上 下
118 / 267
第2章 開拓篇

第118話 村人 出番なし

しおりを挟む
ウサギとライムは、ダイバーロイヤルホテルの地下にある”なだ千”で朝食をとっていた。ごはんにお味噌汁。そして、小鉢に入った煮物はしっかりと出汁が効いておいしかった。そして、魚の焼き物は絶妙の塩加減に思わず舌鼓をうってしまうほど、それに味付け海苔までついて、本当に最高の朝食だった。だからだろうライム殿も

「この味付け海苔を何とか輸入したい」

なんて食事のことばかりに気を取られていたのだけど、やがて食事も終りお茶をすすっていると、店員がやってきて、

「食後のお飲み物はお茶でよろしいですか?」

「何かほかにあるのですか?」

「お茶以外ですと、紅茶ですかね。コーヒーもありますし、変わり種としては、タピオカミルクティーというのがあります」

「タピオカ?」

「なんだそうれは?」

「ミルクティーの中にタピオカがはいっているのですが」

私たちの驚きように店員は困惑の表情を浮かべていた。更にライム殿の驚きようからタピオカというものを知っているようではないようだ。実は、私もタピオカが何なのかがわからないでいる。お互い知っているかどうかの押し問答をした挙句、あえてチャレンジはせずにライム殿はコーヒー、私はミルクティーを頼んだのであった。しばらくして

「ライム殿はこれからどうされます?」

「んー・・・村人村まで行ってみたいけど」

「けど」

「ちょっとためらっている。あ・・・本当は行きたいんだけどね」

するとライム殿はあたりを見回して

「どうやら誰かにつけられている」

そのことは既に分かっていた。ダイバースクエアーには行った時からライム殿がつけられていることは、かとってその連中がいきなり攻撃してくれる気配はないことと、見張っている連中の能力を調べても十分に勝算があると確信できたことから、私はあえて無視をしていた。

「大した事ないでしょ。あんな連中」

「確かにそうなんだけど」

「村人村に着いた途端、村人にとらえられるなんてことも考えられる」

「そうでしたら、私にとってはいいことなんですけど、村人を倒す口実ができますので」

その言葉を聞いてライム殿は再び考え込んでいる。そこへ店員がやってきて、ある冊子を見せた。それは私の部屋にもあった。村人ウォーカーだった。

「あの~。今、キャンペーン中でして、この冊子をプレゼントします」

私はその冊子を見たから断ったんだけど、ライム殿は手に取って見ていた。そして、冊子を見ながらわなわなと震えはじめ、ダンと机の上においた。

「こ・・・これは?」

彼は、うな重の特集ページを見て驚愕の表情を浮かべた。そして

「行こう!!村人村へ!!」

***

そんな話を俺はcIAから聞いていたのだった。

「ライム殿もこちらへ来るか」

ぼそりというとアーチャン魔王とクロマティー魔王が

「ライムが来るのか?」

「ええ」

「そっか、じゃ、ちょっと、ここから離れた方がいいわね」

「名残惜しいけどそうしないと」

そう言って二人は村人村から去っていったのだった。
しおりを挟む

処理中です...