Dark Moon

１．

３

広域に広がるアカデミーを見下ろしながら、この建築物の意味を考える。
全くの無意味ではない。だが、ノッドにとってそれは、余り意味のないように思えた。
莫大な資産を投じて作られた宇宙アカデミーには、毎年多くの志願者が集う。その中で本当に宇宙へ行ける者の数はしれている。
資金を使っている、と言う点では、自分もアカデミーも大差はない。
彼は最高峰の技術を投じて作られた世界一のサイボーグだ。そしてその能力を特に駆使しなくても、アカデミーへ紛れ込むのは簡単だ。だが今更興味を持てる人間がいるかは不明だった。もしかしたら、いないかも知れない。


──だとしたらそれこそ無意味だ。


ノッドは任務の為に来ているのではない。
これは彼にとってはたんなる暇潰しだ。
自分を愛した者はもういない。
だが彼は、生き続けなければならなかった。
誰かが彼を破壊してくれるまで。
もう少し観察を続けようかと思案していると、そこから聞き覚えのある名前を伝える思考を感じた。

「誰だ……？」

懐かしい名前に、目を細める。
確かめたい。そう思ったノッドは、ゆっくりとアカデミーへ降りて行った。