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第1章
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翌朝歩いて出勤する途中、ローレンは欠伸を噛み殺した。昨夜は事件の事を考えていて、あまり眠る事が出来なかった上、事件解決の糸口すらも思いつかないまま、朝を迎えてしまった。やはり、証拠が必要不可欠だ。そんな事を考えていると、ふと空腹を感じた。そう言えば、朝食がまだだった。
署の近くにあるファストフード店で何か買ってから、それから向かおう。そう思いながら、まだ7時過ぎの歩道を歩く。
サイフから現金だけ無くなっていたが、これは明らかに計画された犯罪だ。それを物取りの犯行だと見せ掛ける為に現金を抜き取った。携帯も、交遊関係を隠蔽する為に持ち帰ったのかも知れない。そんな事を考えながら店内──早朝なのに賑わっている──に入り、ハンバーガーとポテト、そしてコークのセットを購入して店を出る。
ファストフード店の向かいが警察署で──威厳あるコンクリートで出来た、まるで要塞のような13階建てだ──ローレンはその11階にある殺人課に配置されている。
ふと、ファストフード店の横に花屋があるのに気が付いた。いつからあったか覚えがないまま、花屋に近付く。看板には、バラ専門店・ローズと書かれていた。
バラ、か。そう思いながら店先を覗くと、1人の女性店員が屈み、作業をしていた。
小さな背中に、金色の髪がなか程で揺れている。顔は見えないが、多分若いだろう。
小さいと言えば、相棒のジェシカも背が低い。そう言うと、貴方がデカイのよ──ローレンは190で、ジェシカは158センチだ──と、いつだったか言われたのを思い出す。
そんな相棒に、花などプレゼントした事がないな、とも思った。特別な感情はないが、日頃の感謝を表した事もない。プレゼントしてみようかと思いながら、その店員に近付いた。すると店員は、近付いた事に気付かず立ち上がり、背中をローレンの腕にぶつけ、慌てて振り返った。
「す……すみません……!」
可愛らしい顔立ちだ。眉は細く目はくりっとしていて、小さな鼻に薄いピンク色の口紅。声は高めで少し鼻にかかり、甘えるような印象を受ける。
ローレンはその店員を観察していた事に気付き、言葉を発するタイミングが遅れた。
「ん、あぁ、いや、いいんだ」
店員は頭を下げると、1歩を踏み出した。
「あ、あのさ」
慌ててローレンが声をかけると、店員は素早く振り返った。
「はい」
「同僚に、花束をプレゼントしたいんだけど、何か作って貰えるかな?」
店員を見下ろす。多分身長は、160センチぐらいだろう。ローレンとは30センチも違う。
「かしこまりました。どのような感じに致しましょう?」
奥へ入りながら、店員がそう尋ねてきた。特にこれ、と決めていた訳ではないのだが、バラしかない店内をローレンは見回した。
成る程な、看板通りバラしかない。そう思った。花の知識に乏しいローレンは、バラはバラ、としか認識しておらず、だから店内に何十種類とあるバラを見て──こんなに種類があったのかと──関心した。
「そうだね。いつもお世話になってる女性なんだけど。僕はバラの種類がよく分からないから、何か選んでよ。色は赤いやつがいいかな」
そう言いながら、店員に視線を戻す。
「そうですね。じゃあ、これなんていかがですか?レディローズって言うんですけど……」
店員は、ガラスケースの中から赤いバラを取り出すと、それを見せてくれた。確かによく見れば、街でよく見るバラとは違うようだ。
「レディローズは、この広がるスカートの裾のような、優雅な花形が特徴で濃い朱色なんですけど」
店員が何か言っている。だがローレンの頭は、また昨夜の事件の事を考えていた。
──もし現場にあった花びらがバラだったとして、それが何か特殊な物だったら、それは重要な証拠だ。そしたら、この花屋に聞き込みに来なければならない。花びらは茶色だったし、多分珍しいものだ。それなら犯人は、きっとここで購入したに違いない……
ローレンが黙ったまま考え込んでいると、店員は違うバラを手に取り、再度見せてきた。
どうやら、気に入らない、と受け取られてしまったらしい。
「それでお願いするよ」
そう言うと、店員は笑顔を見せた。八重歯が愛らしい口元だ。
「それは、何て言うの?」
種類も聞かずに決めてしまったが、ローレンの中のバラ、と言うイメージにピッタリだと思う。
「これは、アーザムレッドって言うんです。完璧なバラの形に、深い赤のビロードが綺麗でしょう?」
そう言って笑った店員の胸元に、名札がぶら下がっている。そこには、ブルーローズ・リジャスティンスと書かれていた。
──酷く長い名前だな……
「バラだ」
彼女の名前も──長いが──バラだ。ローレンが呟くと、作業をしていた店員が顔を上げる。
「え……?」
「ほら君。君の名前もバラだ」
名札を指差しそう言うと、彼女は照れたように俯いた。僅かに頬が紅潮している。
「母が……バラが好きなので、私が生まれた時にバラの名前をつけてくれたそうです」
そう言って再び顔を上げたブルーローズは、とても嬉しそうに微笑んでいた。優しげで、はかなげでもある。
日頃、頭の回転が早く、強気な女性としか仕事をしないローレンにとって、これは新鮮だった。出会いがない訳ではないが、検死解剖医や鑑識課、捜査官。どれも一筋縄ではいかない女性達ばかりだ。
「とても似合ってる。ブルーローズ」
そう名前を呼ぶと、彼女は少しだけ悲しそうに眉根を寄せた。
「本当は、ブルーヘブンって、つけたかったらしいんです。それが、母が1番好きな青いバラだから」
俯き、自身の名札を見つめる姿は淋しげで、ローレンは戸惑った。
「じゃあ、君のお母さんはどうしてブルーヘブンってつけなかったの?」
「父が、名前を間違えて役所に提出してしまったらしいんです」
駄目ですよね、とブルーローズは呟いた。自嘲するように、微笑んでいる。
「でも、とても綺麗な名前だ。ブルーローズなんて、凄く神秘的な響きがするよ」
お世辞ではなく、それは本心だった。こんな女性と恋に落ちれたらいいのに、と考えていると、ブルーローズは可笑しそうに笑った。
「ありがとう。でも、長いでしょ?私の名前。だからみんな、ブルーって呼ぶわ」
そう言って花束をセロハンで丁寧に包むと、今度はそれをまた明るい薄緑のラッピングペーパーで包む。そして何かを探すように俯いた。
「あ……れ?」
「どうしたの?」
そうローレンが尋ねると、ブルーローズがはにかむ。
「踏み台」
そう呟くと、ブルーローズは小さなため息をつき、振り返って棚を見上げた。そして精一杯背伸びをし、何かを取ろうと手をぐいっと伸ばした。
「何か取るんだったら、僕が取ろうか?」
そうローレンが申し出ると、ブルーローズは困ったように振り返った。
「ごめんなさい。あの、上から3段目のピンク色のリボンを」
「OK」
ローレンはそう言ってブルーローズに近付くと、手を伸ばしてピンク色のリボンを取った。
「ありがとうございます。私、背が低いから、踏み台がないと困るの」
そう言ってローレンからリボンを受け取ると、ブルーローズは器用に花束を結ぶ。
──ジョン・ホリスンを殺害した犯人も、恐らく背が低かった。
そう思い返し、ローレンは改めてブルーローズを見遣った。
ローレンが推測した犯人像は、背が低い女性だ。あの花びらが特殊なバラだったとしたら、犯人像に近いのは、バラの知識を豊富に持っているブルーローズだろう。
「はい、できました」
ローレンの思考を中断するかのように、ブルーローズが花束を差し出してきた。
「ありがとう。きっと彼女も喜ぶよ」
署の近くにあるファストフード店で何か買ってから、それから向かおう。そう思いながら、まだ7時過ぎの歩道を歩く。
サイフから現金だけ無くなっていたが、これは明らかに計画された犯罪だ。それを物取りの犯行だと見せ掛ける為に現金を抜き取った。携帯も、交遊関係を隠蔽する為に持ち帰ったのかも知れない。そんな事を考えながら店内──早朝なのに賑わっている──に入り、ハンバーガーとポテト、そしてコークのセットを購入して店を出る。
ファストフード店の向かいが警察署で──威厳あるコンクリートで出来た、まるで要塞のような13階建てだ──ローレンはその11階にある殺人課に配置されている。
ふと、ファストフード店の横に花屋があるのに気が付いた。いつからあったか覚えがないまま、花屋に近付く。看板には、バラ専門店・ローズと書かれていた。
バラ、か。そう思いながら店先を覗くと、1人の女性店員が屈み、作業をしていた。
小さな背中に、金色の髪がなか程で揺れている。顔は見えないが、多分若いだろう。
小さいと言えば、相棒のジェシカも背が低い。そう言うと、貴方がデカイのよ──ローレンは190で、ジェシカは158センチだ──と、いつだったか言われたのを思い出す。
そんな相棒に、花などプレゼントした事がないな、とも思った。特別な感情はないが、日頃の感謝を表した事もない。プレゼントしてみようかと思いながら、その店員に近付いた。すると店員は、近付いた事に気付かず立ち上がり、背中をローレンの腕にぶつけ、慌てて振り返った。
「す……すみません……!」
可愛らしい顔立ちだ。眉は細く目はくりっとしていて、小さな鼻に薄いピンク色の口紅。声は高めで少し鼻にかかり、甘えるような印象を受ける。
ローレンはその店員を観察していた事に気付き、言葉を発するタイミングが遅れた。
「ん、あぁ、いや、いいんだ」
店員は頭を下げると、1歩を踏み出した。
「あ、あのさ」
慌ててローレンが声をかけると、店員は素早く振り返った。
「はい」
「同僚に、花束をプレゼントしたいんだけど、何か作って貰えるかな?」
店員を見下ろす。多分身長は、160センチぐらいだろう。ローレンとは30センチも違う。
「かしこまりました。どのような感じに致しましょう?」
奥へ入りながら、店員がそう尋ねてきた。特にこれ、と決めていた訳ではないのだが、バラしかない店内をローレンは見回した。
成る程な、看板通りバラしかない。そう思った。花の知識に乏しいローレンは、バラはバラ、としか認識しておらず、だから店内に何十種類とあるバラを見て──こんなに種類があったのかと──関心した。
「そうだね。いつもお世話になってる女性なんだけど。僕はバラの種類がよく分からないから、何か選んでよ。色は赤いやつがいいかな」
そう言いながら、店員に視線を戻す。
「そうですね。じゃあ、これなんていかがですか?レディローズって言うんですけど……」
店員は、ガラスケースの中から赤いバラを取り出すと、それを見せてくれた。確かによく見れば、街でよく見るバラとは違うようだ。
「レディローズは、この広がるスカートの裾のような、優雅な花形が特徴で濃い朱色なんですけど」
店員が何か言っている。だがローレンの頭は、また昨夜の事件の事を考えていた。
──もし現場にあった花びらがバラだったとして、それが何か特殊な物だったら、それは重要な証拠だ。そしたら、この花屋に聞き込みに来なければならない。花びらは茶色だったし、多分珍しいものだ。それなら犯人は、きっとここで購入したに違いない……
ローレンが黙ったまま考え込んでいると、店員は違うバラを手に取り、再度見せてきた。
どうやら、気に入らない、と受け取られてしまったらしい。
「それでお願いするよ」
そう言うと、店員は笑顔を見せた。八重歯が愛らしい口元だ。
「それは、何て言うの?」
種類も聞かずに決めてしまったが、ローレンの中のバラ、と言うイメージにピッタリだと思う。
「これは、アーザムレッドって言うんです。完璧なバラの形に、深い赤のビロードが綺麗でしょう?」
そう言って笑った店員の胸元に、名札がぶら下がっている。そこには、ブルーローズ・リジャスティンスと書かれていた。
──酷く長い名前だな……
「バラだ」
彼女の名前も──長いが──バラだ。ローレンが呟くと、作業をしていた店員が顔を上げる。
「え……?」
「ほら君。君の名前もバラだ」
名札を指差しそう言うと、彼女は照れたように俯いた。僅かに頬が紅潮している。
「母が……バラが好きなので、私が生まれた時にバラの名前をつけてくれたそうです」
そう言って再び顔を上げたブルーローズは、とても嬉しそうに微笑んでいた。優しげで、はかなげでもある。
日頃、頭の回転が早く、強気な女性としか仕事をしないローレンにとって、これは新鮮だった。出会いがない訳ではないが、検死解剖医や鑑識課、捜査官。どれも一筋縄ではいかない女性達ばかりだ。
「とても似合ってる。ブルーローズ」
そう名前を呼ぶと、彼女は少しだけ悲しそうに眉根を寄せた。
「本当は、ブルーヘブンって、つけたかったらしいんです。それが、母が1番好きな青いバラだから」
俯き、自身の名札を見つめる姿は淋しげで、ローレンは戸惑った。
「じゃあ、君のお母さんはどうしてブルーヘブンってつけなかったの?」
「父が、名前を間違えて役所に提出してしまったらしいんです」
駄目ですよね、とブルーローズは呟いた。自嘲するように、微笑んでいる。
「でも、とても綺麗な名前だ。ブルーローズなんて、凄く神秘的な響きがするよ」
お世辞ではなく、それは本心だった。こんな女性と恋に落ちれたらいいのに、と考えていると、ブルーローズは可笑しそうに笑った。
「ありがとう。でも、長いでしょ?私の名前。だからみんな、ブルーって呼ぶわ」
そう言って花束をセロハンで丁寧に包むと、今度はそれをまた明るい薄緑のラッピングペーパーで包む。そして何かを探すように俯いた。
「あ……れ?」
「どうしたの?」
そうローレンが尋ねると、ブルーローズがはにかむ。
「踏み台」
そう呟くと、ブルーローズは小さなため息をつき、振り返って棚を見上げた。そして精一杯背伸びをし、何かを取ろうと手をぐいっと伸ばした。
「何か取るんだったら、僕が取ろうか?」
そうローレンが申し出ると、ブルーローズは困ったように振り返った。
「ごめんなさい。あの、上から3段目のピンク色のリボンを」
「OK」
ローレンはそう言ってブルーローズに近付くと、手を伸ばしてピンク色のリボンを取った。
「ありがとうございます。私、背が低いから、踏み台がないと困るの」
そう言ってローレンからリボンを受け取ると、ブルーローズは器用に花束を結ぶ。
──ジョン・ホリスンを殺害した犯人も、恐らく背が低かった。
そう思い返し、ローレンは改めてブルーローズを見遣った。
ローレンが推測した犯人像は、背が低い女性だ。あの花びらが特殊なバラだったとしたら、犯人像に近いのは、バラの知識を豊富に持っているブルーローズだろう。
「はい、できました」
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