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2章 怨みの象

26話 決着

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スコープからヒョウガを覗き込んだ。

「猟呪霊銃〈巨呪獣の弾〉」

   狙いを定めると、引き金を引く。

ーー銃口から撃たれた弾丸。

  弾丸はは、禍々しい巨大な獣の変化した。

  その巨大な獣は、射程から外れようとしたヒョウガに食らい付く。

と刹那ーー

  巨大な獣のゼロ距離にアーティナが姿を表し、光魔剣を構えた。

「武装魔術〈雷光焔剣〉」

型を取ると魔法を発動。

突如にして刹那ーー
虚空に雷雲が発生して。
稲妻が起こり、光魔剣に降り注いだ。

更にそこへ炎を発生させた。

   雷光と炎で巨大な獣を切り裂いた。

「…!!」

  咆哮を上げる間もなく、巨大な獣は消えてしまい。

再び光魔剣を構えーー。

「武装魔術〈光神のルーメウス・光線ラディウス〉」


  突如、光魔剣から光の神が出現。
   光の神は両手の甲をルエルに向けた。
  すると両手の甲から、破壊力の凄い光線を撃ち込んだ。

  猟呪霊銃を盾にするも、光線を防ぐ事が出来ず攻撃を食らう。

「ぐぁぁぁ…」

光神の光線を食らい、止血した箇所を容赦なく抉る。

「ぐほっ…」

ーー再び流れ出した血。
痛みも尋常じゃない。

   「盾にしているのに効きませんね」

  『あの光線はヤバいしゃあ。あの光は浄化させることが出来るしゃ』

  盾の効かない理由を知り、表情が引き摺ってーー。

「此れで決めさせて頂きます! 猟魔……ツ」

「んじゃあ、決めてやるぞ! 
そう言うと。

風双刃を構えーー。


      「風双刃剣技<風神天斬ゴッドウィンド·スカイブレイクり>!!」

天空に風神が出現する。
 二つの刀剣で斬る仕草をした彼の合図に、風神が強い風の刃を降り下ろした。


 ルエルは躱わそうと後ろに下がる。
しかしバランスを崩す。


 「あ゛あ゛あ゛…うこれ以上は私には出来ません…げホっ、げホ。…」
 
 『しゃあ、しゃしゃ。体を借りるしゃあ。後は、デニアがやっておくしゃあ』

 バランスを崩したことで、回避出来ぬまま、大ダメージを食らい、血どろを吐く。


 そしてギブアップしたルエルと、交代した。

 その直後悪魔は、一度本来の姿に戻る。
ルエルの体の中に入って行く。

 「しゃあ、しゃしゃ。人に憑りつくって良い物しゃあ。これで思う存分楽しめるしゃあ」

「取り憑いたですの」

 

突如狂い始めたルエルに、そう呟いたアーティナ。

 

「出番だぞ! シナモン」

「誰に言ってるんですの?」

 「任せてください! ヒョウガ君」

 「しゃあ、しゃしゃ。漆魔が言ってた天使使いってお前だったのかしゃあ」

 誰も居ない所に、ヒョウガは合図を送ると。

 アーティナが首を傾げてしまう。
 呼びかけられた彼は、スルーしてーー。

 ヒョウガに呼び掛けられた天使は、光の中からの登場。

「行くぞ! シナモン」

「うん。分かった」

 主人の合図に、シナモンが頷いた。
 そして天使は、見る見るうちに姿を変えて、一本の剣<守天裁剣>へと変化して行き―――。

 「なんしゃ!? まあ良いしゃあ」
        
一瞬驚きを見せた猟魔。

     「猟魔技<鬼火刃フデモニアラム>!」

『ルエル』は鬼火を出現させ、その火が刃となって彼の方に飛んで行くがーー。


  ヒョウガの方も仕掛けた。
一呼吸置くと、足を広げ左足を低くして、守天裁剣を構えーー、

 「これでも食らいやがれだぞ! 
         〈天翼チェルウィング光斬ライトニングブレイドり〉!!」

 
天使が出現。
翼を広げると、無数の光を作り出す。
 
  無数の光が守天裁剣に降り注いだ。

  降り注いだ守天裁剣で、猟魔を斬りーー。

  「ぐはっ…しゃあ、しゃしゃ。流石は天使しゃあ。
         だがまだまだしゃあ」

と区切ると。

 「猟魔奥義<呪殺フルーテーテンクロ>」

 呪殺出来る恐ろしい牙が、彼ではなくアーティナ目掛けて襲い掛かった。

 想定してなかったため、アーティナは技を反応に遅れてしまう。


 何と一瞬の内にヒョウガは、少女の前に現れた。
  衝撃を与える前にけ消し去し…

 「ん……!? 俺を狙うのを止めたのか!? アーティナ先輩に指一本でも手を出したら、許してもらえると思うんじゃないぞ!」

 「しゃあ、しゃしゃ。その通りしゃあ。天使の強さが分かったからしゃあ」

 「天使って何ですの? その力の源てすのよね??」

   先との違いから、アーティナはそう推論付けていると。

 「んじゃあ、そろそろ終わりにするぞ! この戦いを」

  アーティナはなんとなく理解した。

 「しゃあ、しゃしゃ。デニアも負ける訳にはいかないしゃあ。絶対!!」

 そう言って本気を出したリューナは、火の玉を体に纏って威力を挙げーー

 「しゃあ、しゃしゃ。この火の玉の力で終わらすしゃあ」

そう言うと。

                     「猟魔奥義<怨霊ランキュヌ仕返デュヴァンシュし>」

 火の玉を纏ったリューナが、技を発動。

 死んだ者らの憎悪が、恨みを晴らそうと襲い掛かって来てーー。

   しかし既に其処にヒョウガはいない。

   ルエルのゼロ距離に移動したヒョウガは、右手に握り締めた守天裁剣を構えーー


「守天裁剣剣技<天界ヘブンズ光輝シャイニング>」


 天界から物凄い輝きが放たれた。

 ヒョウガの持つ裁剣に、その凄まじい輝きが降り注がれて行く。


 「<裁光シャイニング煌斬グレターブレイクり>!」


 光り輝く守天裁剣が、剣全体からルエルの心臓を切り裂いた。

 「ぐっ…ゲホッ…しゃあ、しゃしゃ。火の玉を纏っているのにげホ……食らうとはしゃあ。デニアがここで終わっていいわけが無いのしゃあ」

 「んや、終わってもらうぞ! ミューフィに掛けられた呪いを解いて貰う為にも!」

 口の端しから血を流すルエル。
ルエルは頑なに敗北を拒んだ。

 しかしヒョウガはそれを許さずーー、

「守天裁剣剣技<天界ヘブンズ光輝シャイニング>」


同じ技を繰り返し発動。

 天界から物凄い輝きが放たれた。
 ヒョウガの持つ裁剣に、凄まじい輝きが降り注がれてーー。


 「<裁光シャイニング煌斬グレターブレイクり>!」

 光り輝く光魔が、剣全体からルエルの心臓を切り裂いた。

 「ぐあっ…。じゃあ、憎ましき人間しゃあ。げホっ、げホ。人間の体は不便しゃあ。これ以上は、人間の体は無理なのしゃな。あの少女の呪いを解いてやる。それと元の世界にも戻してやるしゃあ」

 血ドロを吐き捨て、人間への恨みを言い捨てた。

 ―――相手が降参を認めたことで、ヒョウガ達の勝利は決した。

 ミューフィに掛けられていた呪いも、見る見るうちに解けて行く。

 それを見て、他の子達は、ほっと胸を撫で下ろす。

 更に、世界がだんだんとかすんで行き―――その次に見えて来たのは、最初に居たお花畑。

 「戻って来たんですの? 本当のホントに・・・・・・」

 「ん……!? ああ、そうみたいだ」

 「しゃあ、しゃしゃ。ルエルともこれでお別れしゃあ。さよならしゃあ。デニアは帰るしゃあ」

 アーティナが戻って来たことを確認すると、ヒョウガが間違いないと言う。

 ―――リューナが、ルエルとの永遠の別れをして、リューナはルエルの体から出て行く。

空の方へと消えて行った。
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