arkⅢ

たける

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2.

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ワイズとマーゴが駆けつけた時には、既にドラキアは灰になっていた。隣でマーゴが悲痛の叫びを上げる。そしてワイズは、倒れたジョシュを見た。
手深りで進むが、バラム──見た目がノッドなだけに、油断してしまう──によって壁に打ち付けらた。

「「誰も私の邪魔はさせん。さぁ機関士、言う事を聞け」」

尻餅をついているカールは、怯え、ノッドの体をしたバラムを見上げていた。
ワイズは何とか這ってジョシュに近付く。途中、足元に転がっている懐中電灯を拾い、恐る恐るその姿を照らした。ジョシュの唇の端から、血が流れている。

「ジョシュ!」

更に這い寄ると、ファイが倒れてきた。いつも無表情なのに、苦問に顔を僅かに歪めている。
見下ろしたジョシュの顔は青白く、鼓動はしているものの酷く弱々しかった。


──今すぐ医務室に運び手当てしないと、死んでしまう。


だが、艦と連絡をとる術はない。

「くそっ!しっかりしろ、ジョシュ!」

医療キッドを乱暴に漁り、痛み止を素早く投与する。これはあくまで気休めでしかない。ワイズは拳を握りしめ、ジョシュを見つめた。
軽く開かれた口からは、苦しげで短い間隔の息が吐き出されている。


──ノッドが乗っ取られて、一体どうすればいいんだ……!


そう嘆いていると、カールが観念したような声を上げた。

「分かった……だからもう、誰も傷付けないでくれ」

思わずカールを見遣る。

「いけません、そんな事をすれば……我々は……」

ファイが呻いた。その体は何度も床に叩きつけられ、青アザだらけになっていた。

「「早くにそう言えば良かったのだ。そうしていれば、君の仲間は怪我をせずに済んだ」」

皮肉に笑うと、ノッドは指先を動かしてカールを自身へと引き寄せた。

「「さぁ、今すぐに行ってもらおう」」

そう言うと、またバラムはワイズ達の前から姿を消した。

「ファイ、君は大丈夫か?」

比較的軽傷なワイズは、壁を頼りにして立ち上がった。いくらアカデミーで訓練を受けたとは言え、この打撃力はかなりのものだ。

「私は心配いりません。艦長はどうです?」
「すぐに医務室へ運んで治療しなけりゃ、手遅れになる!」

ギュッとジョシュの手を握った時、ワイズはふとマーゴがいないのに気がついた。さっきまで夫の姿に悲鳴を上げていた筈だが。

「おい、マーゴは?」

懐中電灯で辺りを照らしてみたが、ファイとジョシュの姿しかなかった。




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