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たける

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2.

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フラムから強引に通信を切られたタルトは、苛立ちを抑える事なく手当たり次第に蹴りまくった。

「なによあの女!」

腹立たしい。今まで友人だった事さえ疎ましい。

「艦長、落ち着いて下さい」

そうタルトを宥めるのは、副艦長のロン・ソンシだけだった。他のクル一達は、彼女の剣幕に恐れおののいているようだ。

「落ち着いていられる?アンタも聞いてたでしょ、あのリタルド人のふてぶてしい態度!」

相手を蔑むような目も気に入らない。なのに何故リチャードは、あんな女と結婚してしまったのだろう。
付き合っているだけならまだ良かった。自分にもチャンスがあると思えたから。

「フラムも言っていましたが、リチャード・ムーアが良いと言えばいいんです。承諾せざるを得ないような状況を作ればいかがでしょうか?」

鼻息荒くモニターを睨むタルトを席へ着かせると、ロンは落ち着いた口調で提案を述べた。

「確かに……そうすればいいわね。ロン、アンタさすが副艦長ね……!」

そう言って笑ったタルトは、早速科学士官を呼び付けた。

「はい、タルト艦長」
「今すぐルドルフ号の居所を探ってちょうだい!」

旨示を出すなり、科学士官は慌ててタッチパネルを叩き始めた。
それを眺めながら、タルトはどうやって彼を追い詰めてやろうか考えた。
大切なものと交換にすればいい、とすぐに思いつく。が、リチャードの大切なものは家族だ。フラムは現在地球にいる。誰かをやるにしても、時間がかかってしまうし、それは釈だ。だとしたら息子はどうだろう?

「ロン、彼の息子、何て言ったかしら?」
「ファイです」

即座に答える。

「彼は今何処に?地球かしら?」

だったら面倒だ。

「いえ、彼はアルテミス号に候補生達と乗船し、現在パトロールをしていると聞いています」
「どの辺り?」
「そうですね。地球を出てもうすぐ2年は経ちますから、ソバール惑星辺りにいると思われます」

タルトは地図を頭の中で広げた。ここからなら、ソパールは地球に戻る事を考えたらたいした距離ではない。

「艦長、現在ルドルフ号はこの近くにいます。小型字宙船を使えば1時間程で接触出来ます」

科学士官が報告し、タルトはまた考えた。
息子かリチャードか。一瞬悩んだが、答えはすぐに出た。

「ルドルフ号に通信を」
「了解……!」

直ぐさま通信士はボタンを叩き、メインモニターを起動させた。すると、ルドルフ号の通信士が画面に現れた。

「どうも。こちら、ラナフ号艦長のタルトよ。リチャード・ムーアはいるかしら?」

そう尋ねると、通信士は一瞬だけ間を置いて報告した。

『ムーアは現在エンジンルームにおり、ここにはおりません。何のご用ですか?』
「いないならすぐ呼んで。彼に直接会って話がしたいの。そうね、1時間以内に当艦まで来るよう伝えて」

そうタルトが言うと、通信士の側にルドルフ号の艦長が姿を現した。相変わらず老いぼれてはいるが、目だけは輝きを失っていない。

『私は艦長のボア・クリップだ。ムーアをそちらに呼び付けて、どうしようって言うんだ?』
「アンタには関係ないわ!1時間以内に彼を寄越さない場合、我々はアンタ達を攻撃するわよ。いい?1時間以内だからね……!」

そう言って返事も聞かずに通信を切らせると、タルトはロンを振り返った。

「彼が艦を出たら、直ちにルドルフ号付近にワープしてちょうだい。そしてリチャードがうちに乗船したら、ルドルフ号に攻撃を開始するのよ」

その命令に目を丸くすると、ロンは返事を渋るようにメインブリッジ内へ視線をあちこち飛ばした。

「お言葉ですが艦長。ムーアが来たのなら、ルドルフ号を攻撃する理由はないのでは?それに同じ宇宙連邦の仲間ではありませんか!」

ルドルフ号に乗船しているクルーは、ざっと200人はいるだろう。

「アタシ、クリップが嫌いなのよ」

そう言うと、タルトはロンを厳しい目で睨んできた。

「反抗するなら、アンタを宇宙に放り出すわよ」

凶悪な顔で睨まれたロンは、攻撃命令を受け入れるしかなかった。
トリッド人は感情的だ。時にそれは嫉妬や憎悪に変わり、手に負えなくなる。
地球人でもそこまで感情をあらわにする者は少なく、ロン自身は極力感情を抑える方だった。
まさか自身の艦の艦長までそうなってしまうとは、とロンは内心辛くなった。

「分かりました、艦長。直ちにワープ準備と攻撃体制を整えさせます」

そう言うと、タルトは満足げに微笑んだ。




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