Love Monster

たける

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5.

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懸命に車を走らせてはいるが、フィックスは渋滞に巻き込まれていた。どこかで事故があったのか、速度は著しく落ちてしまっている。
早くストレイン博士に会って釈明し、解雇を撤回してもらいたい。そう願いながら、握るハンドルを何度も指先で叩いていると、不意に助手席へノッドが現れた。

「ノッド……!どうしてここに?力を使ってはいけないと……」

目を見開きノッドを見遣ると、彼は体を寄せてフィックスに唇を重ねてきた。

「ん……ぅ……」

痺れるような甘いキスに、フィックスは目を閉じた。

「フィックス……んっ……嫌だ……んぅ……お前と離れるのは……」

何度も重ね合い、互いを見つめ合った。

「ノッド、俺もこのまま君と離れるのは嫌だ。だからストレイン博士に面会して、解雇を取りやめてもらおうと……」
「いや……」

そうノッドが言葉を遮った。また少し車が前進し、フィックスはそれに続いた。

「お前が言ってた通りだ。外に出てたのがばれてた。しかも、俺がお前をそそのかしたって。証拠があるって奴は言ってた……!」

険しい顔をするノッドは、悲しそうでもあった。

「君が俺を?そんな馬鹿な……!そうじゃない」

宥めるようにそう言いながら、彼にシートベルトをしてやる。

「ハンクがそう言いやがった。俺はあいつが嫌いだ」

むくれ、そっぽを向いたノッドは、車窓から動かない景色を睨んだ。フィックスはハンドルを握ったまま、何故ハンクがそう言ったのか理解出来なかった。

「どうして彼がそんな事を言ったんだ?」

そう尋ねると、ノッドはフィックスを睨みながら振り返った。

「ハンクはお前が好きなんだ。だから庇うような事を言ってた……!俺は奴の心を読んだ。そしたら、俺がフィックスをそそのかしたに違いない。フィックスは優しいからなって、そう考えてたんだ!」

また目を見開く。どうしてそのような考えに至るか理解出来ない。身内を贔屓するのは分かるが、そんな事を彼が思っていたのが驚きだった。
また車が進み、左前方に衝突した車が2台見えた。

「そう……なのか……?」

衝突車を抜けると同時に渋滞も無くなり、車は快活に進み始めた。フィックスもアクセルを踏み込む。

「俺はお前に話してない事がある」

声のトーンを若干落とし、ノッドがそう漏らした。
まだ知り合って10日程しか経っていないのだ。彼が自分に全てを話しているとは思っていなかったし、当然隠している事も多々あるだろう事を想像していたフィックスは、うん、と相槌を打った。

「俺もファイを知ってる」

その言葉に大きく心臓が跳ね上がった。
ノッドも彼を知っている?どうして?と言う思いが巡る。

「ど……どうして、君も彼を知ってるんだ?」

そう尋ねると、ノッドは話し始めた。

「未来の俺が会いに来たんだ」




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