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「何をしてるんだ?」
助手席のフィックスは、携帯を弄っている。それを運転しながら横目に見遣った。
「メールを打ってるんだ」
画面を見つめたまま、フィックスは真剣な口調で答えた。ハンクは赤信号で停車すると、そんなフィックスの方を向いた。
「どこへ?しかも、そんな顔して……」
「なぁ、ハンク。俺は君を信じてるし、君しか頼れないと思ってる」
フィックスはハンクに視線を絡めてきた。メールを送信し終えたのか、携帯は手の平におさまっている。
「はは……どう言う意味かな?俺だって君を信頼してるさ」
信号が青に変わり、発進する。
「実は、ノッドから彼のメモリーチップを抜いた」
そう言うフィックスは、また思い出したようで苦しげな顔をした。
「抜いてどうなるって言うんだ?」
「ストレイン博士は、新たにサイボーグを作ると言っていただろう?その完成は、ノッドの計算だと3年後になるらしい。で、完成したサイボーグに、このメモリーチップを入れようと考えてるんだ」
「何だって……?」
無茶な話だと思う。それに、ノッドが計算したそれが、正しいのかさえ分からない。
「そんな無茶は止めた方がいいし、ノッドのメモリーチップがあるなら、それはストレインに返すべきじゃないのか?」
ノッドと言うサイボーグを作ったのは、ストレインだ。彼は博士のものなのだから、そのメモリーチップだってストレインのものだ。
「いや……返さない。それに博士は、ノッドの全てが爆破してしまってると思ってると思う」
「まぁ……そうだろうね。けど、君がやろうとしてる事は、危険じゃないのか?あのストレインには、内緒でって事なんだろう?」
ストレインが新しくサイボーグを作り、そこへフィックスがノッドのメモリーチップを内緒で入れ込む。すると新しいサイボーグは、ノッドの記憶を持つ事になる、と言う訳だ。
「危険……かも知れない。だから、メモリーチップは隠してある。もしも、の時の為にな」
そう言ってはにかむフィックスは、まだ辛そうだ。
再び赤信号で停車したハンクは、彼を見遣った。
「その、君の言うもしもって、何だ?」
秘密を知られたからには始末しよう、とか言う、安易な考えだろうか?そうハンクが言うと、フィックスは頷いた。
「俺達がいくら他言しないと言ったって、博士は納得しないだろうと思うんだ。それにこの件は、国家が絡んでる事だから……」
刑事が2人消えたところで、現実は何も変わらない。世界は回って行く。
「気をつけるとするが……今からそのストレインに会いに行くんだぞ?」
「十分警戒するさ。君も、彼の行動から目を放さないようにな」
緊張が走る。
「君の事は俺が守るさ」
発進し、右折する。
「あと、メモリーチップの隠し場所なんだが、どこがいいか思いつかなくて、うちの金庫に仕舞ってるんだ」
「金庫か。まぁ、安全だな」
前方に図書館が見え、左折する位置で待機する。
「その暗証番号を、君のパソコンに送っておいた」
「フィックス。俺が勝手に金庫を開けて、メモリーチップを処分してしまわないとも限らないだろ?」
左折しようとすると、先にダンプカーが右折して駐車場に入って行った。その後少しだけ距離を置いてから、ハンクも駐車場へ入る。
「信じてる」
フィックスが笑った。
「君ってやつは……」
そう言われると裏切れない。
そう思いながらエンジンを切ると、低く唸るようなエンジン音が近付いてきた。2人して顔を上げると、さっきのダンプカーが助手席側から突進してくるのが見えた。
「フィックス……!」
咄嗟に手を伸ばし、フィックスの腕を引くが、間に合わない。車が潰れる音がしてフィックスが目を剥いた。
ハンクは遠退く意識の中、フィックスの無事だけを祈った。
助手席のフィックスは、携帯を弄っている。それを運転しながら横目に見遣った。
「メールを打ってるんだ」
画面を見つめたまま、フィックスは真剣な口調で答えた。ハンクは赤信号で停車すると、そんなフィックスの方を向いた。
「どこへ?しかも、そんな顔して……」
「なぁ、ハンク。俺は君を信じてるし、君しか頼れないと思ってる」
フィックスはハンクに視線を絡めてきた。メールを送信し終えたのか、携帯は手の平におさまっている。
「はは……どう言う意味かな?俺だって君を信頼してるさ」
信号が青に変わり、発進する。
「実は、ノッドから彼のメモリーチップを抜いた」
そう言うフィックスは、また思い出したようで苦しげな顔をした。
「抜いてどうなるって言うんだ?」
「ストレイン博士は、新たにサイボーグを作ると言っていただろう?その完成は、ノッドの計算だと3年後になるらしい。で、完成したサイボーグに、このメモリーチップを入れようと考えてるんだ」
「何だって……?」
無茶な話だと思う。それに、ノッドが計算したそれが、正しいのかさえ分からない。
「そんな無茶は止めた方がいいし、ノッドのメモリーチップがあるなら、それはストレインに返すべきじゃないのか?」
ノッドと言うサイボーグを作ったのは、ストレインだ。彼は博士のものなのだから、そのメモリーチップだってストレインのものだ。
「いや……返さない。それに博士は、ノッドの全てが爆破してしまってると思ってると思う」
「まぁ……そうだろうね。けど、君がやろうとしてる事は、危険じゃないのか?あのストレインには、内緒でって事なんだろう?」
ストレインが新しくサイボーグを作り、そこへフィックスがノッドのメモリーチップを内緒で入れ込む。すると新しいサイボーグは、ノッドの記憶を持つ事になる、と言う訳だ。
「危険……かも知れない。だから、メモリーチップは隠してある。もしも、の時の為にな」
そう言ってはにかむフィックスは、まだ辛そうだ。
再び赤信号で停車したハンクは、彼を見遣った。
「その、君の言うもしもって、何だ?」
秘密を知られたからには始末しよう、とか言う、安易な考えだろうか?そうハンクが言うと、フィックスは頷いた。
「俺達がいくら他言しないと言ったって、博士は納得しないだろうと思うんだ。それにこの件は、国家が絡んでる事だから……」
刑事が2人消えたところで、現実は何も変わらない。世界は回って行く。
「気をつけるとするが……今からそのストレインに会いに行くんだぞ?」
「十分警戒するさ。君も、彼の行動から目を放さないようにな」
緊張が走る。
「君の事は俺が守るさ」
発進し、右折する。
「あと、メモリーチップの隠し場所なんだが、どこがいいか思いつかなくて、うちの金庫に仕舞ってるんだ」
「金庫か。まぁ、安全だな」
前方に図書館が見え、左折する位置で待機する。
「その暗証番号を、君のパソコンに送っておいた」
「フィックス。俺が勝手に金庫を開けて、メモリーチップを処分してしまわないとも限らないだろ?」
左折しようとすると、先にダンプカーが右折して駐車場に入って行った。その後少しだけ距離を置いてから、ハンクも駐車場へ入る。
「信じてる」
フィックスが笑った。
「君ってやつは……」
そう言われると裏切れない。
そう思いながらエンジンを切ると、低く唸るようなエンジン音が近付いてきた。2人して顔を上げると、さっきのダンプカーが助手席側から突進してくるのが見えた。
「フィックス……!」
咄嗟に手を伸ばし、フィックスの腕を引くが、間に合わない。車が潰れる音がしてフィックスが目を剥いた。
ハンクは遠退く意識の中、フィックスの無事だけを祈った。
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