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第1章『ベサーイの最後』
第1節『ムカーク族』
しおりを挟むまだ地球という星が誕生間もない頃、地球からずっと遠い場所に、ムカーク星という地球より3倍程大きい惑星があった。
ムカーク星は、陸地が僅かしか無く、その殆どが氷に覆われた惑星。
そこには、ムカーク族という種族が地上ではなく地下に都市を発展させて暮らしていた。
(ムカーク族とは)
ムカークは、現在の人類とは異なり、旧人類の祖先にあたる種族。
外見は、身長3m程もあり、体重は100キロ前後の細身である。
現在の人類のように顔や胴体、そして手足もあるが、皮膚の色が全く異なり、やや発光する銀色の皮膚に覆われた生命体。
ムカークは、現人類には無いウゲルカという器官があり、その器官で周囲の状況把握や、物質とのコミュニケーションもはかれる。
(レーダーやテレパシーのようなもの)
現人類のように男女の性別があり、寿命も600年程と長い。
知能も優れ温厚な性格であり、他の種のような生存本能による争いや衝突は避け、一貫して平和主義である。
そのムカークが作り上げた都市がベサーイである。
その日、ベサーイは新たな王族の誕生で、市民達はお祭り騒ぎで街全体が、あちこち賑わっていた。
ムカーク族の王族であるラム王と、王妃サルンの間に、オーロとマーヤという双子の王子と王女が誕生したからである。
その頃、真上(地表)では、不気味な僅かな振動が始まっていた。
ムカーク崩壊のカウントダウンが迫っていた。
地表の僅かな振動に、ウゲルカ器官が他のムカークより優れている王族のラム王は、その異変を、いち早く王室で気付いた。
『何だ?』
僅かな違和感を感じたラム王だったが、出産を終えたばかりの王妃サルンの元に向かう。
王妃サルンは、会いに来たラム王にマーヤとオーロを抱かせ、とても嬉しそうで夫のラム王も幸せに浸っていた。
その時、地表の振動が止まる事無く、振動の場所が移動している事に気付いたラム王は
『この振動は中(星内部)からでは無く、外から(宇宙空間)から来ている。まさか。』
と不安と疑念がよぎり、サルンに
『すぐ戻る!』
とだけ伝え、部屋を出るなり王室に急いだ。
急いで王室に戻ったラム王は、代々、王だけが使用出来るテーブルに触れた。
(薄く銀色に発光した細長いテーブル。王がそのテーブルに触れると、ウゲルカ器官を増強しテーブルを通じて様々の情報を得る事が出来る)
『なんてことだ…。』
事の事態を知ったラム王は恐怖と不安に陥りその場で崩れ落ちた。
一方その頃、一部の市民も若干の違和感を感じとるも、周囲の騒ぎに掻き消され、気に止める者はいなかった。
サルンも同様で、生まれたばかりの我が子を見つめていた。
すると突然、双子の王女マーヤが鳴き始め、薄く発光していた銀色の皮膚がオレンジ色に変わり始めた。
慌てたサルンはマーヤを抱き上げたが、何が起きてるのかわからず、ただただ動揺をしていた。
王室では、崩れ落ちていたラムだったが、妻の不安を感じ取り、立ち上がり妻の元へ戻った。
ラムが部屋に入ると、サルンが不安な様子で
『急に泣き出してマーヤの色が…』と言った。
その光景に驚くラム王。
マーヤの色を見たラム王は【エムルマの光】という、王家が代々受け継いできた伝記の事を思い出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
伝記【エムルマの光】の話。
ラム王の時代より遥か大昔。
ムカーク族はムカーク星に誕生した種族ではなく、元々は別次元の宇宙の星から、この星にやって来た種族である。
大昔、ムカーク族はランキバーサと言う星に生まれ住んでいた。
そこは陸地半分、海半分に分かれ自然豊かな星で、現在のムカーク星より10倍も大きかった。
サバルとオキアという恒星があり(地球でいう太陽)一年を通して温暖な星だった。
ランキバーサにはムカーク族だけでなく、
ヒルポ族(獰猛で賢く6本足の大きな熊のような形態)
ザンパ種(知能がある植物)
ラヤキ族(翼のあるカニのような生物)
など、多種多様な生き物達が暮らしていた。
ムカーク族は今のように地下に暮らしているのではなく、地上で他の種と同様に生活していた。
しかし、様々な種が繁栄する反面、星の限りある資源は消費し、同じ種同士だけでなく多種間でも、生存本能から来る争い事が絶えず、年月が経つにつれ酷くなっていった。
元々、平和主義で争いを嫌うムカーク達は、他の種達との、争いに事に巻き込まれる事を察して、地下へと生活拠点を移した。
地下への移転と言っても、都市を丸ごと移動する事は出来ず、地上の都市は殆ど捨てざる得なかった。
ランキバーサの地下は資源に乏しく、地上での暮らしとは一変した。
それが嫌になり、自分達の住んでいた都市に帰る一部のムカーク達もいたが、そこには獰猛で賢いヒルポ族達に都市は占有されて帰る事も出来なくなっていた。
ヒルポ族は知能が高く、一説によると、ザンパ種の一種であるバスコという知能のある植物を主食にしていた為、知能が発達したと言われている。
同様にムカークもザンパ種の1つでバルターモ
と言う銀色に光るキノコや、ヤルモという植物同士のコミュニケーションが出来る木の実を好んでいた為、知能が発達したと思われる。
地下に移り住んだムカーク族は、争いに巻き込まれる心配は無くなったが、地下での生活は大変で、地上では簡単に手に入る物質さえも地下では困難で、別の物質で代用したり、新たに作り出す他なかった。
しかし、それによりムカークにとって更なる知能向上、地下空間という特殊な環境において、ウゲルカ器官の能力が更に発達していった。
地下に移り住んでから長い年月が経ち、ムカーク達は都市と呼べる程の街を、地下に作り上げていた。
そんなある日、大きな振動と衝撃が彼らの地下都市を襲った。
上の地上からなのか?それとも星内部からなのか?
ムカークの人達は、初めて起きた現象にパニックになる者、恐怖と不安で、その場から動けなくなる者、ウゲルカ器官で状況把握しようとする者達で街は混乱していた。
振動と衝撃は直ぐに収まった。
市民達は
『怖かった。さっきの何だったの?』
『一体、何が起きたの?』
『上(地上)争いが原因?まだ続いてるの?』
今起きた現象に皆、疑問と不安であった。
振動はその時だけで、その後は起きず市民達は、以前と変わらぬ、いつも通りの生活を送っていた。
しかし、この出来事を境に、ランキバーサに少しずつ変化が始まっていた。
それは月日が経つにつれ、変化が徐々に大きくなり、地下都市にも影響が出始めていた。
この星ランキバーサは1年を通じて温暖な気候であり、地下は地上に比べ涼しい気温だったのだが、振動以降、暖かくなったり、寒くなったりが周期的に繰り返し、その温度差も徐々に拡大し始めていた。
寒い日が数週間続き、その後に暑くなるなど気温が安定せず、市民の生活にも影響が出始めていた。
この星で一体何が起こっているのか?
この事態を調べる為に、ムカーク達は話し合い2つの調査チームが結成される事になった。
1つは、地下を調査するチーム。
もう1つは地上を調査するチーム。
地下調査チームのメンバーは直ぐに決まったが、地上チームは中々決まらなかった。
『上では、まだ争ってるんでしょ?そんな中に行くの?』
『調査に行って帰って来られるの?』
『あれから(地下に移住)随分経ったのだから、争いは終わってるだろう』
『上の世界はどんな所なの?』
『上は知らない。行くのは嫌』
意見は様々であった。
地上チームが決まらない中、先に地下チームが出発。
地下物質の研究を専門とするコーカク、地下拡張に従事するモセルなど、サポート役を含め8名の地下チームが結成され、出発して行った。
その頃、ようやく地上チームのメンバーも決まった。
地形調査が担当のコルルと天体調査が担当のワワ、サポート役のタルカを加えた3名の地上チームが決まった。
タルカは他のムカークに比べ皮膚の色が白い突然変異体。
タルカが生まれた時、その皮膚の白さに心配した両親は、専門知識を持つ様々な者達に相談したが、特に問題はなく、地下に適応した変化と思われていた。
タルカのウゲルカ器官は、植物達とのコミュニケーションに特化していた。
物質とコミュニケーションを図れるムカーク族でも、ここまでザンパ種の植物達とコミュニケーションを図れる者はいなかった。
タルカは、好奇心旺盛な性格であり、時に大胆な行動を取るので、両親を困らせる事もしばしばあった。
今回の地上調査も、地上に対しての好奇心から両親の反対を押しきりサポート役を勝手出たのだ。
そして地上チームの出発の時、
両親はタルカの事が心配で仕方なかったが、タルカを抱きしめ送り出した。
市民達も見送りに集まり、コルル、ワワ、タルカの3名は地上に向けて出発した。
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