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第5章
2.
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明日はクリスマスだが、警察署は相変わらず犯罪者達の対応に追われていた。
執務室に篭っているゲイナーは机に向かい、山のように積まれた書類と戦っていた。一向に減らない山にため息をつくと、部屋の隅に部下が飾ったツリーが見えた。
電飾が色とりどりに明滅し、星や天使の飾りに美しい色を燈している。
外は雪が止み、時折枝から雪が落ちる音がした。
ゲイナーはカレンダーに目を遣りながら、クレイズに20日も会いに行っていない事に気がついた。
会いに行く事が義務ではなかったが、久しぶりに会いたいと思った。
クレイズの笑顔や、勝ち気な口調に耳を傾けたい。そう思ったゲイナーは、休憩がてらに会いに行く事を決めた。書類の山を一瞥すると、ゲイナーはコートを手に執務室を出た。署内では部下達が慌ただしく職務をこなしている。
「本部長、どちらへ?」
リリが声をかけて来たので、ゲイナーは足を止めコートを羽織った。
「ちょっと休憩だ」
それだけ言うと、ゲイナーは足早に警察署を出た。
外は雪が止んでいても身を貫くような冷たい風が吹いていて、ゲイナーはクレイズの体調が心配になった。
温かい飲み物でも差し入れてやろう。そう思いながら車に乗り込み、キーを回した。
結局何を買えばいいか分からなかったゲイナーは、刑務所内にある自動販売機で温かいコーヒーを購入した。紙コップに入ったコーヒーを手に受け付けへ向かうと、ゲイナーはクレイズへの面会を求めた。
受け付けには防弾ガラスが張られていて、会話が出来るように数ヶ所だけ小さな穴が空いている。
「クレイズですか?彼女でしたら釈放されましたよ」
書類をめくりながら、受け付けの看守がそう告げた。ゲイナーは目を丸くし、危うくコーヒーを落としそうになった。
「何だと?彼女は重大犯罪者だぞ。釈放なんて有り得ないだろう?」
そう言うと、看守は困ったように眉を潜め窓口に顔を寄せた。
「1時間程前にドーズさんのご子息が来られましてね。多額の保釈金を払われたんですよ」
これは内密に、とでも言いたげな口ぶりに、ゲイナーは顔をしかめた。
「違法だぞ」
低い声でそう言うと、看守は更に困った顔になった。
「相手はドーズさんなんです、断れる筈ないじゃないですか」
そう答えた看守にゲイナーは呆れた。市民を護るべき国家公務員が、権力に屈して重大犯罪者の釈放を許可するなんて言語道断だ。
「ドーズは、クレイズをどこに連れて行った?」
怒りを堪えながら尋ねると、看守は首を左右に振った。
「それは知りません」
ゲイナーは深く長いため息を吐くと、コーヒーを手に刑務所を後にした。
きっと自宅に連れて帰ったのだろうと推測しながら、休憩時間の終わりを恨めしく思った。
執務室に篭っているゲイナーは机に向かい、山のように積まれた書類と戦っていた。一向に減らない山にため息をつくと、部屋の隅に部下が飾ったツリーが見えた。
電飾が色とりどりに明滅し、星や天使の飾りに美しい色を燈している。
外は雪が止み、時折枝から雪が落ちる音がした。
ゲイナーはカレンダーに目を遣りながら、クレイズに20日も会いに行っていない事に気がついた。
会いに行く事が義務ではなかったが、久しぶりに会いたいと思った。
クレイズの笑顔や、勝ち気な口調に耳を傾けたい。そう思ったゲイナーは、休憩がてらに会いに行く事を決めた。書類の山を一瞥すると、ゲイナーはコートを手に執務室を出た。署内では部下達が慌ただしく職務をこなしている。
「本部長、どちらへ?」
リリが声をかけて来たので、ゲイナーは足を止めコートを羽織った。
「ちょっと休憩だ」
それだけ言うと、ゲイナーは足早に警察署を出た。
外は雪が止んでいても身を貫くような冷たい風が吹いていて、ゲイナーはクレイズの体調が心配になった。
温かい飲み物でも差し入れてやろう。そう思いながら車に乗り込み、キーを回した。
結局何を買えばいいか分からなかったゲイナーは、刑務所内にある自動販売機で温かいコーヒーを購入した。紙コップに入ったコーヒーを手に受け付けへ向かうと、ゲイナーはクレイズへの面会を求めた。
受け付けには防弾ガラスが張られていて、会話が出来るように数ヶ所だけ小さな穴が空いている。
「クレイズですか?彼女でしたら釈放されましたよ」
書類をめくりながら、受け付けの看守がそう告げた。ゲイナーは目を丸くし、危うくコーヒーを落としそうになった。
「何だと?彼女は重大犯罪者だぞ。釈放なんて有り得ないだろう?」
そう言うと、看守は困ったように眉を潜め窓口に顔を寄せた。
「1時間程前にドーズさんのご子息が来られましてね。多額の保釈金を払われたんですよ」
これは内密に、とでも言いたげな口ぶりに、ゲイナーは顔をしかめた。
「違法だぞ」
低い声でそう言うと、看守は更に困った顔になった。
「相手はドーズさんなんです、断れる筈ないじゃないですか」
そう答えた看守にゲイナーは呆れた。市民を護るべき国家公務員が、権力に屈して重大犯罪者の釈放を許可するなんて言語道断だ。
「ドーズは、クレイズをどこに連れて行った?」
怒りを堪えながら尋ねると、看守は首を左右に振った。
「それは知りません」
ゲイナーは深く長いため息を吐くと、コーヒーを手に刑務所を後にした。
きっと自宅に連れて帰ったのだろうと推測しながら、休憩時間の終わりを恨めしく思った。
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