幻想序曲

たける

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第四章

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死のうとするが死ねず、京助はただ生きた。歳はとらなかった。20歳のままの容姿だった。
選ぶべき者も出ず、1人で骸骨たちを追った。アイツらを追う事によって、自分の能力の使い道が分かったのだ。村の者の死、アイツらの出現。神が前もって与えてくれたこの能力、神は知っていたのだ、こうなる事を。
そして10年前に、やっと選ぶ者が現れた。京助が見えなかっただけで、選ばれるべき者の一族はいたのだ。やっと見つけた。直ちにその親に能力を引き出す術を教えると、1度京助は自分の住んでいた村に戻る事にした。その夜、1人の少年が京助の元にやってきた。

「美山さん」
「ん、何ですか。ワタシに何か用ですか?」

少年はベンチに腰を下ろした。京助は──すでに宿を出て、公園で夜明けを待っていた──隣に腰を下ろした。

「オレ、藤崎拓巳っていいます。それであの、美山さんに聞きたい事があって」
「言ってご覧なさい」

はぁ、と言って、藤崎拓巳少年──今回選んだ者だ──は、思いきったように言った。

「選ばれし者を選ばれて、能力を引き出して、一体何をしようと言うんですか?オレは普通の人として、人生を歩きたかったのに」

京助は優しく微笑んだ。その微笑みには、哀しみも含まれていた。

「骸骨の集団、こいつらは人の夢を喰らうのです。こいつらはワタシのいた村で生まれました。どうして生まれたのかよく分からないのですが、ワタシのいた村には、夢も希望もないのに等しかったのです。土地も農作物がよく育つと言うところでもありませんでしたし、水の具合も良くありませんでした。ワタシはそうでもなかったのでずが、村の方々は、夢が欲しいと強く思っていたようです。そんな思いから、夢を喰らう集団が生まれたのでしょう。そいつらにワタシのいた村は滅ぼされました。ワタシの両親もです。それで発狂したワタシは、その時たった1人の理解者でもあり、愛しい人も、死んでしまったのです。ワタシが殺したのです」

何も言えなくなった。胸が苦しい。京助は俯いた。その様子を、拓巳少年は見つめていた。

「美山さん。そいつら、オレが倒してやります。絶対倒します」
「ありがとう……」

暫く京助は黙っていたが、急に顔を上げた。

「……!大変だ」

京助は勢いよくベンチから立ち上がった。その顔は青ざめ、色がなかった。拓巳少年も立ち上がった。

「どうしたんですか?」
「君の能力はまだ完全じゃないのですか。確か千里眼でしたね。とにかく行きましょう、みなさんが危険なのです」

2人は走り出した。公園から住宅街はそんなに遠い訳じゃない。しかし間に合わなかった。2人が駆けつけた時には、街に灰が散らばっていた。骸骨がやったのだ。

「美山さん、みんなは?」

震える声で言った。京助は首を振るしかなかった。

「まただ、こんなに近くにいたのに、どうしてアイツらを知ることができなかったんだ……!」

項垂れた。もう繰り返さまいと思っていたのに。たまらなく苦しかった、また発狂しそうだった。京助は自分の口を手で押さえた。

「美山さん、みんな死んじゃったのですね、もういないのですね」

泣いていた。その辛さは京助には充分すぎるほど分かっていた。もう自分と同じ思いをする者を出さないようにと思っていたのに。京助は空を見上げた。すると京助の視界に、変に光っている屋敷が入ってきた。拓巳少年は京助の視線に気がつき、頭を上げた。

「結界が張ってある、残っている人がいるのですね」

2人はその家に入っていった。そして人を捜して、各部屋の扉を開けていたが、なかなか見つからない。最後の扉を開けた。最後の扉の向こうは子供部屋らしく、開けるとそこには、怯えて何の区別も付かない澤木茂少年がいた。




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