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第一話 気が付いたら三途の川じゃなくて川の前で座っていたんだけど…
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ここは叡福寺、聖徳太子(厩戸王)が眠る地に建立された寺である。
ここの別名は『上の太子』と呼ばれている。河内と呼ばれる地域にはこれ以外に『中の太子』と呼ばれる野中寺、『下の太子』と呼ばれる大聖将軍寺が存在している。その中で叡福寺に私は来ている。
新緑が輝く五月の風は穏やかだが、気象変動のせいもあり、日差しのせいで少し歩くとジワリと汗をかく、今日ここへ来たのは、単なる観光なのだ。いい年を子いたおっさんの一人旅、ゴールデンウェークを一人気ままに旅をしている。
昨日は、四天王寺から森ノ宮、衣摺を経て大聖将軍寺によって、近くの牛丼屋で昼食をとった。更に、野中寺を経て、今日に至る。
そして、近つ飛鳥の地を回って、最後にここに来たのだ。
厩戸王の遺跡はいろいろと回った。飛鳥、斑鳩、兵庫県太子町、播磨の鶴林寺など、何故か道後温泉まで…さてと、私の旅もこれで終わると思った瞬間だった。目の前が真っ暗になった。
「大丈夫ですか?」
その言葉で目を覚ますとあどけない顔をした美少年が私を覗き込んでいたのだか、その髪型を見て驚いていると、視線に気付いたのか、髪を触りながら
「あの?如何なさいました?」
「あ…大丈夫です」
少年は私の方をじろじろと見ているのが気になる。辺りを見回すと田舎?近くに小川が流れているがどう見てもどっかの田舎町だろうとしか言いようがない。目の前に建っている建物は立派そうだけど、現代ではありえない建築物だと思っていると
「さうですか、ところでこの奇妙な服はどこで手に入れたのですか?」
その少年は興味津々で俺の服を指さしている。
「あ…あ…これ?これは、ウニクロで買ったんですが?」
「う…ってなんですか?」
「ウニクロといいます」
「ウニクロ?それって隋にあるのですか?」
「ずい?ずいって何?」
するとむっとした表情をしている。
「隋と言えば、大和より海を隔てた遥か西にある国のことですよ。そんなことも知らないのですか」
「あ…はい」
「しかたないですね。あっ?このままだと衛兵に捕まってしまいますね。とりあえず。こちらへ来てください。そのままの恰好では目立ちすぎます」
こうして私は、見ず知らずの少年に立派な建物の中へと連れて行かれた。しかも、中央の大きな建物ではなく、離れのようなところに連れて行かれたのだった。
「ここなら大丈夫です。それとその恰好を何とかしないといけませんね」
その少年は部屋から出て行った。しばらくして、服をもって戻ってきた。
「これに着替えてください。それとその服はそこの木箱に入れておいてください。ところで、あなたのお名前は」
「私ですか?私の名前は斎藤和美といいます」
「さいとうかずみって、聞いたことのない名前ですね。どこの連、臣にもない名前です。どこから来たのですか」
私が聞きたい。あなたはどこから来たのかということを、そして誰なのかを
「えっと…大阪から来ました」
「大阪?それは隋より西にある国か」
その少年は目を輝かせて質問をしてきた。一体ここはどこなのだろう。そして、目の前の少年は一体誰?
「大阪は…」
とそこまで話してここはどこなのだろうということが気になった。確かさっきヤマトと言っていたし
「すみません。ここはどこですか?」
「どこかわからないのですが?」
「すみません」
「しかたないですね。ここは葦墻というところです」
「あしがき・・・ってさっきヤマトと言ってましたよね」
「ええ…確かに大きなくくりで言えばここはヤマトとなります」
「ということは、大阪は、大和の西側で二上山の向こう側です」
「おかしなことを言いますね。二上山の向こうは河内ですよ」
「あ…そうか。河内ですね…」
「河内から来たのですが、ところでここへ何の用で来られたのですか?しかも、衛兵たちの警護を潜り抜けて」
「すみません。私にも分からないのです。気が付いたらさっきの場所にいたのです」
「そうでしたか…不思議なこともあるもんですね」
「ハハハ…そうですね。ところで、お名前を聞いていなかったのですが」
「私ですか」
「はい」
「私、ウマヤドと申します」
目の前の少年が厩戸王だったとは
ここの別名は『上の太子』と呼ばれている。河内と呼ばれる地域にはこれ以外に『中の太子』と呼ばれる野中寺、『下の太子』と呼ばれる大聖将軍寺が存在している。その中で叡福寺に私は来ている。
新緑が輝く五月の風は穏やかだが、気象変動のせいもあり、日差しのせいで少し歩くとジワリと汗をかく、今日ここへ来たのは、単なる観光なのだ。いい年を子いたおっさんの一人旅、ゴールデンウェークを一人気ままに旅をしている。
昨日は、四天王寺から森ノ宮、衣摺を経て大聖将軍寺によって、近くの牛丼屋で昼食をとった。更に、野中寺を経て、今日に至る。
そして、近つ飛鳥の地を回って、最後にここに来たのだ。
厩戸王の遺跡はいろいろと回った。飛鳥、斑鳩、兵庫県太子町、播磨の鶴林寺など、何故か道後温泉まで…さてと、私の旅もこれで終わると思った瞬間だった。目の前が真っ暗になった。
「大丈夫ですか?」
その言葉で目を覚ますとあどけない顔をした美少年が私を覗き込んでいたのだか、その髪型を見て驚いていると、視線に気付いたのか、髪を触りながら
「あの?如何なさいました?」
「あ…大丈夫です」
少年は私の方をじろじろと見ているのが気になる。辺りを見回すと田舎?近くに小川が流れているがどう見てもどっかの田舎町だろうとしか言いようがない。目の前に建っている建物は立派そうだけど、現代ではありえない建築物だと思っていると
「さうですか、ところでこの奇妙な服はどこで手に入れたのですか?」
その少年は興味津々で俺の服を指さしている。
「あ…あ…これ?これは、ウニクロで買ったんですが?」
「う…ってなんですか?」
「ウニクロといいます」
「ウニクロ?それって隋にあるのですか?」
「ずい?ずいって何?」
するとむっとした表情をしている。
「隋と言えば、大和より海を隔てた遥か西にある国のことですよ。そんなことも知らないのですか」
「あ…はい」
「しかたないですね。あっ?このままだと衛兵に捕まってしまいますね。とりあえず。こちらへ来てください。そのままの恰好では目立ちすぎます」
こうして私は、見ず知らずの少年に立派な建物の中へと連れて行かれた。しかも、中央の大きな建物ではなく、離れのようなところに連れて行かれたのだった。
「ここなら大丈夫です。それとその恰好を何とかしないといけませんね」
その少年は部屋から出て行った。しばらくして、服をもって戻ってきた。
「これに着替えてください。それとその服はそこの木箱に入れておいてください。ところで、あなたのお名前は」
「私ですか?私の名前は斎藤和美といいます」
「さいとうかずみって、聞いたことのない名前ですね。どこの連、臣にもない名前です。どこから来たのですか」
私が聞きたい。あなたはどこから来たのかということを、そして誰なのかを
「えっと…大阪から来ました」
「大阪?それは隋より西にある国か」
その少年は目を輝かせて質問をしてきた。一体ここはどこなのだろう。そして、目の前の少年は一体誰?
「大阪は…」
とそこまで話してここはどこなのだろうということが気になった。確かさっきヤマトと言っていたし
「すみません。ここはどこですか?」
「どこかわからないのですが?」
「すみません」
「しかたないですね。ここは葦墻というところです」
「あしがき・・・ってさっきヤマトと言ってましたよね」
「ええ…確かに大きなくくりで言えばここはヤマトとなります」
「ということは、大阪は、大和の西側で二上山の向こう側です」
「おかしなことを言いますね。二上山の向こうは河内ですよ」
「あ…そうか。河内ですね…」
「河内から来たのですが、ところでここへ何の用で来られたのですか?しかも、衛兵たちの警護を潜り抜けて」
「すみません。私にも分からないのです。気が付いたらさっきの場所にいたのです」
「そうでしたか…不思議なこともあるもんですね」
「ハハハ…そうですね。ところで、お名前を聞いていなかったのですが」
「私ですか」
「はい」
「私、ウマヤドと申します」
目の前の少年が厩戸王だったとは
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