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6月1日(雨)
美しい赤毛を見た。
黒い傘をさす彼が出て来たのはサバル警察署だ。
多分刑事だろう。
ノッドは赤色が好きらしい。
毎日飽きもせず、世界の鳥類を眺めている。
特に気に入っているのがカーディナルだ。
高貴で美しい鳥。
あの赤毛なら、きっとノッドも気に入るだろう。
私も気に入った。
彼を調べてみよう。
6月2日(晴)
フィックス・ケリー。
相棒はブラス・エンカートと言う男だが、彼は問題じゃない。
フィックスの回りをうろついて困る存在は、ブラスではない。
険しい顔をした男だ。
友人だろうか。
ノッドは今日も反抗的だ。
いい加減折れてしまえばいい。
少し強く作りすぎただろうか。
6月3日(晴)
ハンク・スティア。
フィックスとは警察学校からの友人らしい。
邪魔だ。
だが、いいだろう。
取るに足らない存在だ。
問題は、どうやってフィックスを研究に荷担させるかだ。
ノッドはゲームを止めた。
その勝率は2ヶ月で100%になった。
パターンがあるのだろう。
そんな内容が、ずっと続いている。フィックスをどこからか観察し、楽しんでいたようだ。
「スケベジジイ」
ノッドは呟いた。するとハンクが、フローリングを叩いた。
「馬鹿な事を言うなよ。あいつがスケベジジイ?だったら今……!奴の元にいるフィックスはどうなってるって言うんだ?」
凶悪な顔に、ノッドは僅かながら恐怖した。この剣幕で怒鳴られたなら、きっと犯人も自白するだろう。
「想像したくもないけど、お前だって薄々そうかもって思ってるんじゃないのか?」
言い返してやると、胸倉を掴まれた。だがハンクは何も言わない。図星だったのだろう。
「はぁ……クソッ……!」
ハンクが手を放すと、黒いシャツがよれよれになっていた。それを手で直しながら、ノッドは先を読む。
その中には、未来人達と接触したと言う記述はなく、ただ、コンピュータの調子が悪い、だとか、海が荒れているようだ、としか書かれていなかった。
「フィックスは、この日宇宙人に拉致されたらしいが、書いてないな」
ハンクも指摘する。その理由が分からないノッドは、彼を無視して続きに目を走らせた。
7月1日(晴)
サバル警察署に連絡を入れ、ジグザ警部補とノッドの護衛について話した。
彼に詳細は明かさなかったが、民家人達の暴動や国の為の研究だと仄めかすと、すんなり許可をくれた。
馬鹿め。
護衛対象者としてフィックスの名を出すと、彼は優秀だからと言っていた。
そんなのは知っている。
12時に図書館へ来てもらえるよう伝えた。
待ち遠しい。
ただ、ノッドが彼を酷く気に入ってしまわないか。それに対して余計な感情が生まれないかが心配だ。
その心配は的中した、と言う訳か。
そしてまた、フィックスもノッドを気に入ってしまった。それは念頭に入れていなかったのだろう。後日の内容には、ノッドに対する中傷が書かれていた。
「最後のやつはどうだ?」
中傷を流し読みしたハンクが言った。
「先月のだ」
フィックスとハンクが事故に遭った日。
7月4日(晴)
2人を図書館におびき出すのに成功した。
だが、ノッドのメモリーチップは行方不明のままだ。
どこにあるのか。
他の研究者の手に渡っていない事を願う。
フィックスを私だけの物にする為に、彼をサイボーグにしようと決めた。
同時にスティアを事故に見せかけて始末する。
損傷は激しくても構わない。
彼の新しい体は出来ている。
後は脳があればいい。
もうすぐだ。
「あれは奴らの計画の内だったのか……!」
ハンクは大声を上げた。耳が痛い。
「ずっと前からのな」
自分を利用し、フィックスを物にした。
──では、自分の存在価値はなんだ?
ノッドは自問自答したが、答えは出ない。
「他のフォルダを見てみよう」
そう提案すると、ハンクは歯を食いしばりながら頷いた。
美しい赤毛を見た。
黒い傘をさす彼が出て来たのはサバル警察署だ。
多分刑事だろう。
ノッドは赤色が好きらしい。
毎日飽きもせず、世界の鳥類を眺めている。
特に気に入っているのがカーディナルだ。
高貴で美しい鳥。
あの赤毛なら、きっとノッドも気に入るだろう。
私も気に入った。
彼を調べてみよう。
6月2日(晴)
フィックス・ケリー。
相棒はブラス・エンカートと言う男だが、彼は問題じゃない。
フィックスの回りをうろついて困る存在は、ブラスではない。
険しい顔をした男だ。
友人だろうか。
ノッドは今日も反抗的だ。
いい加減折れてしまえばいい。
少し強く作りすぎただろうか。
6月3日(晴)
ハンク・スティア。
フィックスとは警察学校からの友人らしい。
邪魔だ。
だが、いいだろう。
取るに足らない存在だ。
問題は、どうやってフィックスを研究に荷担させるかだ。
ノッドはゲームを止めた。
その勝率は2ヶ月で100%になった。
パターンがあるのだろう。
そんな内容が、ずっと続いている。フィックスをどこからか観察し、楽しんでいたようだ。
「スケベジジイ」
ノッドは呟いた。するとハンクが、フローリングを叩いた。
「馬鹿な事を言うなよ。あいつがスケベジジイ?だったら今……!奴の元にいるフィックスはどうなってるって言うんだ?」
凶悪な顔に、ノッドは僅かながら恐怖した。この剣幕で怒鳴られたなら、きっと犯人も自白するだろう。
「想像したくもないけど、お前だって薄々そうかもって思ってるんじゃないのか?」
言い返してやると、胸倉を掴まれた。だがハンクは何も言わない。図星だったのだろう。
「はぁ……クソッ……!」
ハンクが手を放すと、黒いシャツがよれよれになっていた。それを手で直しながら、ノッドは先を読む。
その中には、未来人達と接触したと言う記述はなく、ただ、コンピュータの調子が悪い、だとか、海が荒れているようだ、としか書かれていなかった。
「フィックスは、この日宇宙人に拉致されたらしいが、書いてないな」
ハンクも指摘する。その理由が分からないノッドは、彼を無視して続きに目を走らせた。
7月1日(晴)
サバル警察署に連絡を入れ、ジグザ警部補とノッドの護衛について話した。
彼に詳細は明かさなかったが、民家人達の暴動や国の為の研究だと仄めかすと、すんなり許可をくれた。
馬鹿め。
護衛対象者としてフィックスの名を出すと、彼は優秀だからと言っていた。
そんなのは知っている。
12時に図書館へ来てもらえるよう伝えた。
待ち遠しい。
ただ、ノッドが彼を酷く気に入ってしまわないか。それに対して余計な感情が生まれないかが心配だ。
その心配は的中した、と言う訳か。
そしてまた、フィックスもノッドを気に入ってしまった。それは念頭に入れていなかったのだろう。後日の内容には、ノッドに対する中傷が書かれていた。
「最後のやつはどうだ?」
中傷を流し読みしたハンクが言った。
「先月のだ」
フィックスとハンクが事故に遭った日。
7月4日(晴)
2人を図書館におびき出すのに成功した。
だが、ノッドのメモリーチップは行方不明のままだ。
どこにあるのか。
他の研究者の手に渡っていない事を願う。
フィックスを私だけの物にする為に、彼をサイボーグにしようと決めた。
同時にスティアを事故に見せかけて始末する。
損傷は激しくても構わない。
彼の新しい体は出来ている。
後は脳があればいい。
もうすぐだ。
「あれは奴らの計画の内だったのか……!」
ハンクは大声を上げた。耳が痛い。
「ずっと前からのな」
自分を利用し、フィックスを物にした。
──では、自分の存在価値はなんだ?
ノッドは自問自答したが、答えは出ない。
「他のフォルダを見てみよう」
そう提案すると、ハンクは歯を食いしばりながら頷いた。
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