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第一幕 第一章 家にいる気はありません
025 今度、一緒に作ろうね
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2018. 10. 19
**********
カトラとターザ、ダルは土下座する職員達のいる部屋を後にし、ギルドマスターに案内されて彼の執務室へと場所を移した。
「こちらをお渡ししておきます」
「お金?」
差し出されたのは袋。そこには、かなりの金額のお金が入っていた。
「はい。大変なご迷惑をおかけしたお詫びといたしまして受け取っていただければ」
低いテーブルを挟んでギルドマスターと向き合い、ソファに座っているカトラの隣にはダルがいて、カトラの後ろには侍るように、また、目の前のギルドマスターを威圧するようにターザが立っている。
そのターザが背を屈めてカトラの耳元で告げる。
「慰謝料だよ。もらって当然でしょ?」
「でも……」
お金で解決するのは少し抵抗があった。
「気にしなくて良いんだよ。あの女に払われるはずだった給料ってことにしとけば。だいたい、Aランクの冒険者の行動を制限したんだ。本来稼げたはずの金額じゃない?」
「……そうだけど……」
腕輪によって力を制限されていなければ、カトラは双子がいたとしても、もっとギルドの依頼を受けられたし、稼げただろう。その額を思えば、確かに適正といえる金額かもしれない。
渋るカトラに、今度はダルが指摘する。
「お前がギルドを許せんというなら受け取る必要はねぇぞ? けど、許さねぇっつたのはあの反省しねぇ女に対してだろ?」
「うん」
「 なら、ギルドはこれで許してやってくれ。お前は、金で解決するのが嫌だろうが、これが一番分かりやすい。気になんなら、パッと使っちまえ。世の中にばら撒きゃスッとすんだろ」
「……分かった」
ニカッと笑われれば、意地を張ってるのも馬鹿らしくなる。あちらもこれで納得して終われるし、こちらもパッと使い切ってしまえばストレスも解消できるだろう。
お金を払ってストレスを発散するのはやったことがない。是非ともやってみたいものだ。こういうお金ならば、後で後悔する気も起きないだろう。
使ってしまえば『このお金は……』といつまでも気に病む必要もなくなる。良い使い方だ。
「師匠……良いところ持っていかないでよ」
「お前は必死過ぎ。あんまカーラみたいな真面目なやつを甘やかし過ぎると逆に嫌われるぞ」
「不吉なこと言わないでよ。カーラ、嫌いになってないよね?」
「……なってない」
「良かった」
「……」
心底嬉しそうに、ホッとするように微笑まれれば憎めない。
ダルがお前も甘やかしてんなと目で訴えてきたが、嫌いだと言った場合にターザがどうなるのかを考える方が恐ろしい。
そうして、カトラはお金を受け取り、部屋を後にした。
ギルドの外に出ると、ダルが隣で大きく伸びをする。
「この後、どうすんだ?」
「とりあえず、王都を出る」
「ん? どっか泊まんねぇの?」
せっかく王都に来たのだから、高級宿にでも泊まって、それこそ先ほどのお金をパッと使ってしまわないのかとダルは思ったのだろう。
「どうせ使うなら、地方が良いから」
お金のある王都で使ったところで大して回らない。地方で使ってこそ意味がある。
「なら、エルケートに一緒に戻るか」
「……仕事、手伝わないよ?」
「なっ、なんでだっ。ちょっとくらい師匠を労っても良いだろっ」
自然に誘導しようとしていたのがバレバレだ。再会してから、残してきた仕事について気まずそうにしていた。『一緒に帰ろう』をいつ言おうか狙っていたのだろう。
「手伝うと、師匠サボるし」
「サボんねぇからっ。一緒に仕事するからっ。頼むから助けてっ」
切実だ。
「はぁ……分かった。けど、本当にちゃんと仕事してよ」
「するするっ。よっしゃっ! あ、ターザも来ていいぞ」
先ほどから難しい顔をしていたターザに、ダルが振り返るようにしてニヤリと笑って見せる。
これに酷く冷たい視線が返ってきた。
「なんで師匠の許可がいるの。カーラと俺はもう一心同体なんだから、引き離せると思わないでよね」
「……」
「お、おう……」
これにはもうコメントする気も起きなかった。
◆◆◆◆◆
王都をさっさと出ると決めた理由は多々あった。
一つは、王家や父達だ。
追って来ないならそれはそれで良いのだが、追われている感覚がずっとしている。
今また父達と再会しても、何を話せば良いのか分からないし、情に訴えられたら頷いてしまいそうなのだ。
父は嫌いではないし、兄も多分、悪い人ではない。次兄や長女のように危害を加えられたことはないし、本のプレゼントとかも普通に有り難かった。
だから、次に会って本心で彼らが話かけてきたなら、せっかく決意した道を曲げてしまいそうだった。
王家には、多くの技術を見せてしまったことになる。引き止められたら面倒なことになる。
ここで双子を助けたお礼が頭にないのがカトラだ。あれは当たり前のことで、二人が家に戻れたならそれで満足なのだから。
しかし、本命の理由は違う。
「仕掛けてくるの待ってるの?」
王都から二つ離れた町。暗くなる前に一気に移動したカトラ達は、夕食のために賑やかな店に入っていた。
「ん? あ、伯爵達が来るの待ってんの?」
「そっちじゃなくて……」
ターザは分かっているらしいのだが、ダルはまだ思い当たらないようだ。王都を出ると言った時に、ターザは既に気付いていたのだろう。あの渋い顔は、また余計なことをという批難だ。恐らく魔力封じの腕輪をされたあの時にはもう、察していたのかもしれない。
ダルもそこは元Sランク。一つの可能性が否定されれば、次に考えられるものが自然と浮かんでくる。
「ああ、影か」
ここで影とは、一般的に聖王国の者のことを指す。
「うん。あの子達から意識を逸らせられればと思ってるんだけど」
「カーラは親切すぎ。そこまでやってあげようなんて……」
ターザは不満そうだ。いつだってカトラのためにならないことは、やるべきではないと思っているのだから。
「あの子達のためだけでもないよ。前からあの国には目を付けられてた」
「どこで? 俺が気付かないなんて……」
地味に衝撃を受けたらしい。握ったグラスが軋んだ音を鳴らしていた。
「屋敷にも、エルケートにも入り込んでた。実動部隊じゃない、情報提供者ってくらいの」
彼らは、冒険者としてであったり、メイドだったりした。時折、入れ替わったりするので、特に気に留めることもなかったのだ。
「誰?」
「っ……」
「おいおい、グラスが割れる! 手ぇ離せ。ってか殺気っ、それっ、漏れてっからっ」
「大したことじゃないでしょ」
「大したことだろ! ほれ見ろっ、周りのテーブルが離れてってる!」
口にしたのは軽率だったとカトラは反省しながら、ダルとターザが言い合うのを他人事のように聞いていた。
「あ、このお肉美味しい……」
同じテーブルについているのに、カトラは構わず食事を続ける。
気付けば、ダルが言ったように、隣のテーブルが遠ざかっていた。一部、通路が狭くなってウェイトレスが横向きですり抜けていく。
「ねぇ、カーラ」
呼びかけられたことで、カトラはターザへ顔を向ける。
「ん?」
「……うん。後で教えてね。それ、美味しいの?」
「美味しい。でもハンバーグにしたらもっと……」
いつの間にかターザの殺気立った気配は霧散し、食事を続けるカーラを幸せそうに見つめていた。
その変化に、周りはついていけない。
「なら今度、一緒に作ろうね」
「ハンバーグ?」
「そう。それはレッドピッグのお肉だから、合わせるとしたらマイルーモかな」
「うん……良いかも」
どっちも貴重で凶暴なSランクの魔獣だ。カトラが今食べているグリルもバカみたいな値段だ。さっそくあのお金を使おうとしている。
「どこに生息してるの?」
「どっちも高山地帯。ここからだと東のヘステ山かな。寄って行こうか」
「うん」
普通は尻込みする凶暴な魔獣も、カトラやターザにすればちょっと道端で薬草採取と同じ感覚だ。
「お前ら……肉屋で買うんじゃなく、獲ってくるって頭に自然になるとか……普通じゃねぇって気付こうぜ……ほれ、周りがドン引きしてるっ。あの辺、白目だぞっ」
白目を剥くとか、どうしたのだろう。相当美味しい料理だったのだろうかと、カトラはその人達が食べている料理とメニューを見比べる。
「おい、カーラ。なんか勘違いしてっだろ。やめとけ」
ダルとしては、これ以上常識のない行動は慎んで欲しいのだ。カトラが手にしているメニュー表を取り上げようと手を伸ばす。しかし、取り上げたのはターザだった。
「そうだよ。どうせもうそんなに食べられないでしょ? カーラは少食だし」
「そういう意味じゃねぇって」
「分かった」
「そっちも納得すんな!」
うん。そろそろお腹いっぱいだ。デザートも食べたいからここまでにしよう。白目を剥くほど美味しい料理は気になるが。
「ほら、そろそろケーキ頼もうか」
「ケーキ」
「二種類あるから、半分こね」
「する」
ターザは本当に良く分かっている。楽しみだ。
「お~い……俺の存在忘れてねぇ……?」
《ー側におりますよー》
「俺の味方はナワだけだっ」
空気の読めるナワちゃんは、鬱陶しい空気を纏い出したダルの扱いもお手の物だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、月曜22日です。
よろしくお願いします◎
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カトラとターザ、ダルは土下座する職員達のいる部屋を後にし、ギルドマスターに案内されて彼の執務室へと場所を移した。
「こちらをお渡ししておきます」
「お金?」
差し出されたのは袋。そこには、かなりの金額のお金が入っていた。
「はい。大変なご迷惑をおかけしたお詫びといたしまして受け取っていただければ」
低いテーブルを挟んでギルドマスターと向き合い、ソファに座っているカトラの隣にはダルがいて、カトラの後ろには侍るように、また、目の前のギルドマスターを威圧するようにターザが立っている。
そのターザが背を屈めてカトラの耳元で告げる。
「慰謝料だよ。もらって当然でしょ?」
「でも……」
お金で解決するのは少し抵抗があった。
「気にしなくて良いんだよ。あの女に払われるはずだった給料ってことにしとけば。だいたい、Aランクの冒険者の行動を制限したんだ。本来稼げたはずの金額じゃない?」
「……そうだけど……」
腕輪によって力を制限されていなければ、カトラは双子がいたとしても、もっとギルドの依頼を受けられたし、稼げただろう。その額を思えば、確かに適正といえる金額かもしれない。
渋るカトラに、今度はダルが指摘する。
「お前がギルドを許せんというなら受け取る必要はねぇぞ? けど、許さねぇっつたのはあの反省しねぇ女に対してだろ?」
「うん」
「 なら、ギルドはこれで許してやってくれ。お前は、金で解決するのが嫌だろうが、これが一番分かりやすい。気になんなら、パッと使っちまえ。世の中にばら撒きゃスッとすんだろ」
「……分かった」
ニカッと笑われれば、意地を張ってるのも馬鹿らしくなる。あちらもこれで納得して終われるし、こちらもパッと使い切ってしまえばストレスも解消できるだろう。
お金を払ってストレスを発散するのはやったことがない。是非ともやってみたいものだ。こういうお金ならば、後で後悔する気も起きないだろう。
使ってしまえば『このお金は……』といつまでも気に病む必要もなくなる。良い使い方だ。
「師匠……良いところ持っていかないでよ」
「お前は必死過ぎ。あんまカーラみたいな真面目なやつを甘やかし過ぎると逆に嫌われるぞ」
「不吉なこと言わないでよ。カーラ、嫌いになってないよね?」
「……なってない」
「良かった」
「……」
心底嬉しそうに、ホッとするように微笑まれれば憎めない。
ダルがお前も甘やかしてんなと目で訴えてきたが、嫌いだと言った場合にターザがどうなるのかを考える方が恐ろしい。
そうして、カトラはお金を受け取り、部屋を後にした。
ギルドの外に出ると、ダルが隣で大きく伸びをする。
「この後、どうすんだ?」
「とりあえず、王都を出る」
「ん? どっか泊まんねぇの?」
せっかく王都に来たのだから、高級宿にでも泊まって、それこそ先ほどのお金をパッと使ってしまわないのかとダルは思ったのだろう。
「どうせ使うなら、地方が良いから」
お金のある王都で使ったところで大して回らない。地方で使ってこそ意味がある。
「なら、エルケートに一緒に戻るか」
「……仕事、手伝わないよ?」
「なっ、なんでだっ。ちょっとくらい師匠を労っても良いだろっ」
自然に誘導しようとしていたのがバレバレだ。再会してから、残してきた仕事について気まずそうにしていた。『一緒に帰ろう』をいつ言おうか狙っていたのだろう。
「手伝うと、師匠サボるし」
「サボんねぇからっ。一緒に仕事するからっ。頼むから助けてっ」
切実だ。
「はぁ……分かった。けど、本当にちゃんと仕事してよ」
「するするっ。よっしゃっ! あ、ターザも来ていいぞ」
先ほどから難しい顔をしていたターザに、ダルが振り返るようにしてニヤリと笑って見せる。
これに酷く冷たい視線が返ってきた。
「なんで師匠の許可がいるの。カーラと俺はもう一心同体なんだから、引き離せると思わないでよね」
「……」
「お、おう……」
これにはもうコメントする気も起きなかった。
◆◆◆◆◆
王都をさっさと出ると決めた理由は多々あった。
一つは、王家や父達だ。
追って来ないならそれはそれで良いのだが、追われている感覚がずっとしている。
今また父達と再会しても、何を話せば良いのか分からないし、情に訴えられたら頷いてしまいそうなのだ。
父は嫌いではないし、兄も多分、悪い人ではない。次兄や長女のように危害を加えられたことはないし、本のプレゼントとかも普通に有り難かった。
だから、次に会って本心で彼らが話かけてきたなら、せっかく決意した道を曲げてしまいそうだった。
王家には、多くの技術を見せてしまったことになる。引き止められたら面倒なことになる。
ここで双子を助けたお礼が頭にないのがカトラだ。あれは当たり前のことで、二人が家に戻れたならそれで満足なのだから。
しかし、本命の理由は違う。
「仕掛けてくるの待ってるの?」
王都から二つ離れた町。暗くなる前に一気に移動したカトラ達は、夕食のために賑やかな店に入っていた。
「ん? あ、伯爵達が来るの待ってんの?」
「そっちじゃなくて……」
ターザは分かっているらしいのだが、ダルはまだ思い当たらないようだ。王都を出ると言った時に、ターザは既に気付いていたのだろう。あの渋い顔は、また余計なことをという批難だ。恐らく魔力封じの腕輪をされたあの時にはもう、察していたのかもしれない。
ダルもそこは元Sランク。一つの可能性が否定されれば、次に考えられるものが自然と浮かんでくる。
「ああ、影か」
ここで影とは、一般的に聖王国の者のことを指す。
「うん。あの子達から意識を逸らせられればと思ってるんだけど」
「カーラは親切すぎ。そこまでやってあげようなんて……」
ターザは不満そうだ。いつだってカトラのためにならないことは、やるべきではないと思っているのだから。
「あの子達のためだけでもないよ。前からあの国には目を付けられてた」
「どこで? 俺が気付かないなんて……」
地味に衝撃を受けたらしい。握ったグラスが軋んだ音を鳴らしていた。
「屋敷にも、エルケートにも入り込んでた。実動部隊じゃない、情報提供者ってくらいの」
彼らは、冒険者としてであったり、メイドだったりした。時折、入れ替わったりするので、特に気に留めることもなかったのだ。
「誰?」
「っ……」
「おいおい、グラスが割れる! 手ぇ離せ。ってか殺気っ、それっ、漏れてっからっ」
「大したことじゃないでしょ」
「大したことだろ! ほれ見ろっ、周りのテーブルが離れてってる!」
口にしたのは軽率だったとカトラは反省しながら、ダルとターザが言い合うのを他人事のように聞いていた。
「あ、このお肉美味しい……」
同じテーブルについているのに、カトラは構わず食事を続ける。
気付けば、ダルが言ったように、隣のテーブルが遠ざかっていた。一部、通路が狭くなってウェイトレスが横向きですり抜けていく。
「ねぇ、カーラ」
呼びかけられたことで、カトラはターザへ顔を向ける。
「ん?」
「……うん。後で教えてね。それ、美味しいの?」
「美味しい。でもハンバーグにしたらもっと……」
いつの間にかターザの殺気立った気配は霧散し、食事を続けるカーラを幸せそうに見つめていた。
その変化に、周りはついていけない。
「なら今度、一緒に作ろうね」
「ハンバーグ?」
「そう。それはレッドピッグのお肉だから、合わせるとしたらマイルーモかな」
「うん……良いかも」
どっちも貴重で凶暴なSランクの魔獣だ。カトラが今食べているグリルもバカみたいな値段だ。さっそくあのお金を使おうとしている。
「どこに生息してるの?」
「どっちも高山地帯。ここからだと東のヘステ山かな。寄って行こうか」
「うん」
普通は尻込みする凶暴な魔獣も、カトラやターザにすればちょっと道端で薬草採取と同じ感覚だ。
「お前ら……肉屋で買うんじゃなく、獲ってくるって頭に自然になるとか……普通じゃねぇって気付こうぜ……ほれ、周りがドン引きしてるっ。あの辺、白目だぞっ」
白目を剥くとか、どうしたのだろう。相当美味しい料理だったのだろうかと、カトラはその人達が食べている料理とメニューを見比べる。
「おい、カーラ。なんか勘違いしてっだろ。やめとけ」
ダルとしては、これ以上常識のない行動は慎んで欲しいのだ。カトラが手にしているメニュー表を取り上げようと手を伸ばす。しかし、取り上げたのはターザだった。
「そうだよ。どうせもうそんなに食べられないでしょ? カーラは少食だし」
「そういう意味じゃねぇって」
「分かった」
「そっちも納得すんな!」
うん。そろそろお腹いっぱいだ。デザートも食べたいからここまでにしよう。白目を剥くほど美味しい料理は気になるが。
「ほら、そろそろケーキ頼もうか」
「ケーキ」
「二種類あるから、半分こね」
「する」
ターザは本当に良く分かっている。楽しみだ。
「お~い……俺の存在忘れてねぇ……?」
《ー側におりますよー》
「俺の味方はナワだけだっ」
空気の読めるナワちゃんは、鬱陶しい空気を纏い出したダルの扱いもお手の物だった。
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よろしくお願いします◎
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