「……そう……なんだ……」
今よりも喋らなくなるのはまずいなと、瑠偉自身も思っているのかもしれない。
一方、それを聞いていた三人の仲間達は、コソコソ話し合っていた。
「惚気?」
「すげえな。こんなサラッと惚気られる夫婦」
「いいな~。こんな相手羨まし過ぎるっ」
「年取ってもコレとか、若い頃どうだったんだろ」
「分かんないわよ? 年を取ったからのこの雰囲気なのかもっ」
「うわ~、それだったら、マジで羨ましいよなっ。この人が唯一だったって思えそう」
「それいいっ」
宗徳と寿子の関係は若い者達にとっても、とても羨ましく見えるものだったようだ。
そこに、突然魔女の一人が後ろから現れる。
「アレよね。この二人って、見てて気分悪くなる嫌味なイチャイチャじゃなく、ちょっと見ていたいやつなのよね~」
「「「「っ!!」」」」
突然現れたその人に、瑠偉も含めた四人が飛び退く。
「あら。良い反応」
これに気付いた宗徳と寿子が笑顔で挨拶をした。
「お? ルルちゃんか」
「おはようございます。ルルちゃん」
「「「ルルちゃん!?」」」
「っ!?」
彼らにとっては、厄介で、できれば関わり合いになりたくないお姉さんという魔女。そんな相手にちゃん付けする宗徳と寿子に、何よりも驚いていた。
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