77 / 118
第二章 奴隷とかムカつきます
077 ほろぶべし!
聖王国へ行くには、この国を横切り、もう一つ国を越えなくてはならない。
「では、お嬢様と旦那様は、聖王国へ向かっておられるのですね?」
そういえば、ケイト達に目的地を話していなかったなと気付いたカトラは、旅の経緯を説明していた。
彼女達とは既に一心同体。厄介事も楽しむことも全て共にしてもらう。
「聖王国がそんなことをしてるなんて知りませんでした」
キュリがすごく残念なことを聞いたというように嘆息した。
「それって、人攫いだし」
クスカは神聖魔術の適性を持った者が、自分たちのように訳も分からず連れ去られることに腹を立てていた。
「ひどい……」
コルも幼いながらに理解したらしく、泣きそうな顔をしている。
そんなコルの頭を撫でながら、カトラは頷いた。
「そうしないと、あの国が国として成り立たなくなるっていうのも分からなくないんだけどね。それはあいつらの勝手でしかない」
神聖魔術を彼らの専売特許とするのは、彼らの勝手だ。誰に許可を取っているわけでもないし、それがないと破綻するような国にしたのも彼らの落ち度だろう。
「それでは、私たちの敵ということですね」
「その通りだよ。カーラに手を出して、生きてること自体がおかしいでしょ」
「確かに」
「……えっと……」
ケイトはかなりターザに毒されてきたようだ。
「何様のつもりなんでしょうね」
「滅ぼして良い理由ですよ」
「……」
違った。キュリとクスカもだと驚いていれば、未だに手を置いていた小さな頭がぴこぴこと上下に動いて主張した。
「ほろぶべし!」
「っ……」
幼いコルまでもが過激なことを言うようになっていた。
「……ナワちゃん……ちょっと、コルまで毒されてるんだけど……」
《ー何か問題でも?ー》
「……」
カトラは失念していた。聖王国のことについては、ナワちゃんも怒っていたのだ。いつもはターザの過激思考を宥めてくれるナワちゃんが、今回のことについては助けにはらないと思い知った。
「良く言った。よし、これからもっと鍛えてあげるよ。国を滅ぼすっていうのはそれなりに大変だからね」
「「「「はい!」」」」
「……滅ぼすのは決定……?」
確かに聖王国については苛ついていた。だが、カトラとしてはそこまでではない。せめて上の方の者達を全員吊るし上げるくらいだ。
「影と後は……上から五十人くらいをお仕置きと思ってたんだけどな……」
カトラの考えも大概だということには、誰も気づけない。
そうこうしている間に、王都についた。
「それなりには賑わってるね」
「すごい……これが王都……」
ケイト達も、初めて見る自分たちの国の王都に目を見開いていた。とりあえず宿を決めて、部屋に入ってから話し合う。
「この後、カーラはどうする?」
「どうせ今日一日だけの滞在でしょ? なら、ケイト達にはまた買い物を頼むよ。ナワちゃん、分身頼める?」
《ーOKー》
ケイト達にナワちゃんをつける。
「六時くらいには戻ってきて。いつものように服と……足りない食品は、ナワちゃんが知ってるから。あとは好きに過ごして。買い食いとかしていいから」
「そんなっ……いえ、わかりました。行って参ります」
「うん。遠慮なんてしないで王都見物も楽しんで」
「はいっ」
カトラは、これまで町に寄るとケイト達にお小遣いを渡していた。買い物のついでにちゃんと遊んでくるようにと言う。ナワちゃんは護衛兼アドバイザーだ。
自由に過ごすというのは、奴隷にはあり得ない待遇だ。だが、カトラは拘束したりはしない。旅の道中で彼女達は戦い方など様々なことを勉強し習得しているのだ。それが彼女たちに課せられた仕事だった。
それをしっかりこなしているのだから、報酬として遊ぶのは当然だ。何より、カトラにはケイト達にのびのびと育って欲しい。今は年齢的に近いし、ケイトに至っては年上だが、前世の記憶のあるカトラとしては、彼女たちは庇護すべき子どもなのだ。
それを、ターザも理解しているのだろう。無茶なことはさせないし、嫌がることは避けてくれている。とはいえ、彼女たちはなんでもやろうとするので、要らぬ気遣いなのかもしれない。
ケイト達を見送り、カトラはターザと出かけることにした。
「どこに行きたい? またカーラの服も買いたいな」
「そんなに要らないって……それより、奴隷商を見たい」
「……そんなに気になる?」
「というか、ターザもちょっと気になってるでしょ? この国、奴隷商が多過ぎる。あの契約魔術って、簡単に習得できるものじゃないよね?」
「気付いちゃったか」
ターザが悪びれる様子もなくニヤリと笑う。こういう場合は、面倒な真実が隠されている。
「ビルスさんの契約魔術が正しいなら、神聖魔術と同じように適性がないとできないものだよね」
「そうだよ。だから、奴隷商っていうのが国で認められてるんだ。不正はできないって知ってるからね」
「……ターザのことだから、調べはついてるんじゃない?」
「ここで裏どり出来たらって思ってはいたよ」
慎重に調べている様子が見え、カトラは察しがついた。
「聖王国の人が関わってる?」
「ふふ、正解。さすがはカーラ。じゃあ、裏どりといこうかな」
「うん」
カトラとターザは、王都の端にある奴隷商へと先ずは足を向けるのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
2019. 6. 24
「では、お嬢様と旦那様は、聖王国へ向かっておられるのですね?」
そういえば、ケイト達に目的地を話していなかったなと気付いたカトラは、旅の経緯を説明していた。
彼女達とは既に一心同体。厄介事も楽しむことも全て共にしてもらう。
「聖王国がそんなことをしてるなんて知りませんでした」
キュリがすごく残念なことを聞いたというように嘆息した。
「それって、人攫いだし」
クスカは神聖魔術の適性を持った者が、自分たちのように訳も分からず連れ去られることに腹を立てていた。
「ひどい……」
コルも幼いながらに理解したらしく、泣きそうな顔をしている。
そんなコルの頭を撫でながら、カトラは頷いた。
「そうしないと、あの国が国として成り立たなくなるっていうのも分からなくないんだけどね。それはあいつらの勝手でしかない」
神聖魔術を彼らの専売特許とするのは、彼らの勝手だ。誰に許可を取っているわけでもないし、それがないと破綻するような国にしたのも彼らの落ち度だろう。
「それでは、私たちの敵ということですね」
「その通りだよ。カーラに手を出して、生きてること自体がおかしいでしょ」
「確かに」
「……えっと……」
ケイトはかなりターザに毒されてきたようだ。
「何様のつもりなんでしょうね」
「滅ぼして良い理由ですよ」
「……」
違った。キュリとクスカもだと驚いていれば、未だに手を置いていた小さな頭がぴこぴこと上下に動いて主張した。
「ほろぶべし!」
「っ……」
幼いコルまでもが過激なことを言うようになっていた。
「……ナワちゃん……ちょっと、コルまで毒されてるんだけど……」
《ー何か問題でも?ー》
「……」
カトラは失念していた。聖王国のことについては、ナワちゃんも怒っていたのだ。いつもはターザの過激思考を宥めてくれるナワちゃんが、今回のことについては助けにはらないと思い知った。
「良く言った。よし、これからもっと鍛えてあげるよ。国を滅ぼすっていうのはそれなりに大変だからね」
「「「「はい!」」」」
「……滅ぼすのは決定……?」
確かに聖王国については苛ついていた。だが、カトラとしてはそこまでではない。せめて上の方の者達を全員吊るし上げるくらいだ。
「影と後は……上から五十人くらいをお仕置きと思ってたんだけどな……」
カトラの考えも大概だということには、誰も気づけない。
そうこうしている間に、王都についた。
「それなりには賑わってるね」
「すごい……これが王都……」
ケイト達も、初めて見る自分たちの国の王都に目を見開いていた。とりあえず宿を決めて、部屋に入ってから話し合う。
「この後、カーラはどうする?」
「どうせ今日一日だけの滞在でしょ? なら、ケイト達にはまた買い物を頼むよ。ナワちゃん、分身頼める?」
《ーOKー》
ケイト達にナワちゃんをつける。
「六時くらいには戻ってきて。いつものように服と……足りない食品は、ナワちゃんが知ってるから。あとは好きに過ごして。買い食いとかしていいから」
「そんなっ……いえ、わかりました。行って参ります」
「うん。遠慮なんてしないで王都見物も楽しんで」
「はいっ」
カトラは、これまで町に寄るとケイト達にお小遣いを渡していた。買い物のついでにちゃんと遊んでくるようにと言う。ナワちゃんは護衛兼アドバイザーだ。
自由に過ごすというのは、奴隷にはあり得ない待遇だ。だが、カトラは拘束したりはしない。旅の道中で彼女達は戦い方など様々なことを勉強し習得しているのだ。それが彼女たちに課せられた仕事だった。
それをしっかりこなしているのだから、報酬として遊ぶのは当然だ。何より、カトラにはケイト達にのびのびと育って欲しい。今は年齢的に近いし、ケイトに至っては年上だが、前世の記憶のあるカトラとしては、彼女たちは庇護すべき子どもなのだ。
それを、ターザも理解しているのだろう。無茶なことはさせないし、嫌がることは避けてくれている。とはいえ、彼女たちはなんでもやろうとするので、要らぬ気遣いなのかもしれない。
ケイト達を見送り、カトラはターザと出かけることにした。
「どこに行きたい? またカーラの服も買いたいな」
「そんなに要らないって……それより、奴隷商を見たい」
「……そんなに気になる?」
「というか、ターザもちょっと気になってるでしょ? この国、奴隷商が多過ぎる。あの契約魔術って、簡単に習得できるものじゃないよね?」
「気付いちゃったか」
ターザが悪びれる様子もなくニヤリと笑う。こういう場合は、面倒な真実が隠されている。
「ビルスさんの契約魔術が正しいなら、神聖魔術と同じように適性がないとできないものだよね」
「そうだよ。だから、奴隷商っていうのが国で認められてるんだ。不正はできないって知ってるからね」
「……ターザのことだから、調べはついてるんじゃない?」
「ここで裏どり出来たらって思ってはいたよ」
慎重に調べている様子が見え、カトラは察しがついた。
「聖王国の人が関わってる?」
「ふふ、正解。さすがはカーラ。じゃあ、裏どりといこうかな」
「うん」
カトラとターザは、王都の端にある奴隷商へと先ずは足を向けるのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
2019. 6. 24
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
双子の姉に聴覚を奪われました。
浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』
双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。
さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。
三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。
後妻の条件を出したら……
しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。
格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。
だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。
しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。